年金収入でも自宅リフォームや住み替えに活用できる「リバースモーゲージ」の活用事例

新型コロナウイルスの影響は、少しずつ高齢者の雇用や収入にも影響を与え、60代以降のシニア層の方から継続雇用の打ち切りや、パートアルバイトの仕事がなくなり失業中というご相談も受けるようになりました。正社員での新規雇用がむずかしい高齢者にとって、日々の生活は年金でなんとかなっても、老朽化する自宅のリフォームや住み替えといった住まいの資金を準備するのは悩ましい問題です。

今回は、年金収入だけでも老後に残ってしまった住宅ローン返済や自宅のリフォーム、住み替えに利用できるリバースモーゲージ型住宅ローン【リ・バース60】の活用法についてご紹介します。

リバースモーゲージ型住宅ローン【リ・バース60】とは

リバースモーゲージとは自宅を担保にお金を借り、借りた人が死亡した時に自宅を売却して完済するローンです。【リ・バース60】は、住宅金融支援機構と提携する金融機関が、資金の使い道を住まいに限定して提供する、リバースモーゲージ型住宅ローンです。住宅購入や建て替え、リフォーム、高齢者施設への住み替え、住宅ローンの借り換え資金などに利用できます。借り入れ申し込みの際に満60歳以上(【リ・バース50】は満50歳以上)で利用でき、生きている間は利息のみの支払いで済むため、住宅ローンに比べ毎月の返済負担が少ないことがメリットです。年金生活者にとっては、預貯金を手元に残したまま年金収入からでもなんとか返済できる金額で、安心で快適な住まいを手に入れることができます。資金の使い道や借り入れの限度額など商品の詳細は金融機関ごとに異なります。

将来本人がなくなった場合は、相続人が一括して返済するか、自宅を売却して返済します。自宅の価格が下落して、売却してもローンが残ってしまう場合は、相続人が残った債務を返済しなくてはなりません。しかし、【リ・バース60】には残ったローンを返済しなければならない「リコース型」と返済する義務がない「ノンリコース型」の2つのタイプがあります。安心なのは「ノンリコース型」ですが、「リコース型」に比べ金利が高くなる場合がありますので、借りる金額に合わせた返済計画をしっかり立ててから選びましょう。

ここからは、失敗しないリバースモーゲージの活用事例を3つご紹介します。

【住宅ローンの借り換え事例】コロナでパート収入がなくなり住宅ローンの返済に困るAさんの場合

Aさん 65歳
年収:年金収入200万円、
給与収入200万円(新型コロナウイルスの影響で失職)現在の収入は年金のみ

妻 65歳
年収:年金収入100万円 
パート収入60万円(新型コロナウイルスの影響で失職)

預貯金:1,500万円
住宅ローン:75歳まで毎月12万円の返済

Aさんは60歳の時退職金で500万円ほど住宅ローンの繰り上げ返済をしましたが、その後は元気で働けるうちは大丈夫と毎月の返済を続けてきました。ところが65歳となり非正規雇用となった途端、新型コロナウイルスの影響で仕事がぱったりとなくなり失職してしまいました。運悪く妻も毎月5万円ほどあったパート収入がなくなり、年金収入のみの生活となってしまいました。

560万円あった世帯収入も、年金収入だけでは夫婦で300万円です。そこから年間144万円の住宅ローン返済、税金や社会保険料、固定資産税、都市計画税や火災保険料といった経費を除くと手元で使えるお金は130万円ほどです。夫婦2人で暮らしていくには貯蓄を取崩さなくてはなりません。預貯金が1,500万円ほどありますが、将来病気や要介護になった時のためにできるだけ残しておきたいと考えています。

Aさんは思い切って1,300万円ほど残っている住宅ローンを【リ・バース60】に借り換えることにしました。金利2.475%の変動金利で、毎月の返済額は利息のみの2万6,800円です。年間32万円ほどの返済なので、住宅ローンより年間112万円返済額が少なくなります。金利上昇のリスクはありますが、これで生活費として使えるお金は242万円となり、なんとか日々の生活はやっていけそうです。

Aさん夫婦はまだ元気なので、また仕事を探して、老後のゆとり資金にしたいと思っています。

【リフォーム資金の事例】 築40年の自宅を快適な家にリフォーム

Bさん 75歳
年収:年金収入180万円

妻 70歳
年収:年金収入80万円

預貯金  1,000万円
築40年の一戸建ての屋根と外壁、室内もリフォームしたい

Bさんは子育てのために購入した築40年の一戸建てに今は妻と2人で暮らしています。老朽化が激しく、大きな台風が来ると次は屋根が飛ぶのではないかと心配です。また、廊下や脱衣所が寒く、冬場はヒートショックを起こさないか心配です。人生最後の大がかりなリフォームを行いたいと思っていますが、年金生活者でもあり、預貯金の1,000万円を取り崩すのは不安です。思い切って【リ・バース60】でリフォーム資金を借りられないか金融機関に相談してみました。

屋根と壁を塗り替え、お風呂を交換し窓を二重サッシにするなど寒さ対策も行いました。リフォームの総額600万円は痛手と思っていましたが、【リ・バース60】は利息のみの返済です。子どもに迷惑はかけたくないので「ノンリコース型」を選び、金利は少し高めの変動金利3%となりました。それでも600万円の借り入れに対する利息は年間18万円ほどです。預貯金を取り崩さなくても、夫婦の年金収入260万円から返していけそうで安心しました。

【住み替え資金の事例】 広すぎる自宅を売却してコンパクトなマンションに住み替え

Cさん 70歳
年収:年金収入180万円

妻 68歳
年収:年金収入160万円

預貯金 2,000万円
自宅の売却予想額 5,000万円
マンション購入価格 4,000万円

Cさんは妻と100坪ほどある自宅の庭木を手入れしながら楽しく暮らしてきました。しかし、70歳になりこれから老朽化した家の修繕と庭木の手入れを続けていけるのか不安になりました。幸い夫婦共働きだったため年金収入も2人で340万円、預貯金も2,000万円ほどあります。元気なうちに管理がしやすいマンションに住み替えた方が、長く自宅で暮らし続けられるのではないかと、住み替えを計画しました。

しかし、自宅が5,000万円程度の売却価格なのに、住み替え先のコンパクトなマンションも、便利な立地を選べば4,000万円ほどかかります。仲介手数料など諸費用を考えると、手元にはほとんどお金が残りません。住み替えてからの管理費や修繕積立金といった維持費を考えると、自分が先に亡くなったら妻の160万円の年金収入だけではマンションの維持費は払えないだろう、とCさんは心配になりました。

そのため、新しく購入するマンションを担保に【リ・バース60】を利用して資金を借りようと考えました。売却資金のうちマンションの購入に充てるのは2,500万円、仲介手数料など諸費用を500万円とし、1,500万円を【リ・バース60】で借りました。年利3%の毎月の利息は3万7,500円で年間45万円です。しかも売却資金の残額2,000万円と、もともとの預貯金2,000万円を合わせて4,000万円の預貯金が手元に残ります。

マンションの維持費を年間50万円とすると今後20年間で1,000万円です。預貯金の残り3,000万円は病気や介護に備えるお金や老後を夫婦でまだまだ楽しむために使えるお金とすることができ、購入前よりもお金にゆとりができたと、喜んでいます。

【リ・バース60】の注意点

以上、【リ・バース60】の活用法を「住宅ローンの借り換え」「リフォーム資金」「住み替え資金」の3つの事例でご紹介しました。

どの事例を見てもわかるように、【リ・バース60】の最大のメリットは、利息返済のみで一般的な住宅ローンよりも毎月の負担が少ないこと。そのため手元の預貯金を取り崩すことなく老後資金として確保しながら、自宅を担保にお金を借りられます。

しかし、自宅の評価は金融機関によっては毎年、または数年ごとに見直されます。もし土地の評価が下がった時、限度額いっぱいの借り入れをしていると、オーバーしてしまった借入額を一括返済しなくてはなりません。こうしたリスクを軽減するために、金融機関による自宅の評価額が5,000万円でも、5,000万円のローンを借りられるわけではなく、評価額の半分程度が借入限度額の目安、になります。

また、年利3%の変動金利で借りていたのに金利が年利3.5%に上昇すれば、1,000万円の借入額で、年間の支払利息は30万円から35万円にアップします。たかが5万円ですが、年金生活での年間5万円は非常に大きな支出です。

なお、夫婦で暮らしている場合、夫とともに妻が連帯債務者になっていないと、夫が死亡した時妻が自宅に住み続けられなくなることもあります。相続発生後も妻が住み続けられるのか、子どもがいれば、子どもは実家を売却することに同意しているのか、それともローンを一括返済して実家を相続するのか、など相続時のリスクも複数あります。

【リ・バース60】は、アフターコロナの不確な時代、自宅という資産から少ない返済額でお金を借りられる大変よい仕組みです。しかし、生きている間に返済額が増える可能性や、相続発生後のリスクもしっかりと理解した上で、相続人を含めてしっかりと話し合い、余裕を持った返済計画が必要です。

参考サイト:住宅金融支援機構【リ・バース60】

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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