新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、私たちの日常は大きく変化しました。今後、ウイルスを抑え込んだとしても、第二波、第三波の恐れもあって、ウィズコロナに対応した「新しい生活様式」が求められることは変わりません。特に、テレワークや在宅勤務の定着によって、住まいに対する考え方、住まい選びのあり方が大きく変化していきそうです。どんな変化が起ころうとしているのでしょうか。

企業で進むテレワーク、在宅勤務

まずは、図表1をご覧ください。これは、日本経済団体連合会(経団連)が、新型コロナウイルス感染症が拡大、緊急事態宣言が発出された2020年4月に行った調査の結果を示しています。

経団連会員企業が対象ですから、各業界を代表するような大企業が中心であるとはいえ、緊急事態宣言下で通勤や社内での接触を減らすために推奨されたテレワーク、在宅勤務を97.8%の企業が導入しています。

先述の調査は一部の企業対象としたもののため、結果が顕著に表れていますが、パーソル総合研究所は3月と4月に、全国2万人超の正社員として働くビジネスパーソンを対象に、テレワークに関する緊急調査を実施しています。こちらのほうがより世間の実態を広くカバーしていそうです。

この調査結果では、3月の調査時には13.2%だったのに対し、緊急事態宣言直後の4月の調査では27.9%と実施率は2倍になっています。中小企業も含めた全体をみるとテレワーク率は3割弱にとどまっていますが、いずれにしてもテレワークが急速に拡大していることがわかります。

不安を感じながら実際に取り組んでみたら、会社側からみると意外に生産性が高まり、仕事を効率化できるという評価があり、社員の側でも通勤時間のカットで心身ともに快適といった意見が少なくないようです。

それだけに、コロナショックがある程度解消されたとしても、このテレワーク、在宅勤務の流れが、ビジネス界に本格的に定着していくことは間違いないのではないでしょうか。

(資料:日本経済団体連合会『緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策各社の対応に関するフォローアップ調査』)

住まい選びにおける通勤時間の縛りから解放される?

このテレワーク、在宅勤務の定着は住まいのあり方に大きな変化をもたらし、住まい選びを大きく変えることになるはずです。

テレワークが前提なら、通勤・通学時間の縛りから解放されます。これまでは、仕事ありき、会社ありきで、できるだけ会社に近い場所、通勤の便利な場所ということが物件選びの最大関心事のひとつでした。

でも、毎日通勤する必要はなく、ふだんは自宅で仕事をしながら、稀に出勤すればいいということになれば、会社からの時間的、物理的距離はあまり問題になりません。

毎日の通勤のきつさをできるだけ抑制するため、多少狭くても会社に近い場所という選択が中心でしたが、これからは、多少遠くなってもいいのではないか、高くて狭い住まいにこだわる必要はないのではないか?ということになります。

狭くても近いマンションから遠くても広い一戸建て

実際、リクルート住まいカンパニーの調査では、テレワークを前提にすれば、多少通勤時間が長くなってもかまわないとする人が少なくないのです。

「通勤時間が長くなるなら引越しは検討しない」とする人が43%いるのですが、それ以外の人たちは、テレワークが前提なら、通勤時間が長くなってもいいとしています。その許容範囲はかなり異なりますが、図表2にあるように、「90分程度遠い場所でも引っ越したい」とする人も4%います。

そんな人たちに支持されるのが、一戸建てではないでしょうか。これまでは、会社への通勤に便利な場所には、一戸建てを買ったり、建てたりするのは予算的に難しかったけれど、時間を気にしなくてもいいのであれば、広くてゆったりした一戸建てが手に入るはずです。テレワークや在宅勤務の定着によって、改めて一戸建てが見直される、そんな気がしてなりません。

(資料:リクルート住まいカンパニー『テレワーク×住まいの意識・実態調査』)

一戸建てはマンションより30平方メートルから50平方メートル広い

実際、一戸建てならマンションに比べて格段に広い住まいを手に入れることができます。図表3は、国土交通省の『令和元年度住宅市場動向調査』から、2019年に住み替えた経験のある人たちに、住替え前と住替え後の住宅の床面積を聞いた結果をグラフにしたものです。

分譲マンションを買った人の新居は75.8平方メートルで、中古マンションは74.0平方メートルです。それに対して、注文住宅を建てた人の床面積は、新築の場合が121.7平方メートルで、建て替えだと128.9平方メートルと広くなります。分譲戸建住宅、いわゆる建売住宅でも110.3平方メートルです。

分譲マンションと建売でも34.5平方メートルの差があり、注文住宅とでは50平方メートル前後に差が拡大します。しかも先の国土交通省の調査では、価格は分譲戸建住宅が3,851万円で、分譲マンションは4,457万円と、一戸建てのほうが安くなっています。

安くて広い住まいが手に入る一戸建てが見直される要因としては、一戸建てのほうがテレワークに向いている上、一戸建てのほうが新型コロナウイルス感染症を防ぎやすいというメリットもあります。

(資料:国土交通省『令和元年度住宅市場動向調査』)

自分の場所があれば家族の軋轢も小さくなる

まず、新型コロナウイルス感染症予防対策を考えると、マンションは多数の人たちが敷地内に立ち入りし、エントランス、エレベーター、共用廊下では“3密”になるリスクもあります。それに対して、一戸建ては宅配便や郵便などを除けば外部の人は原則入ってきませんし、家族に感染の可能性が出たときにも、隔離しやすいといったメリットがあります。

その上、一戸建てのほうがテレワークや在宅勤務の場所を確保しやすいはずです。テレワークや学校の休校などで、家族全員が24時間同じ場所にいるため、DVや児童虐待が発生したり、人によってはうつに陥ったり、果ては離婚にまで発展するケースが増えているといわれています。それも、マンションのような狭い空間で、四六時中顔を突き合わせていなければならないからこその問題ではないでしょうか。

マンションに比べて30平方メートルから50平方メートル広い一戸建てであれば、その密を回避できる可能性が高まります。家族がそれぞれに距離をとって、自分の場所を確保して仕事や家事、勉強に取り組めば軋轢が生じることもないでしょう。

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