今となっては危険!? 公園から消えつつある「懐かしの遊具コレクション」

子育てをするようになり、久しぶりに公園に行ってみたら、自分の子ども時代とは随分様変わりしていた… そんなふうに感じているパパ、ママは多いのではないでしょうか? 実は、パパママ世代が慣れ親しんだ公園の遊具たちがどんどん姿を消しているのです。今回は、その理由を探っていきます。

懐かしの遊具コレクション

親世代が子どものころに遊んでいた公園の遊具にはどんなものがあるのでしょうか。姿を消しつつある理由についても併せて紹介します。

・箱型ブランコ

ブランコを自力で漕げない小さな子どもたちのために考案された大型ブランコ。そもそもは、ゴンドラ型になったブランコ部分に子どもが乗り、外側から大人がゆらゆらと揺らすという遊具で、別名「ゆりかごブランコ」とも呼ばれていました。年長の子どもたちが座面に立って複数がかりで漕ぐ姿も見られました。

友だちと向かい合わせに乗れる箱型ブランコ

子どもたちが座面や背もたれに立って漕いだり、外側からゴンドラを押したりする際に、転落あるいは転倒して、ゴンドラにぶつかったり、ゴンドラの下に巻き込まれて重傷・死亡するといった事故が複数あり、危険性が高いということで使用禁止、撤去されていきました。

・遊動円木

太い丸太を支柱や梁に鎖で地面すれすれに水平に吊り下げた遊具で、本来の目的は、端から端までバランスを取りながら歩くことで平衡感覚を養うというもの。いつしか、丸太に乗って前後に揺らす遊び方が主流となりました。

座って乗るタイプの遊動円木

転落して丸太と地面の間に挟まる、周囲で遊んでいた子が跳ね飛ばされるといった事故を踏まえ、使用禁止・撤去と措置が取られています。

・回旋塔

高い支柱に円錐状に鎖と輪が吊り下がった遊具。複数の子どもが輪につかまり、バランスを取りながら回転させて遊びます。
高速で回転しているときに遠心力で飛ばされる、手指を切断するという事故があり、回転できないように固定されたり、撤去されたりしています。

高速で回転しているときの身体が斜めに浮く感覚が楽しかった回旋塔

・ぶら下がり式シーソー

支点が高く、板の両端にそれぞれ人がぶら下がって上下運動を繰り返して遊ぶシーソーのこと。回転するものもありました。
一方の子どもが急に手を離してもう一方の子どもが転落するというケースがあり、使用禁止・撤去が進みました。

・チェーンネット遊具

格子状に組まれたチェーンをジャングルジムのように登って遊ぶ遊具で、チェーンネットならではの不安定さが魅力。滑り台などと合体したものもありました。

チェーンネット遊具で “高鬼”をしたことがある人もいるはず

チェーンで手指を切断するという事例があるほか、大型の複合遊具の登場で人気や利用率が下がっているそうです。

・コーヒーカップ式回転遊具

遊園地にあるコーヒーカップのように、真ん中のハンドルを回して回転させる遊具。UFO型などデザインにバリエーションがあります。

回旋塔を半分に切ったような形のものやUFO型のものも(右写真:岡山市提供)

ハンドル部分に腕が挟まり負傷、支柱のボルトが取れていて指を切断するといった事故が起き、使用禁止・撤去の措置が取られています。

遊具使用中の事故を防げ! 子どもの安全を担保したら遊具が消えた!?

国土交通省の取り組み

国土交通省では2002年に「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」をまとめ、その後、2008年、2014年の2度にわたり改訂。“遊び”が子どもの身体的・精神的・社会的な成長にとって必要不可欠なものであると位置づけています。その一方、子どもはその成長過程において大人の予期しない遊びをしたり、遊具を本来の目的とは異なる遊びに使ったりすることがあるとして、事故事例を踏まえ、都市公園における遊具の安全確保に関する基本的な考え方を示しています。

日本公園施設業協会の取り組み

公園施設の安全性・耐久性・快適性などを考慮した製品の開発を目的に、技術開発や調査研究、需要調査、国際交流、普及啓発といった活動を積極的に展開している(一社)日本公園施設業協会では、国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」の内容を踏まえて、同年、「遊具の安全に関する規準」を制定。その後、国の指針の改訂に合わせて2度の改訂を実施し、現在は2014年6月に制定し同年7月に改正した「遊具の安全に関する規準JPFA-SP-S:2014」を適用しています。

「遊具の安全に関する規準」では、遊具の計画と設計、構造と強度、材料など7つの項目が「一般規定」として示されているほか、「各種遊具の詳細規定」として「揺動系遊具」「振動系遊具」「上下動系遊具」など12タイプの遊具について細かく規定されています。これに基づいて遊具を製作することにより、遊具の安全性を追求しています。

行政の取り組み ~岡山県岡山市の例~

岡山市では、市内の公園の遊具について調査を実施。「首を挟む可能性がある」「落下した際、露出した基礎が危険である」といった構造的な危険性(ハザード)が高いと判定した遊具、経年劣化により使用上問題がある遊具など合わせて約700基について、2018年度の終わり使用中止の措置を取り、修繕などの対策を講じています。2019年度末までに上記の9割の対応を完了し、2020年度中に残りの1割の対応を完了させる予定とのこと。また、子どもや保護者向けに、遊具の安全な遊び方を啓発するリーフレットも作成し、今後対象者へ配布予定です。

まとめ

パパやママが子どものころには当たり前のように公園にあった遊具は、子どもたちの予想外の遊び方や経年劣化などにより、重大な事故につながる恐れがあることから、使用中止や撤去の措置が取られつつあることがわかりました。
その一方で、安全性を追求した新しい遊具が登場していますが、遊び方によっては事故が起こらないとは限りません。子どもたち自身が使い方を守り、安全に気を付けて遊ぶことはもちろんですが、保護者や地域の人、公園管理者などが連携して、子どもたちの安全を守っていく必要がありそうです。

[取材協力]
一般社団法人 日本公園施設業協会(https://www.jpfa.or.jp/
岡山市庭園都市推進課 公園緑地係

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