住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年5月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

新型コロナウイルスの感染拡大リスクで世界中の経済が停滞しています。これほどの景気後退局面は2008年のリーマンショックを超えるものであり、それならば【フラット35】の金利も下がるはず…!と思いきや、3月から4月にかけて0.06ポイント上昇しています。

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4月7日には安倍首相が緊急事態宣言を発令し、感染拡大の抑制が期待されていますが、諸外国がもっと早くからより強力なロックダウンに踏み切ったにもかかわらず、感染爆発した例を見ると全く油断はできません。この不安定な情勢下で特に気になる5月の【フラット35】はどうなるのか? わかりやすく解説します。

株価が下がったのに金利が上がってしまったのはなぜ?

直近までの長期金利(日本の10年国債利回り)と日経平均株価の推移をグラフにしました。

長期金利と日経平均株価の推移
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2020年3月7日あたりまでは株価が下がると同じように長期金利が下がっていましたが、長期金利が最低の-0.2%付近となった直後から、株価の下落とは逆方向に10年国債利回りが上昇しています。

国債の利回りが上がっているということは、国債の価格が下がっているということです。それは、投資家たちが「株を売り日本国債も売っている」ことを意味します。

教科書的には、リスクが高まると安全資産の債券(日本国債)が買われ、債券価格が上がり利回りが下がるというのがセオリーです。コロナショックではリスク回避が行きすぎて安全資産まで売りに走ったために、債券価格が下って利回りが上がるという現象が起きているのです。

5月の【フラット35】金利を決定づける要素は感染者の増加ペース

10年国債利回りは一時0.1%あたりまで上昇しましたが、4月7日に安倍首相が緊急事態宣言を発令して以降はおおむね0%のあたりで落ち着いています。この落ち着いている状態は緊急事態宣言が市場にポジティブに受け止められており、感染拡大の抑制が期待されているということを示しています。

一日の終わりに新たな感染者の数が発表され、その数は日に日に増えていますが、それはいわばこの宣言前のツケです。日本では感染爆発が起きておらず、緊急事態宣言により抑制されるだろうということが、長期金利が安定して推移している理由です。

この緊急事態宣言の効果を確認できるまでには平均的な潜伏期間である2週間は最低必要でしょう。それ以前に感染爆発が起きたなら、セオリーどおりに金利が下がる可能性もありますし、逆に前述のケースのように上がる可能性もあります。

つまり住宅金融支援機構の機構債が発表される20日ごろまでの感染者の増加ペースによって、緊急事態宣言の効果が判定され、それに対して長期金利がどう動くかがカギです。

 

長期金利の動向から【フラット35】の金利が予想できる訳

【フラット35】の金利を予想するにあたり、20日ごろに発表される住宅金融支援機構の機構債の表面利率というものが何なのか?を理解しておく必要があります。

住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関なのですが、わたし達が融資を申し込む窓口については、民間の銀行が代行して行う形をとっています。そして、わたし達が住宅ローンとして借りるお金は、住宅金融支援機構が金融市場から調達して貸しているのです。

典型的な例として「買取型」という【フラット35】のスキームを図にすると以下のようになります。

フラット35の仕組み
フラット35の仕組み

住宅金融支援機構が民間金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入します。そのため、表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。

5月の【フラット35】金利は4月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まります。それに大きく影響する要素として緊急事態宣言後の感染者の増加ペースがあるのですね。

実際の長期金利の推移と【フラット35】金利

過去の長期金利と【フラット35】金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

【フラット35】と長期金利
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【フラット35】の金利は毎月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まるため、ちょうど20日ごろの長期金利の影響を強く受けます。なので、機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利がどのくらいの水準になるか?が予想のポイントになります。

4月の【フラット35】が決まった前日の長期金利の終値は0.02%でしたので、3月の-0.05%から0.07ポイント上昇しており、【フラット35】の金利もおおむねそれに近い0.06ポイントの上昇となりました。

上昇したとは言うものの、もしも1日後になっていたら長期金利は0.1%にまで上がっていたので、もっと大きな上昇になっていたでしょう。冒頭で解説した、株価が下がっているのに長期金利が上がるという異常事態が発生していたタイミングなのです。

そして、この記事の執筆時点では、ヒステリックな国債の売りはいったん静まり、長期金利は0%から0.02%あたりで安定している状態です。緊急事態宣言後の感染者の増加ペースが緩やかであれば、20日あたりまではこのまま推移しそうです。そうなれば、4月から5月にかけての【フラット35】金利はおおむね横ばいとなるでしょう。

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【フラット35】については、4月20日ごろの長期金利の水準で5月の金利がほぼ決まります。

この記事では執筆時点の状況が続くと仮定して一定の予想を立てていますが、実際の金利動向が異なってくる可能性は大いにあり得ることです。今後、住宅ローンの実行までの間に何が起こるか?金利がどう反応するのか?を正確に予想することは非常に困難です。用法容量を守ってご利用ください。

特にアメリカやヨーロッパでの感染爆発を鑑みると、数日で状況が激変することもありますので全く油断はできません。これから家を買うという人生最大のプロジェクトをスタートする我々にとって、金利はともかくとして新型コロナウイルスに感染しないということが最優先事項です。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

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