マイホーム取得価格が上昇していることもあって、まとまった額の住宅ローンを利用しなければ首都圏のマンションは買えなくなっていますが、このところ、住宅の希望額融資を断られるケースなどが増えています。希望する住宅ローンを利用できないと計画の変更を余儀なくされる可能性もあります。実情をシッカリと把握して必要に応じた対策を考えておく必要がありそうです。

希望額の融資を受けられた人は84%台にとどまる

国土交通省の『令和元年度 住宅市場動向調査』によると、図表1にあるように、分譲戸建、つまり建売住宅を買った人のうち、希望融資額を「断られた経験はない」とする人は84.1%で、「融資条件を厳しくしなければ融資不可」とされた人が10.3%、「融資は一切できない」といわれた人が3.6%という結果でした。

分譲マンションについてもほぼ同様で、図表2にあるように「断られた経験はない」は84.5%で、「融資条件を厳しくしなければ融資不可」とされた人が10.6%、「融資は一切できない」といわれた人が3.1%となっています。特に、分譲マンションに関しては、「断られた経験はない」とする人が2018年度に比べて8.7ポイントも減少しています。

なぜ、こんなに融資を断られる人が増えているのでしょうか。

図表1 希望額融資を断られた経験の有無(複数回答)分譲戸建住宅 (単位:%)

(資料:国土交通省『令和元年度住宅市場動向調査』

図表2 希望額融資を断られた経験の有無(複数回答)分譲マンション (単位:%)

(資料:国土交通省『令和元年度 住宅市場動向調査』)

マンション価格の上昇による借入額増加が要因か

その要因として、まず挙げられるのが、マンション価格の上昇でしょう。

図表3 首都圏新築マンションと中古マンションの価格の推移 (単位:万円)

(資料:新築マンションは不動産経済研究所調べ、中古マンションは東日本不動産流通機構調べ)

図表3にあるように、このところ首都圏を中心にマンション価格が大幅に上昇しています。新築マンションは近年の底値である2016年の5,490万円に対して、2018年は5,871万円に、2019年は5,980万円に上がっています。3年間で500万円近い上昇であり、借入額を大幅に増やさないと、とても手が出ません。

これは、新築マンションだけではありません、中古マンション価格も2016年の3,049万円に対して、2019年は3,442万円で、こちらは400万円近いアップです。

平均的な会社員の年収はそんなに上がっているわけではありません。厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によると、2016年の一般労働者の平均賃金は30.4万円で、2019年は30.8万円です。この3年間ではマンション価格が400万円、500万円と高くなっているのに対して、賃金はほとんど変わっていないのです。

これでは、ある程度無理をして資金計画を立てざるを得ません。それを見透かされて、希望額の減額を求められたり、融資そのものを断られたりするケースが増えているのでしょう。

金利の上昇で希望額の減額を求められるケースも

もうひとつの要因としては、住宅ローンの金利を挙げることができます。

住宅ローンの金利は、2016年1月の日本銀行によるマイナス金利政策の導入によって、急激に下がり、過去最低金利を記録しました。現在まで超低金利水準にあることは変わりませんが、しかし、その後は若干とはいえ、金利が上昇しています。

住宅ローン金利は周知のように、申し込み日の金利ではなく、建物の引き渡しのあと、融資実行を受ける日の金利が適用されます。分譲マンションの場合、申し込み日と融資実行日の間に1年、2年のズレが生じることがあります。その間に金利が上がっていると、当初の資金計画シミュレーションに比べて、返済額が増えることになります。申込み段階の仮審査時点ではOKでも、本契約前の本審査でNGとなることもあるのです。

その金利上昇によって、希望額の減額を迫られることは珍しくありません。減額で済めばいいのですが、金利上昇幅が大きいと、融資そのものを断られるケースがないとはいえないので、注意しておく必要があります。

住宅ローンの審査金利が適用されることがある

こうした金利上昇に備えて、審査金利を適用する金融機関もあります。前途のように、融資の申し込みから実行までの期間が長い場合には、その間に金利が上昇する可能性があります。それを見込んで、申込み時の金利より少し高めの金利で審査して、可否を判断する仕組みです。

また、変動金利型など、借り入れ後の金利上昇による返済額の増額がある住宅ローンの場合、利用者の借り入れ後の家計の安全を考えて、あえて高めの金利で審査して、将来のローン事故を防ごうという金融機関側の考え方もあります。

いずれにしても、図表4にあるように4割前後の金融機関が「審査金利により審査」としており、「案件により異なる」も2割以上に達しています。審査金利は公表されていませんが、3.0%、4.0%程度の金利を設定しているところが多いといわれています。

ですから、自分の年収と利用する住宅ローン金利に応じた返済額からすれば、借り入れに問題はないだろうと思っていても、審査金利の適用で、減額を求められたり、断られたりすることがあるので、金融機関の金利適用状況にも注意しておく必要があります。

図表4 審査金利の適用状況

(資料:住宅金融支援機構『令和元年度民間住宅ローンの貸出動向調査』

自動車ローンなどの他の借り入れも審査の対象になる

こうした住宅ローンの審査を問題なくクリアするためには、住宅ローン申し込みの前に、お金に関する身辺整理をしておくことをお勧めします。

多くの金融機関では年収400万円以上の人は、返済負担率(ローン返済額が年収に占める割合)35%を審査基準の上限としています。

ただし、この場合の「ローン返済額」というのは、これから利用する住宅ローンの返済額だけではありません。現在、利用している各種のローン、たとえば各種のカードローン、自動車ローンなどを利用しているときには、その返済額も合わせた「総返済額」として計算されることになっています。

住宅ローンだけであれば、問題なく条件をクリアできるような安全な資金計画になっていても、他のローンの返済額を加算すると審査基準に引っかかってしまうことが少なくありません。

住宅ローンを増額して他のローンの一括返済も

ですから、住宅ローンを申し込むときには、そうしたローンなどを一括返済して、住宅ローンを利用しやすくしておくのが、スムーズに融資を受けるために欠かせない対策となります。
自動車ローンだけであれば、交通アクセスのよいマンションを取得することを前提に、クルマを手放すという選択肢もあるかもしれません。

そうはいかない、やはりクルマは必要というのなら、マイホーム取得の頭金として用意している自己資金の一部を、そうしたローンの一括返済に回してはどうでしょうか。

多少手元の資金が厳しくなるかもしれませんが、住宅ローンの返済が始まってからも、キチンと家計を管理していけば、いずれは手元の資金も増えて、万一の備えもできるはずです。

これから、住宅ローンの利用を考えている人は、以上のような点を考慮しながら、住宅ローン利用環境を整えるようにしましょう。

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