【2020年公示地価】上昇した地域、下落した地域、新型コロナの影響は?

2020年3月18日、国土交通省が2020年の「公示地価」を発表しました。「公示地価」は適正な地価形成を図るために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公示するもので、社会・経済についての制度インフラともいうべき存在になっています。
住宅・不動産業界にとっては最も重要なデータのひとつといってよいでしょう。

その「公示地価」、今年の結果は―。

全国の住宅地の対前年変動率は3年連続で上昇

国土交通省では、2020年の「公示地価」について、次のように概要をまとめています。

1.全国平均は5年連続、住宅地は3年連続、商業地は5年連続の上昇で、いずれも上昇基調を強めている
2.三大都市圏は全用途平均・住宅地・商業地いずれも各圏域で上昇が継続している
3.地方圏では住宅地は2年連続、商業地は3年連続で上昇し、上昇基調を強めている

これらの好調の要因として、住宅地は交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調であること、商業地は、オフィス需要やホテル需要などが堅調で、交通インフラ整備や再開発などの進展で需要が堅調であることなどを挙げています。

住宅地、商業地とも地方四市の上昇率の高さが目立つ

実際の動きをみると、住宅地と商業地の「公示地価」の対前年変動率は図表1のようになっています。

図表1 公示地価の対前年変動率

資料:国土交通省ホームページ

住宅地は全国平均で0.8%の上昇で、前年の0.6%から上昇率がやや拡大しています。商業地は3.1%の上昇で、こちらも前年の2.8%から上昇幅が大きくなっています。

なかでも上昇率が高いのは、地方四市です。住宅地は2019年の4.4%から、20年は5.9%まで上昇率が高まっています。さらに、商業地は19年の9.4%から、20年は11.3%と2桁台のアップを記録しました。

それに対して、四市以外の地方圏では、住宅地がマイナス0.2%から0.0%とようやく横ばいに転じたレベルで、地方における格差が一段と大きくなっています。

地方圏では下落が続いている地点も少なくない

全般的には地価が堅調に推移しているとはいえ、地域による格差が依然として続いています。
図表2は、全国平均と三大都市圏平均の調査地点数を、上昇・横ばい・下落に分類したグラフです。

図表2 上昇・横ばい・下落の割合

資料:国土交通省ホームページ

三大都市圏平均の商業地では84%が上昇となっているのに対して、全国平均では59%にとどまっています。住宅地でも三大都市圏平均では54%が上昇しているのに対して、全国平均では44%にとどまり、下落が続いている地点も少なくないのが現実です。

住宅地上昇率トップは北海道の倶知安町

しかし、地方圏が一律に低迷しているのではありません。地域性が高く評価されて、「公示地価」が上がっているエリアも少なくないのです。

その代表格が北海道の倶知安町であり、沖縄県の糸満市などです。
ニセコのスキー場が外国人の間でたいへんな人気になっているのは周知の通りです。旺盛なホテル需要などに支えられて、倶知安町は、ここ数年地価が上がり続けています。20年の「公示地価」全国住宅地のなかでも、上昇率の1位と2位を倶知安町の調査地点が占めました。1位の地点は、1平方メートル当たり10万8000円で、実に前年比44.0%の上昇率でした。

金沢市や那覇市の隣接市の地価が上昇

そのほかにも、さまざまな事情で上がっているエリアがあります。

首都圏では、この3月にJR山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」駅がオープンした東京都港区の港南・芝浦地区では、10%以上、上昇しているエリアがあります。山手線では1971年にオープンした西日暮里駅以来、49年ぶりの新駅で、周囲では大規模な開発が進められていることなどから、地価が大幅に上昇しています。

また、石川県野々市市では、区画整理が進んで良好な住宅地が供給され、隣接する金沢市のベッドタウンとしての注目度が高まり、やはり2桁台の上昇を記録した地点があります。さらに、沖縄県の糸満市も道路整備によって那覇市への交通アクセスの良さが評価されて、市内の2地点が20%台、30%台の上昇を記録、住宅地上昇率ベスト10に入っています。

水害の影響で大きく下落した地点も

一方、相次ぐ災害の影響で「公示地価」が大きく下がっている地点も少なくありません。東日本大震災、熊本地震などでも被災地の地価は大きく下落しましたが、「令和元年東日本台風」の台風被害による影響も小さくありません。それも東日本の広範囲に及んでいるのが特徴です。

JRの新幹線車両基地が水没した長野県長野市の住宅地のなかには、13%台の下落となった地点があり、福島県郡山市、福島県いわき市、宮城県丸森町など被害の大きかったエリアでは、5~10%程度の下落となってしまいました。

新線や新駅動向、ハザードマップなどは要チェック

こうした傾向をみると、どこに住むか、どこに買うかなどを考えるときには、鉄道などの新線計画、新駅開業予定、道路計画など、交通アクセスの現状だけではなく将来の見通しについても十分チェックしておく必要があることが分かります。地域整備によって、5年後、10年後に地価が大きく上昇する可能性があるわけです。

反対に地理的条件によっては、下落リスクもあります。たとえば、水害などに関しては自治体のハザードマップでエリアごとのリスクをしっかりと確認しておくようにしなければなりません。大切な資産なのですから、下調べには労を惜しまないようにしていただきたいところです。

今後は新型コロナウイルスの影響にも注意が必要に

ただ、「公示地価」はあくまでも1月1日時点の調査です。1月以降、世界的に新型コロナウイルスが蔓延、その影響が深刻化しており、今後の地価、そして住宅・不動産価格への影響が懸念されます。
この点に関して、赤羽一嘉国土交通大臣は、「公示地価」発表後の記者会見で次のように述べています。

「コロナウイルスの拡大に伴う地価への影響につきましては、一般的に地価は、賃料、期待利回りなどの状況がその見通しに反映されるものでありまして、こうした地価は、一定の時間がその影響に要するわけでありますので、このコロナウイルスが現時点でどういう影響をもたらすのかは少し困難でございます」

つまり、地価への影響はすぐに出てくるものではないが、ジワジワと影響が出てくる可能性が高いことを示唆しています。

今後の動きに注意しておく必要があるのはいうまでもありません。

<参考>
国土交通省ホームページ:https://www.mlit.go.jp/common/001333705.pdf

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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