家事・育児とどう両立させる? 出産後に転職する際に経験する「ママ転職あるある」

「平成29年 国民生活基礎調査の概況」によると、18歳未満の子どもを育てながら働く「ワーママ」の割合は、子どもを持つ母親の70.8%。多くのママたちが、育児と仕事を両立している状態ですが、子どもの年齢によってその割合は大きく異なります。

一番下の子どもが0歳のときに働いているママは、ママ全体の42.4%ですが、徐々にその割合は増えていき、下の子どもの年齢が12歳から14歳時の82.5%にまで増加します。

厚生労働省「平成29年 国民生活基礎調査の概況」より引用

ただし、正社員として働くママの割合は子どもの年齢が上がってもあまり増加していません。正社員として働くことに限界を感じたママが、正社員以外の就業形態を求めて転職したりフリーランスを選択したりしていることが推測できます。
そこで本記事では、女性が出産後に転職する際に経験する、「ママ転職あるある」についてお届けします。

時短勤務ができない

小さな子どもを抱えるママにとって、時短勤務は命綱。保育園の利用時間と通勤時間の兼ね合いによっては、定時まで働くことができないママも大勢います。時短勤務制度は、子育て中のママにとっては非常に助かるのですが、転職したてのママは時短勤務制度の適用対象外となることが少なくないようです。

2017年から施行されている改正育児・介護休業法において、3歳未満の子どもを育てる親に対して、短時間勤務制度を設けることが義務化されています。しかし、1日の労働時間が6時間以下である場合、以下のように労使協定によって適用除外とされている場合などは時短制度を利用できません。

・雇用期間が1年未満の場合
・1週間で2日以下しか働いていない場合
・業務の性質や実施体制に照らし合わせて制度の導入が難しい場合

このなかで、転職ママが該当しやすいのは、「雇用期間が1年未満の場合」です。

法律で時短制度の適用が義務づけられていなくても、独自の時短制度を取り入れている会社であれば、転職してすぐに時短勤務が可能になるケースもあります。しかし、法律で守られているわけではないため、時短勤務を要請しても認められない可能性があるのです。

また、産後に転職したママのなかには、新しい職場での居場所を確保するために、時短勤務ができるはずなのに無理をしてフルタイムで働く人もいるようです。

転職後、時短勤務を望む場合は、時短制度を実際に利用できるかどうかをきちんと確認しておくとよいでしょう。

そもそも求人が少ない

「ワーキングマザー大歓迎」と書いてある求人でも…

首都圏では、ワーママ専用の転職エージェントやサイトが運用されているものの、十分な求人数があるとはいえない状況です。地方ではさらに正社員として働くことが難しい傾向にあり、苦境に立たされている転職組は少なくありません。「ワーキングマザー大歓迎」とある求人に応募しても、面接に至る前の書類選考で落とされてしまうこともあるようです。

ある大手求人サイトで東京都内の正社員求人数を検索してみたところ、検索結果は35万9,493件、アルバイト、パートは21万6,761件。これに「ワーキングマザー」とワードを追加すると、正社員求人件数は637件、アルバイト、パートは62件にまで激減してしまいました(2020年3月9日時点)。

まだまだ、ワーキングマザーを歓迎している企業が少ないと推測できます。

敵は隣にいた! 夫ブロック!

せっかく転職先が決まったのに、夫が原因で転職に失敗してしまう、「夫ブロック問題」。「転職はやめたほうがいい」など、転職すること自体を夫に反対されることも。ママが働くことにパパが協力しようとしてくれないため、育児や家事が思うようにできず、転職できたところで、結局ママが退職を余儀なくされることもあります。

転職活動中、転職後の夫ブロックを回避するためには、夫婦間でしっかり話し合いをしておくことが重要です。転職によって勤務時間の変化がある場合は、家事負担などについてあらかじめしっかり議論しておきましょう。

家庭内に突然の変化が生じることを嫌う方は少なくありません。変化することと変化しないことをリストアップして、夫婦の役割分担も見直してください。

正社員以外の働き方を選択するママも増加中

政府が推進する働き方改革により、日本人の働き方の多様化が進んでいます。正社員であっても、フレックスタイム制度やテレワーク制度を導入することで、ママが働きやすい環境が整いつつある企業も少なくありません。

特定の企業に雇用されるのではなく、フリーランスという形で独立するママも増加してきました。2019年版の「小規模企業白書」によると、2007年のフリーランスや会社経営者などの女性起業家数は3.6万人でしたが、2012年は4.2万人、2017年には4.4万人と増加しています。起業家数全体が18.1万人から16万人に減少しているにもかかわらずです。

女性起業家と、女性非起業家を比較したデータによると、女性起業家における育児中女性の割合は26.9%ですが、非起業家における育児中女性の割合は17.4%でした。フリーランスや会社経営といった働き方のほうが勤務時間や勤務場所などをコントロールしやすいことから、独立、起業を選択するママが増えていると推測することができます。

ママ転職を成功させるために

ママが転職に成功するためには、「雇用されること」「働き続けること」という2つの課題をクリアしなければなりません。

ママが新しい仕事を得るために重要なのは、勤務時間や育児による制約を職場に事前に伝えた上で、理解を得ることです。できないことをできると言って雇用されても、遅かれ早かれ行き詰まってしまうことになりかねません。

特に、多くのワーキングママが苦労しがちな「子どもの具合がよくないとき」の対応については、転職前にきちんと決めておくとよいでしょう。病児保育室への登録や、病児保育を取り扱っているシッターの調査などをあらかじめしておくと、転職後に子どもが突然熱を出したときも落ち着いて対応できます。

子どもが発病してしまったときの対応についても、面接のときなどに説明できれば、先方からの信頼も得られやすくなるはずです。

また、地域は限られているものの、ママ専用の転職エージェントも増えてきているため、ニーズがマッチする求人に出合いやすくなりつつあります。オープンな求人を探しても、なかなか見つからないという方は、エージェントの利用を検討してみましょう。

子育て中のママやパパの仕事探しをサポートする「マザーズハローワーク」やハローワークの「マザーズコーナー」では、キッズコーナーや授乳室が完備されるなど、子連れでの転職活動がしやすい環境が整っています。住まいの近くにマザーズハローワークやハローワークのマザーズコーナーがあるかどうかも確認しておくとよいでしょう。

さらに、働き続けるために大切なのは夫や家族の理解と、家事に対する割り切りです。仕事をしながら完璧に家事をこなすことは難しく、完璧を目指すことで追い詰められてしまうこともあります。時短家電や、宅配食材、外食などを上手に活用して、家事の負担を軽減するようにしましょう。

転職を考えているママは、転職先を見つけるだけでなく働き方や家事、育児との両立方法を検討・設計しておくことが大切です。

<参考>
「平成29年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)
「育児・介護休業法のあらまし」(厚生労働省)
「求人検索」(indeed)「ワーキングマザー」
「2019年版 小規模企業白書」
「子育て中の仕事探しは “マザーズ” で」(厚生労働省)

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