マンション購入時、頭金は必要? 夫婦で購入の際に気をつけたい「贈与税」も

マンション購入を検討する際、頭金を用意するかどうかは悩みどころ。あったほうがよいだろうけれど、いったいどのくらいを目安に準備すべきかが迷ってしまうポイントです。

用意すべき頭金の目安や自己資金の割合などについて、ファイナンシャル・プランナーの平井美穂さんにアドバイスをいただきました。また、夫婦間でいずれかが頭金を用意する場合に気をつけたい「贈与税」の存在についても解説しているので、頭金の準備を検討している方はぜひチェックしてみてくださいね。

頭金を用意することで金利面にもメリットがある

住宅ローンの借り入れ金額が少なくなることで返済が楽になりそうなイメージはあるものの、頭金(=自己資金)があると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

「自己資金比率が高いほど、低金利で融資を受けられる可能性が上がります。例えば【フラット35】では、所要資金の9割以下の借り入れの場合、適用金利は1.24%。対して、9割を超える借り入れの場合は1.50%の金利となります(※)」(平井さん)

※いずれも団信加入・返済期間21~35年、最低金利で取り扱う金融機関の2020年3月時点の実行金利

つまり、所要資金の1割以上を頭金として用意しておき、借入金額を9割未満に抑えることで、金利を下げられるメリットがあるということです。逆説的に言えば、頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能ですが、金利が上がってしまったり、審査に通りにくくなったりといったデメリットがあるようです。

借り入れが少ないほど購入後の返済負担や利息の支払も少なくてすむので、「マイホームのために」と貯金に励んでいた人は、ここで自己資金を投入するのがよさそうですね。

「とはいえ、頭金に貯蓄の全てを使うのも危険。子どもの進学や出産、自動車の購入など、一時的な支出が控えている場合には手元に資金を残しておきましょう。支出の予定がない場合も、半年分くらいの生活費を残しておくと安心です」(平井さん)

気をつけたい! 購入額以外にかかる「諸費用」

 また、マンション購入時の見積もりで驚かされることも多いのが、購入にまつわる「諸費用」。以下のような項目があります。

・仲介手数料(仲介業者を利用した場合)
・ローン斡旋手数料またはローン代行手数料
・火災・地震保険料
・ローン事務手数料
・(フラット35の場合)適合証明書の取得費
・契約書貼付用の収入印紙代
・住宅ローン保証料(ローンの種類によって必要)
・登記費用(表示登記)
・登記費用(所有権保存・移転・抵当権設定)
・固定資産税・都市計画税の初年度精算金
・修繕積立一時金・管理準備金(マンションの場合)

金額は物件によってまちまちですが、物件価格の4~10%ほどかかるため、思ったよりも高額になることも。諸費用の融資を受けようとすると、場合によっては住宅ローンとは別に金利の高い諸費用ローンを申し込まねばならなくなるため、諸費用分は可能な限り自己資金で用意したほうがよいそうです。

頭金の目安となる金額は物件価格の1~2割

それでは、諸費用とは別にして頭金はどれくらい必要なのでしょうか? 金利を抑えるためには所要金額の1割以上あればよさそうですが、具体的にどの程度の頭金を用意するのが一般的なのでしょうか。

「物件価格の1~2割ほどの自己資金を用意できると、金利面では有利になりますね。とはいえ、5000万円の物件であれば500~1000万円の自己資金が必要となり、なかなか貯蓄で増やすのは難しい金額かもしれません。また、諸費用が物件価格の4~10%かかることを考えるとさらに難度はアップします」(平井さん)

5000万円の物件を購入する場合、頭金の理想的な金額は500~1000万円。それに加えて諸費用が200~500万円必要になると考えると、どちらも貯まるまで待つほうがよいのでしょうか?

「今は低金利で、預けておくよりも借りるのに適したタイミング。まずは諸費用分については自己資金で出すことを目指して貯蓄に励み、貯まった段階で購入に踏み切るのもよいでしょう。貯まるのを待つよりも早く借りて、早く返し終わるのが理想的ですね」(平井さん)

土地・建物の持ち分割合と、資金の出どころによっては「贈与税」の対象に

「名義は夫の単独名義にするけれど、頭金は妻が出す」というケースでは、この金銭の動きが妻から夫への「贈与」とみなされ、贈与税がかかることがあります。

「原則として、自己資金の出資比率(いくらずつ出したか)と債務の負担割合(いくらずつ借りるか)によって土地・建物の持ち分を決めます。例えば5000万円の物件について夫が300万円、妻が100万円の自己資金を出し、住宅ローンは夫が3700万円、妻が900万円借りる場合、それぞれの持ち分割合は以下の通りです」(平井さん)

夫:(自己資金300万円+住宅ローン3700万円)÷物件価格5000万円 → 持ち分割合は4/5
妻:(自己資金100万円+住宅ローン900万円)÷物件価格5000万円 → 持ち分割合は1/5

このケースで夫婦の持ち分を半分ずつとした場合、夫が1500万円を妻に贈与したとみなされて贈与税がかかる場合があるそう。夫婦間の贈与の場合は贈与額によって10~55%の贈与税率が適用され、上記のケースでは450万円ほどの贈与税が課せられる計算になります。

贈与税の発生を避けるにはどのような方法があるのでしょうか。

「登記の際には、原則として持ち分を出資分と揃える(上記の場合、夫4:妻1にする)必要があります。また、年間110万円までは基礎控除として贈与税の対象外にできるので、その金額に収まる負担であればOKと判断できます」(平井さん)

共働きの夫婦が増え、二人がお金を出し合って購入することも多いマンションですが、夫婦間でも贈与税が発生するケースがあることがわかりました。持ち分と出資比率は揃えるのが前提ですが、もし夫婦間で贈与とみなされるケースが発生した場合、基礎控除の範囲内に収めることでクリアできそうです。

まとめ

マンション購入時の頭金と、頭金の出資にまつわる贈与税についてFPの平井さんの解説とあわせてご紹介しました。「頭金はあったほうが借入時に金利面で有利になりやすいが、諸費用がかかることも考慮して貯めることにこだわりすぎないことが大切」といえます。

また、夫婦でマンションを購入する場合、所有する名義や頭金をどちらがどれだけ出すかについては、贈与税発生の可能性があるため慎重な話し合いを。不安な場合は、ファイナンシャル・プランナーへの相談を視野に入れて検討するのがおすすめです。

監修:ファイナンシャル・プランナー平井美穂さん

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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