「わからない」より「間違った知識」が危険! 子どもを家庭内事故から守るには

保護者にとって、子どもの事故や怪我の心配は尽きないものです。「家の中にいれば安心」「親と一緒にいれば防げる」と思っていても、転落や誤飲、溺水など家庭内での事故も少なくありません。そこで今回は、消費者庁・消費者行政未来創造オフィスが2020年2月に発表した「子どもの事故防止プロジェクト・レポート」から、家庭内での子どもの事故防止に対する保護者の意識のあり方と、事故の具体的な防止策について紹介します。

事故の応急処置は「わからない」より「間違った知識」が危険

消費者庁は2017年度に、徳島県内の0~6歳児の保護者やこれから保護者になる人、保育士へアンケートを実施。調査項目の1つに応急処置に関するクイズ「たばこ、ボタン電池を誤飲した場合の対処法」が設けられました。

出典:消費者行政新未来創造オフィス 子どもの事故防止プロジェクト・レポート「事故防止に関する保護者の知識」

正解となる対処法は「何も飲ませず、吐かせないで至急病院へ行く」。

理由は、タバコは水などを飲ませてしまうとニコチンが溶け出して体内に吸収されやすくなり、ボタン電池は小さいため強制的に吐かせようとすると、気道に入って窒息する危険性があるからだといわれています。 このクイズの回答状況を母親、父親別にみたところ、正解率は母親が53.6%、父親が47.3%となりました。また、父親では「わからない」よりも「不正解」を選択した人の割合の方が高くなっています。

出典:消費者行政新未来創造オフィス 子どもの事故防止プロジェクト・レポート「事故防止に関する保護者の知識」

ここで注目したいのは「不正解」の回答者と「わからない」の回答者の認識の違いです。

「わからない」と回答した保護者は正しい対処法を調べたり、電話などで医療機関に連絡したりするといった行動がとれますが、不正解の回答を選択した保護者は間違った対処を行う可能性が高く、場合によってはさらなる危険な状況を招くことが懸念されます。

初めて子育て親が心配しているのは、就寝時の窒息事故

また調査で、保護者が日頃、子どもに起こるかもしれないと「気にしていた事故」について聞いたところ、初めて子育てをする保護者と子育ての経験がある保護者とでは、気にしている事故ケースが異なっていることが分かりました。

例えば、誤飲や窒息事故について、初めての子育てとなる保護者では「ベッドと壁との隙間や家族の身体による圧迫による窒息」、「やわらかい敷き布団や枕、かけ布団、ぬいぐるみによる窒息」について気にする傾向が強いのに対し、子育て経験のある保護者は「おもちゃなど小さな物がのどにつまる窒息」、「ボタン電池・吸水ボール・磁石の誤飲」について気にしていたという回答が多くなっています。

出典:消費者行政新未来創造オフィス 子どもの事故防止プロジェクト・レポート「保護者が気にしている事故と保護者が行っている事故防止対策」

さらに、子育て経験の差は、普段の事故防止への取り組み方にも影響するようで、例えば「敷き布団やマットレスは硬めのものを使う」という就寝時の対策や、「おもちゃを購入するとき、対象年齢のあった商品を選ぶ」といった子どもが手にするものに関する対策でも、初めて子育てをする保護者の方が「行っている」と回答した割合が高くなっています。

出典:消費者行政新未来創造オフィス 子どもの事故防止プロジェクト・レポート「保護者が気にしている事故と保護者が行っている事故防止対策」

状況にもよりますが、初めて子育てをする保護者の方が、子育ての経験がある保護者よりも、事故防止の対策を行っている傾向があることがわかりました。それでは今回の調査の回答以外には、家庭内でどのような事故が起きるのでしょうか。次項では起こりうる事故の具体例と正しい防止策について紹介します。

日常に潜む事故の具体例と防止策

生活のどんなシーンでどのような事故が起きるのか、また、どうすれば防ぐことができるのでしょうか。

厚生労働省が公開する「子どもの事故防止支援サイト」から年齢別に一例を紹介すると、

例えば0~1歳に多い転落事故は、突然寝返りを打って、ベビーベッドやソファなどから転落するというものなので、このような高いところに一人にしないことが大切です。

1~2歳で多い食事中のやけどは、テーブル上のお茶やコーヒー、麺類、味噌汁といった熱いものに不用意に手を出してしまい、起こることがあります。また、テーブルクロスを引っ張ってしまい、食卓にのっていたものを頭からかぶってしまうこともあるため、この時期はテーブルクロスを使わないようにすることも防止策の一つです。

活動範囲が広がる3~6歳では、ベランダから転落する危険性もあります。柵が110cm以上あるか、足をかけられるような構造になっていないかなどを点検し、エアコンの室外機など踏み台になるようなものはそばに置かないようにしましょう。

まとめ

子どもの傷害予防に関する様々な活動を行うNPO法人「Safe Kids Japan」の公式サイトによると、1歳以上の子どもの死亡原因第1位は「不慮の事故」となっており、この状況は1960年から変わっていないとのこと。子どもの家庭内の事故は、思い込みや間違った知識による応急処置でかえって危険な状況を招くことがあります。また子育てをしたことがあると、初めての子育てに比べて、過去の経験や慣れから事故の防止策が不十分になる傾向があります。家庭内とはいえ油断せず、どんな場面でどのような事故が起こりうるのかを認知し、適切な防止策や応急処置を行いましょう。

【調査概要】
調査タイトル:平成 29 年度 子どもの事故防止調査
調査対象:徳島県内の0~6歳児の保護者またはこれから保護者になる方、保育士※
調査期間:2018年1月19日~2月28日
調査方法:郵送配布または手渡し、郵送回収またはWEB 回答
調査地域:徳島県
調査対象者:12,303人
実施機関:株式会社 サーベイリサーチセンター
※調査の詳細は【平成 29 年度 子どもの事故防止調査】を参照
https://www.caa.go.jp/future/project/project_006/pdf/project_006_180523_0002.pdf

ニュース提供元:消費者庁
情報提供元:消費者安全課(消費者行政新未来創造オフィス)

 

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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