3月から都心ビュー販売開始、選手村マンション「晴海フラッグ」は“買いか”

「晴海フラッグ」。世界的なスポーツイベントの選手村として利用されたあと、ファミリー向けにリフォームされて、分譲マンションとなります。三井不動産、三菱地所などのわが国を代表する不動産会社10社が共同開発する、都内最大級の大規模開発物件です。2020年3月から都心ビューで、商業施設に隣接する恵まれたロケーションの新街区の販売が始まります。果たして買うべきなのでしょうか。

敷地内で生活を完結できる都心型のコンパクトシティー

東京都中央区晴海という都心にあって、約18万平方メートルの敷地に、分譲マンション4,145戸、賃貸住宅1,487戸の合計5,632戸が建設される「晴海フラッグ」。敷地内には大型商業施設、保育園や小学校などの子育て、教育施設のほか、介護住宅なども揃い、敷地内で生活を完結できる都市型のコンパクトシティーになります。世界的スポーツイベントの選手村として利用されたあと、リフォームされて分譲マンションとなります。

すでに、2019年夏から販売が始まっており、分譲マンション4145戸のうち、第1期1次と2次で940戸が販売され、893戸が成約しています。この1次と2次合計の申込み件数は2,220組に及ぶそうですから、人気の高さがうかがえます。

そして、2020年3月からはこれまで売り出されていなかった新街区「SUN VILLAGE」の販売がスタートします。図表1にある配置図を見るとわかりますが、広い敷地のなかでも、唯一都心側に向いたエリアで、都心の夜景、レインボーブリッジなどを望む恵まれたロケーションです。それだけに買ってよいものかどうか、迷っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

図表1 「晴海フラッグ」の敷地配置図

資料:「晴海フラッグ」公式ホームページ

価格面で考える

「晴海フラッグ」のホームページによると、新街区の「SUN VILLAGE」の物件概要は図表2にある通りです。ここに価格例が示されています。

「晴海フラッグ」のある勝どき、晴海エリアの新築マンションの3.3平方メートルの当たりの坪単価は300万円台です。たとえば、この『晴海フラッグ』の幹事社である三井不動産レジデンシャルが継続販売している「パークタワー晴海」の最も安い住戸は43.92平方メートルの4,551万円です。坪単価にすると340万円を超えます。また、住友不動産の「ベイサイドタワー晴海」は54.73平方メートルが5,800万円ですから、坪単価は350万円ほどになります。

それに対して、この「晴海フラッグ」の「SUN VILLAGE」の最も安い住戸は、61.06平方メートルが4,900万円台ですから、坪単価にすれば265万円です。

もちろん、三井不動産レジデンシャルや住友不動産のマンションに比べると、最寄り駅からの徒歩時間が長いといったハンデはあるのですが、価格面だけで判断すれば、これはもう“買い”ということになります。

なお、この坪単価の安さは、選手村として利用することを条件に、東京都から格安で土地を仕入れることができたからではないかといわれています。こうした特殊な事情のある物件は簡単には出てきませんから、希少性は高いかもしれません。

図表2 「SUN VILLAGE」第一工区第1期物件概要

資料:『晴海フラッグ』公式ホームページ

立地面で考える

ただ、価格が本当に安いのかどうかは、立地条件との見合いが肝心です。先にみたように、この「晴海フラッグ」は確かに東京都中央区の都心には位置しますが、最寄り駅の都営地下鉄大江戸線「月島」駅から徒歩17~21分とかなりのハンデがあります。

10年前に首都圏で分譲されたマンションが、現在の仲介市場において、分譲価格の何%で取り引きされているかを示す、東京カンテイの「リセールバリュー」調査によると、首都圏では、最寄り駅から徒歩3分以内なら102.7%と、分譲時価格を上回っていますが、徒歩7~10分では93.8%にダウンし、16~20分では84.9%、21分以上では80.9%まで下がります。

現在のように、中古マンション市場の活況が続いている時期でも、徒歩時間が長いと10年後には1割、2割と価値が下がるわけですから、市況が悪化した場合には、もっと下がるかもしれません。

アクセス面で考える

この交通アクセスを改善するため、スポーツイベント期間中からBRT(バス高速輸送システム)が運行される予定です。新橋・虎ノ門方面から晴海を通って、有明・豊洲方面まで結ばれる予定で、「晴海フラッグ」内にもバスターミナルが設置されることになるでしょう。

そうすれば、都心のビジネス街、ショッピング街などとダイレクトにつながりますが、鉄道に比べて輸送量が限られるバスで、どの程度の効果が期待できるのか、スポーツイベント中の運行状況を見ながら判断したほうがいいかもしれません。
とはいえ、多少の問題はあるにしても、東京都中央区晴海という立地には捨てがたいものがあるのも事実です。

都心のビジネス街に勤務する人なら、BRTがスムーズに運行されれば、ドアツードアでも30分、40分で通えるかもしれませんし、天気のいい休日には、築地や銀座などの飲食街、ショッピング街をゆったりと散歩できます。教育施設も敷地内に揃っているので、子育て世帯にはうってつけですし、介護住宅もあるのでシニアにも向いているかもしれません。図表3のパース画にあるように、敷地内の配置もゆったりしているので、お年寄りや子連れも安心して歩けそうです。

図表3 「晴海フラッグ」の完成予想パース画

資料:「晴海フラッグ」公式ホームページ

入居タイミングで考える

徒歩時間の長さから、将来の資産価値の低下が懸念されるとはいっても、永住を前提にすれば、10年後、20年後に資産価値が下がっても特に気にする必要はないでしょう。先にも触れたように、販売価格は相場よりかなり安いのですから、資産価値が下がるといっても、通常の物件に比べれば、下げ幅は小さくなる可能性もあるので、永住前提なら、やはり“買い”ということになりそうです。

懸念材料があるとすれば、入居可能時期までの期間が長すぎるという点です。図表2にあったように、現在の予定では2022年秋の完成で、入居時期は2023年3月下旬になっています。現在、長子が3歳未満だったり、これから子づくりというプレファミリー世帯なら、子どもの小学校入学を新居で迎えることができるのはメリットでしょうが、それまでの3年の間に、経済、社会などの環境がどう変わるのか、不安な要素がないではありません。

住宅ローンで考える

『晴海フラッグ』を買おうとする人たちのなかには、全額現金でポンと買うという人たちは少なく、平均的な会社員や公務員などが住宅ローンを組んで買うというケースが多いのではないでしょうか。

その住宅ローン、実は申込時の金利ではなく、融資実行時の金利が適用されるということをご存じでしょうか。現在は、金利1.0%程度としても、融資が実行される2023年3月以降の金利が現在のままとは限りません。2%も3%も上がるようなことはないにしても、ひょっとすると1%程度は上がっているかもしれません。

仮に、5,000万円のローンを固定金利1.0%、35年返済で利用すると、毎月返済額は14万1142円ですが、金利が2.0%になっていると16万5631円に増えます。年収に占める年間返済額の割合を示す返済負担率を、より安心な範囲といわれる25%までに抑えるためには、金利1.0%なら約677万円の年収でOKですが、金利2.0%なら800万円近い年収が必要になります。

ライフステージの変化や金利の変化なども考慮して決断

実際に2023年の金利がどうなっているのかは、誰にも断言はできませんが、いずれにしても、金利が若干上がった場合のことを想定して、ゆとりをもった資金計画を立てることが重要になってきます。それができる人であれば、やはり“買い”ということになるのでしょうか。

以上みてきたように、「晴海フラッグ」は、周辺相場よりかなり安い価格で分譲されており、価格面でいえば、“買い”ですが、交通アクセスの悪さが否めないので、その点は慎重に判断する必要があります。それでも、将来の値下がりなどを気にしない永住志向というのであれば、やはり“買い”でしょう。

そうはいっても、入居が3年先になるので、買うにしても、それまでのライフステージやライスタイルの変化などをシッカリとチェックしながら、同時に金利動向にも目を配って、ゆとりの資金計画を立てて買う――というのが結論になりそうです。

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