2020年の4月以降に高齢者が受け取る公的年金の受給額は、2019年度よりも0.2%増額されるものの、「マクロ経済スライド」の発動により、2年連続で物価や賃金の伸びより年金額の増加が抑制されることになりました。今回は、公的年金が物価上昇(インフレ)に弱い仕組みになっている理由と、その対策を考えましょう。

マクロ経済スライドとは?

高齢者が原則65歳から国から受け取る公的年金は、一定の条件下でマクロ経済スライドが発動されて、年金額が、物価や賃金の伸び(インフレ率)よりも抑制される場合があります。

この制度は、物価上昇率や賃金上昇率、公的年金の加入者数や平均余命の伸び、経済状況などに基づいて、年金額をカットする仕組みで、2004年に導入されました。
導入の背景には、今後も続く少子化、高齢化、長寿化によって公的年金の財政がますます厳しくなっていく中で、高齢者に支払う年金額を抑制していかなければ、将来の現役世代の保険料負担が過重になり、公的年金制度の持続性が危ぶまれるということがあります。

マクロ経済スライドは、ある程度物価や賃金が上昇した年に発動が決まり、翌年度の年金額が抑制されます。2004年の導入以来、これまでに3回発動され、1回目は2015年度、そして、2回目、3回目は2019年度、2020年度と2年連続で発動されることになりました。

今後も一定以上の物価、賃金の上昇があれば、マクロ経済スライドが発動され、物価等の伸び(インフレ率)よりも年金額が抑えられることになります。このことは、特に20代や30代などの若い方々の老後の年金に影響し、高齢期に公的年金だけでは不足する資金が増えることにもつながります。

過去2年、公的年金の額は増えているが、物価上昇率よりも上昇幅が小さい!

厚生労働省は、2020年1月に、2020年度(2020年4月~2021年3月)のモデル世帯の公的年金額を公表しました。
2019年度と2020年度のモデル世帯の公的年金額は、以下の通りです。

※平均的な収入で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

2019年度は、前年の2018年度よりも+0.1%増額されました。2020年度は2019年度よりも+0.2%増額されます。両年度ともに、前年度よりも公的年金額は増えています。

しかし、前年の物価上昇率と、公的年金額の上昇率と比較すると、両年度ともに、物価上昇率ほどには、公的年金額は増えていません。2019年度の前年の物価(消費者物価指数<生鮮食品を含む総合指数>)上昇率+1.0%を受けて決定された2019年度の公的年金額の上昇率は+0.1%にとどまっています。

また、2020年度の前年の物価上昇率+0.5%を受けて決定された2020年度の公的年金額の上昇率は+0.2%にとどまっています。これは、マクロ経済スライドの発動によって、公的年金額が抑制されているからです。

物価等が上がっても、年金額が抑制されることから、公的年金制度は、物価上昇(インフレ)に弱い制度だということができるでしょう。

公的年金で不足する老後資金は、若いうちから自助努力で準備する!

物価上昇(インフレ)に弱い公的年金制度を補完するためには、物価上昇(インフレ)に強いやり方で、自助努力による資金準備をする必要があります。

この方法のひとつが、株式や不動産、外国の資産などを活用した資産運用です。これらの資産運用は、一般的に物価上昇(インフレ)に強いといわれています。物価が上がると、商品・サービスの価格が上がり、企業収益が増えて株価が上昇します。不動産も物価が上がると賃料や、土地、建物の価格が上昇します。外国資産への投資では、日本国内で物価が上がると一般的には為替相場は円安になり、運用損益はプラスに影響します。

近年では、個人が自分で資産運用をすることを促進する制度が充実していいます。具体的には「iDeCo(個人型確定拠出年金制度)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」という税制優遇の大きな有利な仕組みがあります。株や不動産、外国資産などを組み入れた投資信託という金融商品を活用し、積み立てながら長期運用することで、物価上昇(インフレ)率を上回る収益を期待することができます。

20代、30代などの若い世代は特に、自分の将来の公的年金を補完するために、毎月少額ずつ、無理のない金額から、長期的な資産運用をスタートしてはいかがでしょうか。

まとめ

毎年1月に公表される翌年度の公的年金の受け取り額は、直接的には、近い将来受け取る高齢者や、既に受け取っている高齢者の問題ですが、公的年金の原資を保険料という形で負担している現役世代の方々の将来の問題にもつながっています。
若い方々は、老後までにはまだまだ時間があり、それまでに起こるさまざまなライフイベント費用の準備をする必要がありますが、一方では、少し老後のことも考え、老後の資金準備を目的とした財産形成を無理のない金額からでも実践したいものです。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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