【ARUHIアワード12月期優秀作品】『我が家のツリー』黒藪千代

「お義母さん、出しちゃった!」
寒さに首をすくめて玄関のドアを開けた十一月の終わり、お嫁ちゃんが目をらんらんと輝かせ嬉しそうに言って玄関で私を出迎えてくれた。
綿菓子のようにフワフワと甘い空気を放つお嫁ちゃんは、広くなっても楽しい我が家を一緒に造ってくれている。
深夜に電話をかけてきた息子の言葉に全力で答えたいと思う気持ちはきっと同じだと感じる。
「出しちゃった?の?」
何の事やら?と思いながら、お嫁ちゃんの楽しそうな姿に顔をほころばせリビングへ続くドアを開けると、そこには父のツリーが登場していた。

 遠い昔のあの日、まだ小さかった子供達と選んだ飾りもそのままに、赤や緑の電気をチカチカと灯らせているツリーは、広くなった我が家で心なしか大きく両手を広げているように見えた。
引っ越してすぐに誕生した初孫が五か月を迎え、息子の腕に抱かれ大きなツリーに目を輝かせ手を伸ばしている。

パパになった息子とその腕に抱かれる初孫、ママになったお嫁ちゃん。そして成長した娘と歳をとった私、五人になった家族に囲まれたツリーを見上げると、父の顔が、滅多に笑う事のなかった父の顔が、笑っているような気がした。

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