南北に長い日本は、地域によって気候が違い、同じ季節でも北と南では見える景色も異なります。そのおかげで地方の市町村は、さまざまな個性を持っています。そんな地方の活性化を政府が後押しする政策が地方創生推進交付金事業。地方自治体が主軸となって行う事業の活動資金を補助しています。その一つが北海道斜里郡小清水町。基幹産業である農業を主軸とした「農+観+福で紡ぐ“稼ぐ力”向上プロジェクト」を2019年4月から推進しています。プロジェクトを中心となって進めている小清水町役場産業課課長 細川正彦さんにお話を伺いました。

農業の担い手発掘から始まったプロジェクト

日本の最北端にある北海道は、豊かな自然に恵まれ、日本の農地の1/4を有するほど農業が盛んな地域。日本の食糧基地ともいわれ、私たちが食べる国産小麦などの多くは北海道で採れたものです。

今回ご紹介する北海道小清水町も小麦や馬鈴薯、大豆、てんさいなどを中心とした農業を基幹産業とした町。国産小麦というと、北海道なら十勝を思い起こすという人が多いかもしれませんが、実は小清水町は十勝に勝るとも劣らない質と量の生産を誇っています。

そんな小清水町ですが、他の地方都市と同様に高齢化に伴う人口減少に悩んできました。農業の担い手が減れば日本の食糧基地としての役割が果たせなくなってしまうからです。同時に、町自体の維持が難しくなることでもあります。まずは当面の対策として大型機械を導入することで生産量をカバー。一方で、将来を見据えたプランを考え始めました。

大型機械を導入することで生産量をカバー

そこで実行されたのが現在進行中のプロジェクトの前身の事業である「農業担い手育成プロジェクト」です。これもまた政府が推進する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の交付金を得た事業で平成28年から30年にかけて行われました。

農業担い手育成プロジェクト

細川さんに伺うと、「人口減少への対策と、農作業の担い手をどう確保するかをいろいろ考えました。中心となっているのは『農業担い手育成プロジェクト協議会』。小清水町も構成員となっていて、事務局は農協にあります。まずは小清水町のファンになってもらおうと始めたのが農業に触れてもらう取り組みです。

その後、『農福』という考え方を取り入れて、障がい者の雇用を農業を使ってできるだろうかといったことを実証したりするようになりました。また、小清水町には濤沸湖(とうふつこ)といって渡り鳥がたくさん来る湿地があるんです。バードウォッチングの聖地ともいわれていて、ここもまた起爆剤にできるのでは? ということで、観光と福祉を加えて新しいプロジェクトを計画したのです」と、新たな取り組みに至るまでのいきさつを話してくださいました。

観光や福祉など新たな取り組みを加えて定住する町へ

濤沸湖は、ラムサール条約において指定登録されています。これは、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約で、世界的な評価を受けている証でもあります。海外から訪れる人もいて、観光地としてのポテンシャルは十分です。

水鳥を狙うオオワシ
ラムサール条約において指定登録されている濤沸湖

実際、観光に力を入れることで交流人口も増え、その結果、2018年には道の駅の隣接地にツーリストセンターを設置。アウトドア用品の専門ブランド「モンベル」とも連携協定し、ツーリストセンター内に直営ショップもオープンしています。このような設備が整うことでさらに利用者が増加しました。

小清水ツーリストセンター/北海道小清水町

こうした積み重ねを経て、2019年4月に始動したのが「農+観+福で紡ぐ“稼ぐ力”向上プロジェクト」です。

小清水町は、農業が基幹産業ながら、亜寒帯の気候によって農作業ができるのは実質半年。これでは新しく農業の担い手として小清水町に来てくれたとしても十分な収入は確保できません。定住してもらうためには、年間を通しての仕事が必要です。観光との二本柱で仕事を考えれば、冬のアクテビティにまつわるガイドなどの仕事も可能になります。

また、「農+福」の二本柱の取り組みでは、障がい者に限らず、社会に馴染めない方や生活に困窮している方々が一般就労を考えた際に、仕事のマッチングができる機会を創出することを目指す新しいプランにも着手することになっています。

とはいえ、2019年度はまだプロジェクトに取り組み始めたばかり。そのため、「まだまだ手探りのことが多い状況です」と細川さんは言います。「でも、観光を通して小清水町のファンである交流人口は増えているので、今度は農業でそうした人たちを作れないかと考えています。農業体験ツアーなどはすでに行なっているので、さらに観光事業とも連携してファンを増やす。その結果、定住につながっていく。そこを目指せればと思っています」と目標を語ってくれました。

町の人たちの反応については、「農作物の支援員が来たことは農家の方たちにとっては、うれしいことだと思います。ただ、観光ゾーンは中心市街地から少しはずれているので、そちらに人を呼び込む課題が残っています。町の中にも活気を作っていきたいですね」と、手応えを感じつつ、まだまだ課題を感じているようです。

自然豊かな小清水町

小清水町は、町にもともとあった自然や産業を活用して、新たな活気を作りつつ、雄大な自然に囲まれた暮らしも守っています。豊かな自然に囲まれて暮らしたいと考えるならこうした町を選んでみるのもよいかもしれません。

執筆者:小西 尚美

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