【後編】便利な生活が生み出した「現代病」トラブルシューティング

都市化、産業化が進み、生活が便利になった一方で、現代ならではの疾病“現代病”に悩まされている人がいます。長時間のパソコンやスマートフォン、ゲームなどが原因となる目の疾患や、アレルギーが原因の皮膚疾患など様々な現代病を予防するためにはどのような方法があるのでしょうか。毎日の生活の中に潜む“現代病”の原因や兆候、症状、実際に該当する病気と診断された場合にはどのような治療方法があるのかを専門医に聞きました。加えて、日々の暮らしの中でできる予防策、改善策などもあわせて紹介します。

後編はメンタルや呼吸に関わる現代病を解説します。

顔周りや皮膚に関する「現代病」を解説している【前編】はこちらをご覧ください。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは病名のとおり、睡眠時の呼吸が止まる、浅くなる状態を指します。10秒以上の気流停止(無呼吸)が一晩(7時間)に30回以上、または1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸といわれています。睡眠中に呼吸が止まる原因は大きく分けて2つあり、空気の通り道の上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまう閉塞性睡眠時無呼吸と、呼吸中枢の異常による中枢性睡眠時無呼吸があります。中枢性睡眠時無呼吸は脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常から起こるもので、睡眠時無呼吸症候群の中でも数%程度といわれています。そのため、ほとんどの場合が閉塞性睡眠時無呼吸のようです。

心地よい睡眠のために

・自覚症状や兆候とは?

就寝時にトイレに何度も起きることがありませんか。実は尿意で目が覚めるわけではなく、無呼吸が原因で息苦しくなり目が覚めてしまうケースがあります。また日中に眠気やだるさ、頭痛などを感じることもあります。

・閉塞性・中枢性それぞれの原因とは?

1. 閉塞性睡眠時無呼吸の原因
上気道に空気が通るスペースがなくなったことにより呼吸が止まってしまうケースです。肥満により首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大、舌根、口蓋垂、軟口蓋などによる喉・上気道の狭窄が挙げられます。ここ数年で10kg以上太ったというような場合は要注意です。

2. 中枢性睡眠時無呼吸の原因
脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常に陥るメカニズムは様々ですが、心臓の機能が低下した方の場合、中枢型の無呼吸が見られる場合があります。

・どのような治療方法がある?

問診により睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると医師が判断した場合には、自宅での簡易検査を行うことからスタートします。自宅でも取り扱い可能な検査機器を使い、寝ている間に行う検査です。手の指や鼻の下にセンサーをつけて、いびきや呼吸の状態から睡眠時無呼吸症候群の可能性を検査します。重症度によっては簡易検査の結果を受けてすぐに治療へと進むこともありますが、より詳細な精密検査が必要となる場合があります。具体的な治療としては以下のようなものがあります。

自宅で取り扱える簡易検査キット

1. CPAP治療
特殊なマスクのような器具を装着し、寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させておく治療方法です。
2.マウスピース
CPAP治療が難しい場合マウスピースを使った治療が行われます。しかし必ずしも全ての症例に効果的な治療方法というわけではありません。重症の方の場合には治療効果が十分得られないという報告もあります。重症度を把握し、主治医とよく相談した上で治療を始めることが重要です。
2. ダイエット
肥満が原因の場合はダイエットが必要になりますが、無理なダイエットは体への負担が大きく、リバウンドもしやすい傾向にあるため、無理のない範囲で根気よく適正体重に減量できるようなダイエットが必要です。

・日頃から予防のために注意する点は?

多くの疾患の原因の一つであるストレスを予防するため、規則正しい生活や気分転換などを行うようにします。また生活習慣を見直し暴飲暴食を避け、適度な運動を行うなど肥満防止に努めることも大切です。睡眠時無呼吸症候群は時として大きな事故を引き起こす場合もあるため、思い当たるふしがあれば早めに専門医を受診するようにしましょう。

ストレス

現代社会においてストレスを受けずに生活することは困難といえるでしょう。しかしながら自分の中でストレスが溜まってきた時のサインを自覚し、ストレスを発散することで上手にストレス社会と付き合っていくことができます。

・一般的に、“ストレスを感じている”とはどのような状態のこと?

実は“ストレス”とは医学用語ではなく、何かしらの力を加えたことにより物体に歪みなどが生じている状態をいいますが、多くの人が口にする “ストレス”は、外部から何らかの刺激を受けた際に、精神的に負担を感じる、緊張するなど心理的な状況のことを指します。

・ストレスの原因とは?

ストレスを感じる原因としては以下のようなものが挙げられます。
1. 環境的原因…天気・騒音など
2. 身体的原因…痛み・不眠など
3. 心理的原因…不安・悩みなど
4. 社会的原因…多忙・人間関係など

・ストレスをためないために効果的な方法はありますか?

社会生活においてストレスを全く感じずに生きていくことは不可能でしょう。しかし、“ストレスがたまってきたな”と感じるサインを自覚していれば、適度に気分転換などを行うことができ、ストレスを溜めこまずにすみます。サインとしては、イライラすることが増えた、食欲がない(なくなる)、月経不順、便秘などが挙げられます。気分転換として効果的なのは友人や家族と愚痴を言い合い、話を聞いてもらうことです。解決やアドバイスを求めず、お互いに言いっぱなし、聞きっぱなしのままでかまいません。聞いてもらうだけでずいぶんとスッキリするものです。

過呼吸症候群

ニュース番組などでも取り上げられることがある過呼吸症候群ですが、実際にはどのようなことが原因で起こるのでしょうか。

・過呼吸症候群になるとどのような症状になりますか?

何らかの原因で実際に呼吸ができている状態にも関わらす、できていないような錯覚にとらわれて、息を何回も激しく吸ったり吐いたりする状態になると、血液中の二酸化炭素が少ない状態になり、呼吸をつかさどる神経(呼吸中枢)により呼吸が抑制され、息苦しさ(呼吸困難)を感じます。血液がアルカリ性になることが原因で、血管の収縮が起き、手足のしびれや筋肉のけいれん、収縮も起きます。

・原因として考えられることは?

過呼吸症候群と聞くとすぐにストレスやパニック障害などが原因と考えられますが、呼吸器の疾患、脳の腫瘍が原因である場合もあります。まずはかかりつけ医に相談し、身体的な病気の所見がない場合は心療内科など専門医を受診するようにしましょう。

・ストレスが原因の過呼吸性症候群の対処法は?

過呼吸になった場合、意識的に呼吸をゆっくり行いながら呼吸を整えます。周囲の人からの「ゆっくり呼吸して」といった声かけも効果的です。ストレスが原因の場合にはリフレッシュしたり、友人知人に悩みを相談するなどして心理的なストレスを軽減するようにしましょう。

パニック障害

著名人が発症を告白したことなどでも注目を集めているパニック症候群。決して珍しい病気ではなく、一生の間にパニック障害になる人は100人に1~2人といわれています。

パニック障害は100人に1~2人と決して珍しくない病気です

・パニック障害とは?

命の危険がないのに、命が脅かされているかのような不安や恐怖を感じ、パニック状態でみられるような動悸、めまい、冷や汗、窒息感など体の症状が起きることをいいます。死んでしまうのではないかと思うほど強い不安があり、自分ではコントロールできないと感じます。再び発作が起きたら…と不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになり外出が困難になってしまうことがあります。

・パニック障害の原因は?

パニック障害の発症の原因については、未だに明確に解明されていないのが現状です。何らかの脳神経の異常ともいわれていますが、ストレスの受け方、本来持っている体の機能や先天的な遺伝要因、社会的要素などが複雑に絡み合っていると考えられています。統計学的には20~30代の女性に多くみられるという報告もあります。

・どのような治療方法がありますか?

1. 環境調整
ストレスの原因となる環境から離れる、仕事が原因なら休む、仕事の量を減らす。
2. 投薬
脳神経に何らかの問題がありセロトニンという物質のコントロールができなくなっていることが原因と考えられるため、一般的にSSRIをはじめとする抗うつ薬などが用いられます。
3. 精神療法アプローチ
心理教育や継続的なパニック症状の観察、不安を抑える技術の習得、など患者さんの状態に合わせ、考え方の修正などを行っていきます。
以上の治療方法を患者さんの状態によって組み合わせながらサポートしていきます。

まとめ

現代病と呼ばれる疾病の中には、放置しておくと重大な疾患につながることもあります。しかし、普段の生活をほんの少し見直すだけで症状が緩和されるものも多いようです。「もしかしたら?」と感じる症状があれば、早めの受診、対策をとることがおすすめです。

<取材協力>
●睡眠時無呼吸症候群
川崎医科大学 総合医療センター
睡眠時無呼吸症候群専門外来
内科部長 友田 恒一先生
●ストレス&過呼吸症候群
川崎医科大学 総合医療センター
心療科
医長 和迩 健太先生

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