住宅に関する記事に携わって20数年。時代の変化とともに、住まいに求められるものも住まいの探し方も大きく変わり続けています。この連載では、住まいに関する調査やデータ、ニュースを読み解きながら、今の住まいのトレンドや住まい探しのヒントを見出していきたいと考えています。

さて、第2回は、2019年11月19日に株式会社リクルート住まいカンパニーより発表された「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」について、「SUUMO注文住宅」編集長 中谷明日香氏にご協力いただきながら、読み解いていきます。

「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」
株式会社リクルート住まいカンパニー(2019年11月19日プレスリリースより)
https://www.recruit-sumai.co.jp/press/2019/11/2019.html
取材協力:株式会社リクルート住まいカンパニー
経営企画室 編集部 部長「SUUMO注文住宅」編集長 中谷明日香氏

最も検討されている住まいのカタチ「注文住宅」

購入できる住まいの種類には、注文住宅、新築分譲マンション、新築一戸建て、中古マンション、中古一戸建てがあります。2019年7月16日に株式会社リクルート住まいカンパニーより発表された「『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)」を見ると、注文住宅検討者は2014年から上昇し続けており、2018年度では、住まい購入を検討する人の実に65.8%が注文住宅を検討。2位の新築分譲マンション38.8%、3位の新築分譲一戸建て37.1%を大きく上回っており、その人気が一層高まっていることがわかります(グラフ1参照)。

また、同調査では、注文住宅を含む「一戸建て派」が69.3%で、2012年の調査開始以来最高となり、「マンション派」は21.4%で過去最低となった点も注目されます。年代別に見ると、20代で「一戸建て派」が83.0%、「マンション派」が10.5%、30代で「一戸建て派」が72.7%、「マンション派」が20.7%となっており、若い世代ほど「一戸建て派」が多いことも興味深い点です。

グラフ1「検討種別の割合」/出典:『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)株式会社リクルート住まいカンパニー(2019年7月16日プレスリリースより)

※住宅着工統計(国土交通省)では注文建築は横ばい、建売住宅は増加の傾向だが、検討時点では注文建築希望が高い。
https://www.recruit-sumai.co.jp/press/2019/07/2018.html

パワーカップルに見られる家づくりのきっかけやタイミングの変化に注目

なぜ、「注文住宅」検討者が増えているのか、なぜ、若い世代を中心に注文住宅を含む「一戸建て派」が増えているのか、その一因として、近年のマンション価格の上昇があるのは、確かでしょう。

一方で、「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」が抽出したパワーカップルのデータを読み解いていくと、待機児童問題やマネープランへの意識の高まり、ライフスタイルの多様化など、それ以外の要因も複合的に絡んで、「注文住宅」検討者の増加、若い世代の「一戸建て」支持につながっていると考えた方がより実態に近いと感じました。

同調査では、「パワーカップル」を「既婚で夫婦とも一定の年収があり、かつ世帯年収も高い世帯」とし、「1.世帯主および配偶者の年収がいずれも400万円以上、2.世帯年収が1000万円以上」と定義しています。比較対象とした「パワーカップル以外」は、既婚者かつ世帯主・配偶者の年収に関する回答が得られた人のうち、「パワーカップル」を除いた世帯(いずれかが働いていない、年収がゼロの世帯も含む)です。

「ここ数年、注文住宅を建てた30代共働き世帯の取材を通じて、家づくりのきっかけやタイミングが大きく変わってきたと感じていました。その変化を定量化するために、今回は、パワーカップルに注目して調査しました」(中谷氏)

ここからは、調査結果を追いながら、その変化について考察していきたいと思います。

パワーカップルの家づくり検討のタイミングは「結婚」

ここで一旦、注文住宅検討者全体の「家づくりを考えたきっかけ」というデータを見てみます。2018年の調査では、上位から「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」「子どもが誕生した」「子どもが成長した」「家が手狭になった」「結婚」という順位でしたが、2019年は「結婚」が順位を上げ、3位になっています。

2016年から比較すると、6.2ポイント上昇しており、「結婚」を機に家づくりを考える人が増えていることがわかります(グラフ2参照)。この傾向はパワーカップルではさらに顕著で、「パワーカップルの特徴(検討のタイミング)」を見ると、建築したご夫婦の32.1%が「結婚」を機に検討を開始、一方「出産」で検討開始したご夫婦はわずか7.2%です。パワーカップル以外の既婚者と比べると、「結婚」が15.0ポイント高く、「出産」が5.8ポイント低くなっています(グラフ3参照)。

「かつては小学校入学に間に合うように家を建てるのが定説でしたが、パワーカップルでは、出産でもなく、結婚が検討のタイミングになっています。ふたりだけで時間のあるうちにと、家探しの効率性を理由とされる方も多いのですが、より切実な背景として、ここ数年、ニュースでも報じられている待機児童の問題があります。出産して約1年後の職場復帰の時には保育園に預けなければならない。出産を機に検討し始めるのでは、間に合いません。結婚のタイミングで、保育園入園も見据え住む場所を固めたいと考えるパワーカップルが増えています」(中谷氏)

「また、まずは賃貸に住んで、小学校の頃に戸建てといった、いわゆる“住宅すごろく”が崩れてきていると感じます。例えば、この数年で、『リノベーション』というワードの認知度があがっています。中古マンションを買って、リフォームするという選択肢は、10年前の新婚の方にはなかったと思うのですが、今は、それがおしゃれとされていたりするように、暮らし方の選択肢が増えています。SNSなどを通じて、それを知る機会も増えました。結婚と同時に、典型的な“住宅すごろく”にとらわれず、フラットに自分たちの暮らし方を考える人が多くなっている印象です」(中谷氏)

グラフ2「家づくりを考えたきっかけ〈検討者(全国・新規建築)〉」 ※1~10位を抜粋
グラフ3「パワーカップルの特徴(検討・入居のタイミング)〈建築者(全国)〉」 ※検討のタイミングを抜粋

憧れより現実的なコスト面から注文住宅を選ぶパワーカップル

中谷氏が感じているもうひとつの大きな変化は、「憧れ」ではなく、「ライフマネー」というより現実的な観点で注文住宅を選ぶ人が増えていることだそうです。

「『家づくりを考えたきっかけ』のデータで、『いつかは一戸建てに住みたいと思っていた』という回答は、今もトップですが(グラフ2参照)、10年前はこの回答がもっと多く、憧れから家を建てる方が主流でした。一方、最近の取材では、注文住宅のコスト面でのメリットを挙げる方が増えています。なかには、ローンの支払いに管理費や修繕積立金、駐車場代まで含めたコスト面で、マンションと注文住宅をシビアに比較して、注文住宅を選んだ方もいらっしゃるなど、パワーカップルのマネープランへの感度の高さを感じます」(中谷氏)

「パワーカップルの特徴(検討のきっかけ)」や「パワーカップルの特徴(注文住宅を選んだ決め手)」の調査結果は、中谷氏が感じていた変化を裏づける形となっています。

「パワーカップルの特徴(検討のきっかけ)」では、パワーカップル以外の既婚者のきっかけのトップが「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」(40.3%)であるのに対し、12.2ポイントも低い結果となっています。パワーカップルのきっかけトップは「結婚」で、それ以外の既婚者と比べ15.5ポイント、「希望の土地が手に入った」も8.8ポイント高くなっています(グラフ4参照)。漠然とした憧れではなく、「結婚」を機に、自分たちのマネープランを立て、それをかなえる土地の情報収集にも積極的なパワーカップルの傾向がうかがえます。

グラフ4「パワーカップルの特徴(検討のきっかけ)〈建築者(全国)〉」 ※20位までを抜粋

ライフスタイルに合わせたマネープランを具体的に考えるパワーカップル

パワーカップルのマネープランがさらに綿密であることをうかがわせるのが、「パワーカップルの特徴(注文住宅を選んだ決め手)」です。

パワーカップル・それ以外の既婚者とも「設備や間取りが好きなように選べるから」が一番の決め手となっていますが、それ以外の既婚者の74.8%がこれを決め手としたのに対し、パワーカップルは59.0%で、大きく差があります。「戸建てでの生活に憧れていたから」も8.6ポイント低く、反対に「車の保有・管理」で11.7ポイント、「ペットと暮らすこと」で11.3ポイント、「土地そのものの資産価値」で8.7ポイント高い結果となっています(グラフ5参照)。

このデータから考えられるのは、パワーカップルは、車やペットなど、自分たちが叶えたいライフスタイルが明確にあり、それに関するコスト面まで考慮し、さらに資産価値という観点からも検討した上で、注文住宅を選んでいることです。

「情報リテラシーの高いパワーカップルは、自分たちにとって何が大切なのかが明確で、自分たちの選択にも自信があります。フラットに自分たちが何にお金を使っていくのかを考え、具体的なお金の話にまで落とし込んでいると感じます。住宅ローンについても、返そうと思えば返せるけれど、今は金利が低いので、借りておいて、その分、暮らしの豊かさを優先する人も増えていると思います」(中谷氏)

グラフ5「パワーカップルの特徴(注文住宅を選んだ決め手)〈建築者(全国・注文住宅以外の住宅タイプを検討した者)〉」

「通勤利便性」と「教育環境」を重視する立地選び

注文住宅建築者(全国)の「土地の有無」の調査結果を見ると、2019年は71.3%が「土地なし」で、この割合は毎年増えています。「パワーカップルの特徴(注文住宅を選んだ決め手)」でも、「自分の好きな場所に建てることができるから」が第2位の決め手となっており、立地を含めて自分たちの望む暮らしをかなえるために注文住宅を選んでいることがわかります。パワーカップルが何を重視して、土地を選んだのかを「パワーカップルの特徴(建築エリアの重視点)」から見てみましょう。

パワーカップルがそれ以外の既婚者と比べ重視するポイントは大きく2つのようです。

まずは「通勤利便性」。パワーカップル以外の既婚者と比べ、「最寄駅からの距離が近い(自宅から10分圏内)」を重視する傾向が強く(+13.3ポイント)、「職場との距離」も重視(+4.4ポイント)しています。

2つ目に特徴として挙げられるのが、「教育環境」への関心の高さです。「保育園に入りやすい自治体である」について18.7ポイント高いのは当然のことながら、「教育環境が充実している」(+7.1ポイント)、「子育て補助・医療補助等支援が充実している自治体である」(+6.0ポイント)についても重視していることがわかります(グラフ6参照)。

「パワーカップルには、教育への意識が高い方が多い印象です。自分が恵まれた教育を受けてきた人は、子どもにそれと同等の教育を受けさせたいと考えています。会社で活躍している人たちの間にいて、『社会で活躍できる人になるためにはどういう環境がいいのか考えています』という声も耳にします」(中谷氏)

 

グラフ6「パワーカップルの特徴(建築エリアの重視点)〈新規土地取得した注文住宅建築者(全国)〉」

「SUUMO注文住宅」編集長が注目する注文住宅の今後の動向

最後に、中谷氏が注目する、今後の注文住宅の動向についてお聞きしました。

「今回の調査にある『防災に関する意識と対策』でも、建築にあたって、防災を『かなり意識していた』『意識していた』と回答する人が建築者(全国)70.1%、検討者(全国)で83.4%となっているように、近年、災害が頻発し、家づくりにおける防災の意識が高まっています。ハウスメーカーでも、災害対策に力を入れており、例えば、電気自動車と連結して、停電時もしばらくは自給自足で暮らせる住宅など、様々な性能を備えた注文住宅が出てきています。台風19号が甚大な被害をもたらしたこともあり、防災の意識は一層高まっています。住まいを選ぶ際の指標として、さらに災害対策が注目され、そこを強みとする注文住宅が増えてくるだろうと思います」(中谷氏)

「パワーカップルが利便性を追求して、マンション一択という時代から、コスト的に見て注文住宅を選択する時代へと変化する中、注文住宅は今後ますます多様化していくと思います。ゼロから100までフル設計できるのが注文住宅の当たり前でしたが、時間のないパワーカップルに応えて、ここ数年、メーカーやビルダーおすすめのプランから選べる企画型の注文住宅が商品化されています。フル設計より安いので、コスト重視の方で企画型を選ぶ人も増えていくと思います。また、SNSで、住宅の“ここだけはこだわった”情報が共有され、話題になっているなど、全体にお金をかけなくても、こだわりたいことをかなえられるのが、注文住宅の魅力として認知されつつあります。全体は企画型で、一ヵ所だけこだわるという選択をする人も増えているようです」(中谷氏)

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