人口や世帯数の減少などによって新設住宅着工戸数がジワジワと減少しており、今後もそのトレンドは変わらないでしょう。住宅メーカーにとって市場の縮小は死活問題ですが、それを乗り切るため、1棟単価の引き上げを進めています。受注戸数が1割減っても、価格を2割引き上げることができれば、売上高は維持できるという計算です。これから一戸建ての建設、取得を考えている人には頭の痛い問題になりそうです。

1棟単価の引き上げで売上高を維持したい大手住宅メーカー

大手住宅メーカーの決算資料をみると、このところ1棟単価の引き上げが進んでいることが明確です。それによって販売戸数の減少を補って、何とか売上高を維持していこうとする戦略です。
図表1は主要メーカー4社の最近の決算期ごとの1棟単価を調べてグラフ化したものです。この4社のなかで最も1棟単価が高いのは積水ハウスで、2019年度第2四半期決算の価格は3,932万円でした。2016年度通期の決算では3,729万円でしたから、2年半の間に5.4%のアップで、4,000万円台が目前に迫っています。
他社も多少の違いはあっても、1棟単価が着実にアップしているのは変わりません。いずれも1棟当たり3,000万円を超えています。

図表1 大手住宅メーカーの1棟単価の推移(単位:万円)

図表1 大手住宅メーカーの1棟単価の推移(単位:万円
(資料:各社決算資料より作成)

1棟単価が2,000万円以下の住宅メーカーもある

図表2にあるように、このところ建築費が右肩上がりでアップしていますから、この程度のアップなら仕方がないのかという気もしますが、既存の大手に対抗する新興や中堅のメーカーのなかには、1棟単価がそんなに上がっていないところもあるのです。
たとえば、タマホームは年間引き渡し戸数が1万戸近くに達して、戸数レベルでは大手と伍していますが、その1棟単価は2017年度、2018年度と1,700万円台の前半でした。2019年度の第1四半期の決算では1,757万円ですが、それでも大手住宅メーカーの半分程度の価格です。
また、分譲一戸建て、いわゆる建売住宅の多い飯田産業グループは、グループ6社の年間供給数が2万戸を超えています。戸数では大手住宅メーカーを上回っていますが、その価格帯はやはり大手の半分程度です。
建売住宅中心なので、建物だけの価格は明確ではないのですが、2019年度第2四半期決算のグループ6社の建売住宅の平均価格は2,710万円です。土地・建物を合わせた価格ですから、土地代金を除けば、建物価格はタマホーム同様に2,000万円を切るでしょう。

図表2 建設工事費デフレーターの推移(2011年度=100)

図表2 建設工事費デフレーターの推移(2011年度=100)
(資料:国土交通省ホームページより)

大手に2倍近い差を埋めるだけのメリットがあるのか

もちろん、飯田産業グループは建売住宅中心で、タマホームも注文住宅中心とはいえ、比較的パターンが決まった規格型の住宅が多く、フリー設計の注文住宅中心の大手の製品と単純な比較はできません。
それでも、これだけの価格の差があれば、ほんとうに価格差に見合ったメリットがあるのかどうかが気になるところです。
それに対して、価格が高くなっている理由として大手住宅メーカーが異口同音に挙げるのが、「高付加価値化」です。基本性能、仕様・設備からアフターサービス、そしてデザインまで、中堅以下にはない住まいを提供しているということです。ハッキリとはいいませんが、「わが家は大手住宅メーカーの住まい」とユーザーのプライドをくすぐる面も大きいのではないでしょうか。そうした信頼性、ブランドイメージの高さなども価格に含まれているのかもしれません。

積水ハウスの注文住宅の8割近くはZEHに

では、その高付加価値化の具体的な内容を、1棟単価が4,000万円目前に迫っている積水ハウスのケースでみてみましょう。
積水ハウスでは、早くからゼロエネルギーハウス(ZEH)の受注に力を入れてきました。同社では、「グリーンファースト ゼロ」と呼んでいますが、建物の高断熱・高気密化を進めて、太陽光発電設備などを搭載した住まいになります。その割合(B登録)が、図表3にあるように、2013年度には49%だったのが、2018年度には79%と、8割近くに達しています。積雪が多く、太陽光発電のメリットを享受しにくい豪雪地帯などがあることも考慮すれば、比較的温暖なエリアでは、ZEHがほとんど標準化しているといっていいでしょう。
さらに、地震の多いわが国ではその対策も重要ですが、積水ハウスでは独自開発の制震装置「シーカス」の標準化を進めており、その設置率は2018年度で96%まで達しています。この96%が3年続いており、ほぼ限界値といっていいのではないでしょうか。
そのほか、空気環境配慮仕様の「エアキス」の採用率も9割を超えています。

図表3 積水ハウスの高付加価値設備設置比率の推移(単位:%)

図表3 積水ハウスの高付加価値設備設置比率の推移(単位:%)
(資料:積水ハウス決算資料より)

高くても安全、安心に生活でき、住む人の健康にも役立つ

たしかに価格は高いのですが、その分、地震などの災害から守られ、安全・安心に生活でき、健康で快適に過ごせる住宅であることを強調しています。
たとえば、高断熱・高気密化によって、住宅内をほぼ一定の温度に保てるので、冬のヒートショック、夏の室内での熱中症のリスクが格段に低下します。高付加価値の住宅は、住む人の健康にもいい住まいになるとしています。
しかも、イニシャルコストが若干高くなっても、ランニングコストが低下するのが大きなメリットです。
図表4は、太陽光発電設備設置住宅の建設実績世界一としてギネス認定を受けている積水化学工業(セキスイハイム)のデータになりますが、ZEH仕様の住宅は、光熱費が格段に安くなるのです。2017年の実績では、年間の光熱費収支が、何とプラス17万円になっています。

図表4 セキスイハイム ZEHの光熱費収支

図表4 セキスイハイムのZEHの光熱費収支
(資料:積水化学工業ホームページより)

メンテナンスや光熱費などのランニングコストも安くなる

これからは電力会社による余剰電力の買取価格が安くなったり、なくなったりする可能性もあって、今後はこれほどのメリットではなくなるかもしれませんが、それでもランニングコストを大幅に削減できます。太陽光発電で日中の電力を賄い、余った電力は蓄電しておき、夜間に使用すれば、光熱費負担をゼロにできます。それまでの住宅で年間20万円支出していたとすれば、10年間で200万円の実質的なプラスです。太陽光発電設備の設置費用は10年、15年程度で回収できる計算です。

さらに、大手では30年の定期点検無料が当たり前で、最近はヘーベルハウスの旭化成のように、60年の無料点検を実施するところもあります。大手の住宅であれば、メンテナンスの手間ヒマがかからず、費用負担も削減できる可能性が高いのかもしれません。

こうした総合力をどう評価すればいいのでしょうか。それらによって低価格路線の住宅メーカーの2倍の値段になっても、十分に価値があると考えるのかどうか――それは建てる人、買う人の価値観にもよってくるのかもしれません。

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