【データでわかる】管理職は「忘年会」の考え方を変えたほうがいい理由

12月も中旬に差し掛かると、年末まで平日は毎日忘年会でお酒を飲み続けるという社会人は多いでしょう。職場や取引先に加え、友人との忘年会があり、場合によっては日程の都合で忘年会をハシゴする人までいるかもしれません。年末の恒例行事として、心地よい疲労感を覚えながら飲み会ラッシュをこなしていく方もいるかもしれませんが、一方で実はその風習が苦手な方がいるのも事実です。今回は「忘年会」をデータで分析していきます。何事もデータを確認する習慣をつけて金融リテラシーを向上させましょう。

若者の「酒離れ」は本当?

最近は若者の「酒離れ」が進んでいるということを聞きます。しかし、筆者の周りには毎日お酒を飲む若者もいるため、実際にどこまで酒離れが進んでいるのかを理解していません。もしかすると、メディアではそう言われているけど、実際は違うのかもしれません。

そこで、経済産業省が発表している鉱工業生産指数のうち、業種別出荷指数を見ていきます。下図は指数の中でも酒類とその関連業種の出荷推移を表したものです。この10年間で酒類だけは出荷が右肩下がりとなっていることが分かります。この図だけを見ると、日本全体として酒離れが進んでいるかもしれないとは思いますが、「若者」の酒離れが進んでいるかどうかは分かりません。

各品目の出荷推移
(出所)経済産業省『鉱工業生産指数』のデータを基に株式会社マネネが作成
※業種別出荷指数

次に、総務省統計局が発表している『家計調査』を見てみましょう。年齢階級別に見てみると、この10年間で全世代の酒類への支出は減少していることが分かり、前出の鉱工業生産指数のデータと整合性が取れていることが分かります。特に、29歳未満の若年層での支出額の減少が非常に大きいことが見てとれます。このデータから、日本人は全体的にお酒にかけるお金は減っているものの、特に若年層は顕著であり、若者の酒離れが進んでいるというのは事実として捉えて問題なさそうですね。

酒類への年間支出額
(出所)総務省統計局『家計調査(2008年、2018年)』のデータを基に株式会社マネネが作成※二人以上の世帯

若い世代の忘年会への意識は?

それでは、若者の酒離れが事実ということが判明したので、今度は本題の忘年会についてデータを見てみましょう。シチズン時計が10月に実施して11月に発表した“令和初”の「忘年会&年末行事調査」という意識調査の内容を見てみると、非常に興味深い結果が出ています。

まず、ビジネス関連の忘年会は過半数(50.3%)が今年は1回だけ参加すると思うと回答しています。そもそも行わないと思うという回答も全体の31.0%となっており、全体の8割以上の人がビジネス関連の忘年会には非常に消極的な考えを持っています。プライベートの忘年会では行わない予定という回答が全体の42.0%でトップになっています。仲間内ですら、年の瀬を理由に集まるということを考えていないようです。

ビジネス関連の忘年会における最適な時間として、回答結果の上位3位に注目すると、1位「2時間」(52.3%)、2位「1時間半」(17.5%)、3位「30分以内」(14.8%)と続いており、「2時間以内」に9割以上(90.6%)の回答が集中しています。また、ビジネス関連の忘年会で帰りを気にする時刻を聞いたところ、「20時より前」が26.3%でトップとなっています。約25%の人はかなり早い時刻から帰りを気にするようです。一方で、プライベートの忘年会であれば、23.8%の人が23時頃に帰りを気にすると答えており、仲間内での忘年会であれば、終電頃までは楽しく飲んでいるのかもしれません。

忘年会の平均予算はビジネスだと4,102円、プライベートだと4,616円となっており、プライベートのほうが500円ほど高くなっています。以上のことから、ビジネス関連の忘年会についてはモチベーションがあまりないといえるでしょう。

データから分かることと考えるべきこと

「忘年会」というテーマでいくつかの公的な統計データと民間企業の実施したアンケートを見てきましたが、ビジネス関連の忘年会に対しては高いモチベーションを持っている人は多くなく、参加するにしても早めに帰りたい。さらに、年齢が低くなればなるほど、お酒もあまり飲まないということも分かりました。筆者が社会人になった頃(2007年)や、上司たちから聞いていた頃(1980~2000年)の忘年会に比べれば、たしかに近年の忘年会は上品かもしれません。

ここで気を付けなければいけないことは、管理職が自分が若手社員だった頃の感覚で忘年会に参加しないほうがよいということです。いまでこそ、一気飲みの強要などは少なくなってきた印象はありますが、それでも会社の忘年会の愚痴を聞くことはあります。

時代の流れとともに、社員の価値観や感覚にも差が生じてきます。そこの差に気付かずに自分の価値観で他の社員に接してしまうと、思わぬトラブルに発展することもあるため、管理職の人は特に日頃からそのような差を意識するように心がけるのがよいでしょう。

何事もデータを確認することの重要性

「忘年会」や「若者の酒離れ」など、いくつかのテーマについて、データを基に深掘りして分析をしてみました。実は、このような習慣づけが金融リテラシーの向上にもつながります。一見関係がないように思えるかもしれませんが、今回見たデータのほとんどがお金に関わることでしたね。「酒類への支出額」「忘年会にかける平均予算」などです。

私たちの生活において、何をするにしてもお金が関わることがほとんどです。そして、ほとんどの行為に関するお金のデータは深掘りしてみると見つかるものです。10年や20年など時系列でデータを振り返り、いまと比較すると様々な発見もあります。

自分自身でもそうなのですが、お子様がいる人は、日常生活や日常会話の中で何かテーマが出てきたら、それについてデータを基に深掘りしていって、そこで発見したことを子どもにも共有してあげて、それをきっかけに会話を広げるのもよいかもしれませんね。

年末年始、大人は忘年会や新年会もあり、1年の中でもとても忙しい時期でしょう。しかし、「金融教育」という観点からも年末年始は非常に重要な時期です。「クリスマス」にはプレゼントについて子どもと話し合ったり、「正月」にはお年玉をあげて、それを貯めたり、何に使うかについて話し合ったりするにはいい機会です。忙しい時期だとは思いますが、子どもとお金の話をする数少ない機会ですので、これを機に子どもと話し合ってみませんか。

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