【FP解説】火災・地震保険料の増加傾向、私たちはどう工夫できる?

近年、地震や台風、大雨などの自然災害が頻発している関係で、火災保険や地震保険の保険料が上がってきており、今後も上昇が見込まれています。家計への負担が大きくなる中で、少しでも負担を軽減するためには、どんな工夫ができるのでしょうか。

保険金支払アップ=保険料アップ

損害保険や生命保険は、多数の保険契約者が負担する保険料を財源として、誰かに保険事故が発生したときに保険金を支払う相互扶助の仕組みによって成立しています。したがって、保険の収支は、集めた保険料(収入)と支払った保険金(支出)が等しくなることが基本で、このことを「収支相等の原則」といいます。

そのため、近年のように、地震や台風、大雨などの自然災害が頻発し、損害を受ける建物や家財が増えて、支払う保険金の総額が多くなると、保険料率が見直され、一般的には契約者が支払う保険料が上がることになります。

ただし、契約している保険の保険期間中は、保険料が変更されることはありません。保険料率が見直されたのちに、新規に契約するときや更新するときに、見直し後の保険料が適用されます。

今後も保険料値上げが見込まれる

近年の保険料率の改定は、以下のようになっています。

近年の火災保険の参考純率の改定
近年の火災保険の参考純率の改定

2014年7月の改定を受けて、主な損害保険会社各社は、2015年10月から保険料を値上げしました。また、2018年6月の改定を受けて、2019年10月から値上げされています。2019年10月の改定は、2020年中にも保険料に反映される見込みです。なお、火災保険の場合、実際に契約者が負担する保険料の変更幅や変更時期は、損害保険会社によって異なります。

近年の地震保険の基準料率の改定
近年の地震保険の基準料率の改定

地震保険は、損害保険料率算出機構が2015年に基準料率の改定を3段階に分けて実施することとしています。

上記の機構の基準料率の改定が、契約者が負担する地震保険料にそのまま反映されます。また、保険料の変更時期(改定が適用される契約の始期)も、保険会社によって異なることはありません。

家計への負担を抑えるためにできる工夫は?

今後も火災保険や地震保険の保険料の値上げが見込まれる中で、少しでも家計の負担を抑えるためにできることには、次のようなことがあります。

・火災保険は、複数の損害保険会社の見積もりを取って、比較・検討する。

火災保険は損害保険会社によって、保険料の変更幅や変更時期が異なります。経費を抑えて、値上げ幅を抑えているところもあると考えられます。

・火災保険も地震保険も、保険期間を長くして、保険料を一括払いにする。

火災保険は最長10年、地震保険は最長5年の保険契約が可能です。いずれも最長の保険期間で契約し、保険料を一括で支払うことで、トータルの支払額を抑えることができます。

なお、保険料率が見直されても、保険期間中であれば保険料が変わることはありません。

・地域や建物の構造によって、保険料が下がる場合もあることに注意。

今後の保険料は、全国平均でみると上昇傾向ですが、都道府県や建物の構造によっては、値下げされる場合もあります。そのため、自分が住んでいる地域や建物はどうなりそうかを確認することが大切です。値下げされる場合は、契約中の保険を解約し、値下げ後に契約をし直してもよいでしょう。なおその場合は、保険の空白期間を作らない工夫が必要です。

損害保険料率算出機構が、火災保険や地震保険の保険料率を見直したときには、新聞やネットなどで報道されます。その後、ある程度の期間をおいて実際の保険料が見直されるのが一般的です。日々のニュースに触れる中で、保険料に関する報道をチェックする習慣をつけ、どのタイミングで自分の契約を見直すかを検討するようにしましょう。

まとめ

火災保険や地震保険は、それらに加入せずにいて万が一大きな災害に見舞われると、損害額が莫大になり、家計が破綻する事態を招きかねません。近年の自然災害の頻発と損害の大きさを考えると、建物にも家財にも、十分な補償をつけておいたほうがいいでしょう。その上で、できるだけ家計への負担を抑える工夫をするようにしましょう。

参考:損害保険の保険料率は、「損害保険料率算出機構」が算出

火災保険や地震保険等の保険料率の見直し・算出は、損害保険料率算出機構(以下、機構)が、過去の保険のデータをもとに、将来の保険事故を予想して支払額を計算し、今後の保険金の支払いに過不足のないように算出します。

なお、火災保険の保険料率は、保険金に充当する「純保険料率」と、保険会社の経費に充当する「付加保険料率」で構成されており、機構が算出するのは、純保険料率の部分のみで「参考純率」といわれます。各保険会社は、機構が算出する参考純率と、自社が算出する付加保険料率をもとに、自社の火災保険の保険料を決定します。したがって、機構の参考純率が上昇したからといって、損害保険会社各社の保険料が一律にアップするわけではありません。同じ補償内容でも、保険会社によって保険料は異なります。

一方、火災保険に付帯して契約する地震保険の保険料率は、機構が「純保険料率」と「付加保険料率」の両方を「基準料率」として算出しており、損害保険会社各社はこの基準料率をもとにして保険料を決めています。地震保険は、政府と保険会社が共同で運営する公共性の高い保険であるため、補償内容が同じであれば、各社の保険料も同じになります。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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