今年のノーベル化学賞は、旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞しました。吉野氏の受賞は「リチウムイオン電池」の原型の開発に成功したことが評価されたものです。小型で容量の大きいリチウムイオン電池は、今ではスマートフォンやノートパソコンといったIT機器には欠かせないものですが、多くの家庭用蓄電池にも使われています。家庭用蓄電池は太陽光発電と併せて、防災面からも注目されています。

災害で露呈する大規模集中発電の脆さ

長い間、日本では、大手電力会社の火力発電所や原子力発電所で発電した電気を遠距離にまで送電していました。しかし、2011年3月の東日本大震災および福島第一原発事故では、そうした大規模集中発電の脆弱性が明るみになり、2016年4月から電力自由化が進められてきました。電力自由化は電力の小売自由化とともに、再生可能エネルギーに代表される分散型電源の普及を目的としたものです。分散型の電力需給システムは、需要地に近いところで発電・送電する「エネルギーの地産地消」です。

9月9日に関東を襲った台風15号により、千葉県を中心に大規模停電が発生し、工事が難しい一部の山間部などでは停電解消までに1ヵ月以上かかった地域もありました。送電網の復旧に時間がかかったためです。大規模集中発電が自然災害に弱いシステムであることを再び思い知らされました。

高いイメージの家庭用蓄電池

国内家庭用蓄電池の市場規模予測、単位:億円(出所:JMAR)
国内家庭用蓄電池の市場規模予測、単位:億円(出所:JMAR)

太陽光発電を導入する家庭は年々増えていますが、蓄電池がなければ、昼間に発電した電気は自家消費するか電力会社に買い取ってもらうしかありません。蓄電池があれば、昼間に発電した電気を貯めておいて夜間に使うことができます。太陽光パネルだけでは災害・停電対策として充分ではありませんが、蓄電池もあればエネルギーの自給自足が可能となります。

太陽光発電を導入しても家庭用蓄電池が普及してこなかった最大の理由は、価格が高いためです。蓄電池容量は「kWh」で表記し、今はkWh単価で20万円くらいなので、家庭用蓄電池が多い5~7kWhの製品は本体だけで100万円以上もします。その他に設置費用や電気系統の工事費もかかります。もっと容量の小さいものもありますが、非常時に家庭で使うとなると、やはりある程度の容量は必要となります。

自動車用の蓄電池価格は6年で4分の1に

しかし、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「これからどんどん安くなる」と言います。

「安いのも出始めていて、有名なテスラの『Powerwall(パワーウォール)』はkWh単価で半額くらい。それでも印象としてはまだ高い。一方、電気自動車用の蓄電池は既にかなり安くなっていて、日産『リーフe+』の例で言うと、62kWhの蓄電池に対して車体価格が400万円くらいですが、蓄電池だけの価格はkwh単価で1万8000円くらいだと言われています。家庭用の定置型に比べてずいぶん安い。自動車用蓄電池の市場規模は毎年3倍ぐらいずつ伸びていて、過去6年で市場が100倍くらいに広がりました。同時に蓄電池価格は過去6年で4分の1に下がりました。電気自動車の市場拡大が蓄電池価格を引き下げ、それに引っ張られる形で家庭用のものも安くなってきています。家庭用も3年後に半額、その3年後にさらに半額に近くなるように安くなっていくと予測できます」

価格が現在の4分の1にまで下がれば、太陽光発電に加えて蓄電池を導入しようという家庭が一気に増えるかもしれません。

検討時は関連制度の情報収集を

家庭用蓄電システム:太陽光パネルで発電した電力を蓄電します/PIXTA

家庭用蓄電池も充放電の回数に限りがあり、充放電回数の寿命を超えると、蓄電容量が徐々に減っていきます。経済産業省の蓄電池戦略プロジェクトチームが以前に発表した資料によれば、リチウムイオン電池の寿命は10年となっています。ただ、メーカーによって保証期間や充放電サイクルの回数や残存容量が違うので、できるだけ長く使える製品を選びましょう。

太陽光発電もそうですが、蓄電池に関しても国や地方自治体で補助金を交付しています。国(一般社団法人環境共創イニシアチブ)から交付されている補助金としては「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」がありますが、今年度は11月29日で受付終了となります。地方自治体に関しては、蓄電池の容量やタイプなど条件によって補助金額も変わってくるので注意が必要です。

太陽光発電で発電した電気を電気自動車に充電したり電気自動車の電気を家庭内で使用するなど、電気自動車を蓄電池として使えるようにするシステムをV2H「Vehicle to Home(ヴィークル・トゥ・ホーム)」と言いますが、V2Hへの補助金もあります。一般社団法人次世代自動車振興センターから交付されていますが、今年度は9月で申請締め切りとなりました。

家庭用蓄電池導入や電気自動車購入を検討するなら、来年度の補助金申請を目指して、今から情報収集してはいかがでしょうか。

(最終更新日:2019.11.14)

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