増税後に「住宅ローン控除」が活用できる2つの条件と注意点

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2019年10月からはじまった消費税10%への増税を住宅ローンの目線で解説していただきます。

こんにちは、ブロガーの千日太郎です。住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンの年末残高の1%がその年の所得税等から還付される減税制度です。従来は最長10年だったのですが2019年10月の消費増税後からは最長13年に延長されています。

今日は、この3年延長の住宅ローン控除を受けるための条件と注意点について詳しく解説します。

3年延長のポイントは「特別特定取得」と「居住の開始日」

まず2019年10月以降に家を買った人が全て13年の住宅ローン控除を受けられるわけではありません。特に初心者がミスしがちな2つのポイントについて解説します。

1.建物代金に10%の消費税が課税される「特別特定取得」であること

2.2020年12月31日までに「居住の用に供する」こと

こうしてみると見慣れない表現ではありますが、税金専門家でなくても理解可能な言葉で解説します。また、ちゃんと条件を満たしていても、それを証明するための手続きを怠ると住宅ローン控除の3年延長が認められないことがありますので注意してくださいね。

3年延長となる「特別特定取得」とは?

3年延長となる「特別特定取得」とは、建物代金に10%の消費税が課税されている住宅の取得をいいます。

消費増税の影響があるのは建物価格だけ!

土地はもともと非課税なので、消費増税の影響はありません。消費税がかかるのは建物代金なのです。注文住宅を建てる場合の建築費用も同じく消費税がかかります。このように建物代金や建築費用に対して10%の消費税が課税される場合には「特別特定取得」となり、住宅ローン控除が3年延長になります。

中古住宅でも不動産会社が販売する物件は10%の消費税

では2019年10月以降に買うマイホームで消費税がかからない場合があるのか? というと、あるのです。典型例は個人が所有する不動産を購入する場合です。一般的には中古住宅が街頭します。私たちが読まなくなった本を古本屋に売る場合や、着なくなった服をフリーマーケットで売る場合には消費税がかかりませんが、それと同じことです。

ただし、中古住宅なら全て消費税が非課税とも限らないので注意が必要です。不動産会社が所有し、商品として販売する中古住宅については、建物部分に消費税が課税されるのです。そのため、「中古住宅だから住宅ローン控除は10年だ」と決めつけてしまうと損をします。所有者が不動産会社などの課税業者なのかそれとも個人なのかをよく確認しておきましょう。

2020年12月31日までに住民票を移していないと認められない!?

住宅ローン控除は「居住」がスタートであり「取得」ではないので注意が必要です。マイホームを購入しても住んでいなければ住宅ローン控除を受けることはできません。例えば家を建てるための土地を住宅ローンで購入しても、家が未完成で住んでいなければ住宅ローン控除を受けることができません。

居住開始の証拠となるのは住民票

今回の消費増税によって住宅ローン控除の期間が13年になるのは2019年10月1日~2020年12月31日に対象の不動産を居住の用に供するという条件があります。1日でも遅れて2021年になると、10年にもどってしまいますのでこれは重要なポイントですね。

いつから住み始めたかを証明する書類は住民票です。2020年12月31日までに引き渡しを受けて引っ越していても、住民票を移すのをウッカリ忘れていて2021年になってしまうと、完全にアウトとはなりませんが、住民票以外で引っ越したことを証明する必要が出てきます。

契約書や鍵の引渡証などは、確かに物件を引き渡した証拠にはなりますが「居住の用に供した」ということの証拠にはなりません。住宅ローン控除ではこの「居住」が条件となっていて、その客観的な証拠資料は住民票なのです。

もちろん住民票以外で証明することも不可能ではないのですが、税務署に相談して、様々な書類を提出する必要が出てきますので、引っ越したら出来るだけすぐに住民票を移すことをおススメします。

引越しの14日前から転出の手続きを行うことができる

また、家の引き渡しを受けた後に、引っ越しの日程がうまく取れず、やむを得ず2021年まで年をまたいでしまうこともあります。いつでも住民票を移すことができるのに、引っ越しできなかったという理由だけで3年の延長分を損してしまうのはもったいないですね。

引っ越し業者は早めに手配をして、引っ越しの予約が取れたなら、前倒しで住民票を移しておくことをおススメします。特に他の市や県をまたいで移動する場合、今住んでいる住所の役所で転出届を出して転出証明書をもらい、それを引っ越し先の役所に持っていって転入届を出す必要があります。

転出届は引っ越し日の14日前から手続きできますので、余裕を持って役所へ行くようにしてくださいね。

(後編につづく)

(最終更新日:2020.11.17)
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