【知ってた?】食品ロス削減に向けたあの手この手の対策とは?

2019年10月1日、「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されたのをご存じでしょうか。この法律については政府の基本方針がまだ検討段階であるため、具体的な項目は未だないものの、10月は食品ロス削減月間、10月30日は「食品ロス削減の日」と制定されました。食料自給率が40%を割り込んでいるにもかかわらず、まだ食べられる食品を大量に廃棄している日本にとって、食品ロス削減は喫緊の課題です。いま国を挙げて取り組んでいる、食品ロス削減に向けたあの手この手の対策を多角的にご紹介します!

10月30日は「食品ロスの削減の日」

今年の食品ロスの削減の日、セブン-イレブン・ジャパンは、『エシカルプロジェクト』の一環として、販売期限が迫った商品にnanacoのボーナスポイントを付与するエリアテストの拡大を発表。これは食品ロス削減が目的で、販売期限の3時間前(四国の場合。北海道は5時間前)から店舗でバーコード付きシールを商品に添付し、購入者は消費税抜き価格に対して5%分のnanacoポイントが付与されるという仕組みです。エリアテストの効果を検証した上で、2020年春には全国拡大を目指すといいます。また、10月30日は、第3回「食品ロス削減全国大会」in徳島をはじめ、日本各地で食品ロス削減に向けたイベントが開催されました。

セブン-イレブン・ジャパンは、『エシカルプロジェクト』の一環として、販売期限が迫った商品にnanacoのボーナスポイントを付与するエリアテストの拡大を発表。

廃棄ロスを生む「3分の1ルール」

食品廃棄の発生の要因のひとつと考えられているのが、「3分の1ルール」と呼ばれている商習慣です。小売店などが、製造日から賞味期限までの期間を3等分して、納品期間・販売期間・購入後のストック期間を設定しているのです。

例えば、賞味期限が180日の商品の場合、納品期間は60日。製造してから60日過ぎると納品できなくなるわけです。この、賞味期限までまだ120日近くある商品が返品され廃棄されている状況を見直すために、実施されたのが、「納品期限見直し」プロジェクトです。

農林水産省や経済産業省などが、メーカーや卸・流通業界と連携して、納品期限を賞味期限の2分の1に緩和した場合の影響について検証。その結果、納品期限の緩和により、推計で4万619トンの削減効果があると実証されました。そして納品期限の緩和は、食品業界全体に拡大展開する必要があると結論づけられたのです。

この実証実験に参加した、セブン-イレブンでは2014年11月から、全店で飲料品や菓子の一部の納品期限を2分の1に変更しています。また、生活協同組合連合(コープ)も「SDGs取り組み方針2019」において、賞味期限180日以上のドライ商品に関し入出庫期限を2分の1までの緩和を呼びかけ、食品ロス削減への取り組みを強化するとしています。

全国で実施される「食品ロス対策」

「ドギーバッグ」で持ち帰りの推奨

外食で食べ残した料理を持ち帰るための容器「ドギーバッグ」の普及を推進する、NPO法人ドギーバッグ普及委員会では、2019年4月25日飲食店用の持ち帰り推進ステッカーをリリース。横浜市では、ホットペッパーグルメと共同で食べ残した料理を持ち帰るシェアバッグの利用を促進する取り組みを、2018年2~4月、2018年10月~2019年4月と、2度にわたって実施しました。ホットペッパーグルメ外食総研の行った調査では、食べきれなかった料理の持ち帰りに賛成する人は87.6%と、非常に多いことが判明しています。

消費者に向けたメッセージが書かれたステッカー(NPO法人ドギーバッグ普及委員会)

宴会料理の食べきり運動【30・10運動】

宴会の最初の30分間と終わる直前10分間に、出された料理を食べる時間を設け、食べ残しを減らすというもの。長野県松本市で始まり、福井県、静岡県、福岡県、佐賀市などに広がり、2016年10月10日には「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が設立されました。同協議会には、2019年10月10日現在、全国の408自治体が参加しています。

食料の備蓄方法【ローリングストック】

農林水産省や日本気象協会などが推奨する、食料の備蓄方法です。普段の食品を3日分から1週間分買い置きしておき、賞味期限が近いものから消費して、消費した分を補充する。そうすることで、常に一定量の食料を備蓄できるだけでなく、賞味期限切れによる廃棄も防げるというわけです。

(日本気象協会のホームページより)

購入する行動にフォーカス【てまえどりキャンペーン】
2018年10月に、生活協同組合コープこうべと神戸市が共同で行ったキャンペーン。神戸市内のコープこうべ34店舗で、商品棚の手前に置いてある値引き商品などから購入する行動を推奨。「なくそう食品ロス! すぐに食べるなら是非!」と記した値引きシールを貼って、食品ロス削減につながる買い方を呼びかけました。

容器にも各社が配慮や工夫

農林水産省では、食品ロス削減につながる製造工程の改善や、容器包装の高機能化による鮮度保持&賞味期限の延長・内容物の分離性向上の事例を公表しています。それを見ると、日本の企業らしいきめ細やかな配慮や工夫がいっぱいです。

・醤油
ヤマサ醤油では醤油容器をペットボトルからパウチタイプに変更、約39%の軽量化および、鮮度保持期間を30日から180日に大幅延長(2015年8月~)。

・野菜や果物
住友ベークライトではフィルム多層化技術とミクロの穴を施し、青果物の種類や重量・流通環境に応じた最適な酸素のフィルム透過量を設定することで、野菜や果物の呼吸を抑え鮮度保持期間を延長。袋内の結露による腐敗ロスの削減も(2015年7月~)。

・野菜ジュース
カゴメでは「野菜一日これ一本」の容器包装の対腐食性を向上させ、賞味期限を3年から5年6ヶ月に延長(2015年2月~)。

・納豆 
ミツカンでは納豆の容器で折り返し部分の隙間とフタの穴をなくすことで密閉性を向上し、高温保持発酵法を採用することで、賞味期限を10日前後から15日に延長(2016年3月~)。

・ケーキ 
山崎製パンではデコレーションケーキのサイドカバーフィルムに、蓮の葉の表面構造を応用した撥水性・撥油性を有する加工を施すことで、クリームが付着しにくく工夫(2016年~)。

・アミノ酸食品 
味の素ではアミノバイタルの個包装のスティックの角に丸みをつけることで、スティック同士の突き刺しによる破損や損傷を軽減しロス削減を実現(2016年10月~)。

・小麦粉
日清フーズでは小麦粉を独自製法で顆粒化したクッキングフラワー。小さなボトルタイプにすることで、利便性を向上。ダマになりにくいため無駄なく食材にまぶせるように(2015年2月~)。

スープに振り入れるだけでホワイトソース(シチュー)が作れる優れもの

・お餅
佐藤食品工業では切り餅・まる餅の個包装に、酸素を吸収し水分蒸散を抑えるハイバリアフィルムを採用することで賞味期限を15ヶ月から24ヶ月に延長(2016年9月~)。

まとめ

食品ロス削減に向けた対策は、国や自治体も力を入れていますが、やはり頭が下がるのは食品メーカーや食品業界の地道な努力でした。ヤマサ醤油のパウチタイプの醤油容器や日清フーズのボトル入り小麦粉などは、発想の転換によるアイデア商品で、登場した時のインパクトはいまでも忘れられません。企業の社会的責任が問われ、SDGs(持続可能な開発目標)の重要性が高まる中で、小さな工夫や改良、新たな技術の開発で、食品ロス削減に貢献している日本企業を、今後も応援していきたいですね。
消費者庁の推奨する「使いきりレシピ」(クックパッド)や百貨店の「もったいないセール」、飲食店の「食べきり特典」など、まだまだ書ききれなかった対策もあります。まずは、できそうなことからやってみる。そんな気軽な気持ちで、みなさんも食品ロス削減に取り組んでみてください。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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