インフルエンザ流行期入り、ウイルスが嫌いな「室温と湿度」を再確認

そもそも、インフルエンザウイルスが好む温度と湿度とは?

インフルエンザウイルスは、流行の季節を迎えると必ず発生します。そのため、いかに感染しない環境を作るかが大切になります。そこで指標となるのが「絶対湿度」です。
「絶対湿度」とは、空気中の水分量のことを指します。
絶対湿度が低ければ低いほどインフルエンザウイルスに感染しやすくなります。

・インフルエンザウイルスの6時間生存率

絶対湿度11 g/立方メートルの場合…5%
絶対湿度7 g/立方メートルの場合…20%
絶対湿度5g/立方メートルの場合…50%

(出典:国立保健医療科学院ホームページ
目安としては、絶対湿度11g/立方メートル以下になるとインフルエンザウイルスが活動を始め、さらに7g/立方メートル以下になると感染が拡大しやすいといわれています。
絶対湿度が下がると、だんだん唇がかさかさになってきます。つまり、インフルエンザウイルスはそれほど乾燥している環境を好むということです。

・絶対湿度とは

絶対湿度とは、1m×1m×1m、つまり1立方メートルの四角い箱の中に、何gの水分が含まれているのかを表した数字です。ちなみに、私たちが普段使っている湿度という言葉は、「相対湿度」であり、絶対湿度ではありません。相対湿度とは、飽和水蒸気量に対する絶対湿度の割合のことです。
例えば、500ミリリットルサイズのペットボトルに250ミリリットルの水を入れるとしましょう。ここでは、ペットボトルの大きさ(500ミリリットル)が飽和水蒸気量、入っている水の量(250ミリリットル)が絶対湿度、水が入っている割合(50%)が相対湿度となります。つまり、絶対湿度の計算方法は、飽和水蒸気量×相対湿度で求められます。この方法で、絶対湿度を求めることで、現在いる場所がどれくらい乾燥しているのかよく分かります。
とはいえ、毎回計算するのは大変ですので、下記の絶対湿度早見表を参考にしてください。

1立方メートルの空気の中に含まれている水分量の目安。単位はg/立方メートル

この早見表をもとに、インフルエンザウイルスが嫌いな気温・湿度についても見ていきましょう。

インフルエンザウイルスが嫌いな気温・湿度とは?

ウイルス予防の観点だけでいえば、絶対湿度のベストは11 g/㎥以上、最低でも7 g/㎥以上をキープすることが大切です。先程の絶対湿度早見表を使うことで、インフルエンザウイルスが嫌いな室温と湿度の関係をすぐに求めることが可能です。

室温14℃の場合…湿度95%以下
室温16℃の場合…湿度85%以下
室温18℃の場合…湿度75%以下
室温20℃の場合…湿度65%以下
室温22℃の場合…湿度60%以下

なぜ、絶対湿度が高い環境を嫌うの

インフルエンザウイルスは、空気中の水分が多いと長時間生存することができません。そして、遠くまで飛ぶことができず、床に落ちて感染力を失います。また、人間の喉がウイルスをブロックする役目を持っており、絶対湿度が高いとそのブロック力(免疫力)は高まります。これも、インフルエンザウイルスの感染力を弱める大きな要因です。
空気中の水分が多いと、インフルエンザウイルスのウイルスの元気がなくなり、喉のブロック力もアップします。このダブルパンチにより、感染率が下がっていくのです。

インフルエンザウイルスが嫌いな室温と湿度のベストバランス

インフルエンザ対策は、室温だけに気をつけても、湿度だけに気をつけても効果は得られません。室温と湿度をセットにして考える必要があります。

もっとも、ウイルス対策だけを考えるのであれば、湿度を高くすればよいでしょう。しかし、湿度を高めすぎると、結露が問題となってきます。
結露は、窓だけでなく、窓周りの壁紙やカーテンに付着することで、カビを繁殖させます。当然ながら、カビに囲まれて生活することはきわめて不健康なことです。
窓の材質など、断熱性能によりますが、絶対湿度が11g/立方メートルを超えると、窓の結露が起こります。冬場の一般的な窓の表面温度は10~12℃くらい。12℃で抱えられる水分量はMAX10.7 g/立方メートルなので、絶対湿度が11 g/立方メートルだと容量オーバーとなり、結露してしまうのです。

インフルエンザ対策としては湿度を上げるべきですが、結露対策のためには、湿度を下げる必要があります。この矛盾する二つの対策のバランスをとるには、絶対湿度を10 g/立方メートル前後に調整すると、ちょうどいい加減となります。
絶対湿度早見表から換算すれば、インフルエンザ対策と結露対策のちょうどいいバランスがとれる室温と湿度の関係は、次のようになります。

室温16℃の場合…湿度70~75%
室温18℃の場合…湿度60~65%
室温20℃の場合…湿度55~60%
室温22℃の場合…湿度50~55%

従って、室温20~22℃、湿度は50~60%くらいに保っておくのがベストといえるでしょう。

このベストバランスを保つためにおすすめしたいのが、部屋に温度・湿度計をセットし、こまめにチェックすることです。最近では、目覚まし時計に温度・湿度計がついているタイプが1,000円程度で販売されていて、手軽に入手できます。

湿度計、温度計がセットになった時計

その上で、エアコンと加湿器を稼働させておくことが大切です。
エアコンは基本つけっぱなしにしましょう。電気代を心配する人もいるかもしれませんが、こまめにつけたり消したりする場合と、さほど電気代は変わりません。
また、人間の体感温度を上げるには、空気の温度だけでなく、壁や天井の温度(周壁温度)を上げることが大切です。そのため、つけたり消したりすると、そのたびに壁や天井が温まりきらず、空気だけ温めることになるので、室温の割に寒く感じられる室内となってしまいます。
加湿器は、湿度を感知し、自動調節してくれるものがおすすめです。加湿しすぎは結露の原因となるため、適度な加湿を心がけましょう。

エアコンと加湿器をうまくコントロールするのがポイント

室温・湿度以外の対策も忘れずに!

いくら絶対湿度を適正にしても、室内の空気が淀むと、室内のウイルス濃度が高まり、ウイルス感染リスクは高まります。そのため、適切な「換気」も必要不可欠となります。
ナイチンゲールが「看護覚之書」の第1章に「換気と保温」が人の健康の基本だと書いているように、換気不足になると、体内に取り込む空気が汚れてくるので、インフルエンザのみならず、病気になりやすくなります。

平成15年以降に建てられた家なら、24時間換気システムが付いているので、多少寒くても絶対に止めないこと、また、フィルターの掃除は必ず行うことを徹底してください。
24時間換気システムが付いていない家は、キッチンやお風呂の換気扇をつけっぱなしにしておくことで、ある程度の空気の入れ替えを行うことができます。
寒い空気が入ってきてしまいますが、部屋を暖かくすることと同じくらい換気は大切なので、換気をしつつエアコンで部屋を暖め、換気と保温を両立するよう留意します。

ただし、家の環境を整えても、ウイルスがゼロになるわけではありません。
そのため、帰宅後・食事前には手洗い・うがいをすること、予防のために外出する際にはマスクを着用すること、就寝時にマスクをするといった、喉のケア対策を徹底しましょう。

【取材協力】
瀬山 彰(せやま・あきら)
家づくり知識メディア「グッシン」を運営する日本の家づくり 強化ディレクター。筑波大学卒業後、日本最大手経営人事コンサルティング会社にて全国ハウスメーカー・工務店を担当。住宅業界で手腕を振るう中、住宅業界の悪しき文化に疑問を覚え、家づくりの新たなスタンダードを確立することを目標に掲げ、2015年には「家づくり せやま学校」を開校。“日本の施主を強くする”を合言葉に、施主の知識向上を目的とした講演を年間100件以上実施。雑誌コラムの連載やFMラジオ局「FMOH!」にて冠番組のDJを務めるなど、活躍の場を広げている。

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