【第1回】住宅情報サイトで迷子にならないために「したい暮らし」の優先順位を!

分譲住宅の取材・記事執筆を約20年行い、住まいアドバイザーとして活動されている井上真樹さん。その取材経験を基に「後悔しない住まい選び」をテーマに、これから住宅購入を考える方に向けて経験談からのアドバイスをしていただきます。

私は、住まいアドバイザーとして約20年、分譲住宅の取材をしてきました。その取材経験を基に「後悔しない住まい選び」をテーマに、これから住宅購入を考える方に向けて経験談からのアドバイスをしていきたいと思っています。

私が分譲住宅の取材を始めて約20年、その間、住まいに対する志向も選び方も大きく変化しました。なにより大きな変化をもたらしたのは、インターネットの普及です。自宅にいながらにして、たくさんの情報を入手できるようになりました。一方で、情報の量が多すぎて、どうやって選んだらいいのか戸惑う、あるいは、なかなかピンとくる物件に出合えないという声も耳にするようになりました。そうならないために、今回は、住まい選びの前に考えておいていただきたいことを整理してみました。

まずは、「自分たちがどんな暮らしがしたいのか」を考える

住まいを探そうとする時、まず何からはじめますか?

住宅情報サイトで物件の検索からはじめる方も多いと思います。多くの住宅情報サイトでは、まず「エリア」や「沿線」を選ぶように求められます。暮らしたいエリアが決まっている方にとっては便利な機能ですが、特にエリアを限定していない方の場合、いきなり“なんとなく”エリアを絞って…という形で、サイトの検索軸に誘導されがちになります。結果、なんとなく住むイメージを持っていた「エリア」や「沿線」、さらに、「価格」や「広さ」、「駅徒歩分数」など、検索しやすい項目だけで物件を絞っていく流れになってしまいます。

“なんとなく”物件を検索する前にしておきたいことは、「新しい住まいでどんな暮らしがしたいのか」を明確にすることです。人生の中で最も大きな買い物と言われる住まい。その街で、その物件で、一生暮らすことになるかもしれません。だからこそ、住まい探しの機会に、自分にとっての、家族にとっての“理想の暮らし”を考えてみることをおすすめします。

「したい暮らし」の夢を広げて、さらに、優先順位をつけておく

「家族が一緒に過ごせる時間を大事にしたい」場合、広いリビング・ダイニングがあるといいですね。ここを優先すると、個室の広さは少し抑えてもいいかもしれません。優先したいことが決まっていると、間取り図の見方も変わってきます

新しい住まいでどんな暮らしがしたいですか?

共働き層が増え、最近は、ご夫婦ふたりの「通勤アクセス」や駅からの「徒歩分数」が重視される傾向にあります。その場合、夫婦それぞれに乗り換え許容回数は何回、自宅からの通勤所要時間は約何分というところまで具体的に考えてみてください。「通勤時短」が最優先項目の場合は、エリアや沿線を限定せず、それがかなう駅を広く探すことからはじめたいものです。思わぬエリアや駅で魅力的な街、物件に出合えるかもしれません。

しかし、多くの方の場合、「したい暮らし」を挙げれば、もっと色々な項目が出てくるでしょう。現在の暮らしと比較して、「ここはもっとこうしたい」「今の暮らしのこの部分は魅力」という形で整理するのもいいと思います。

まずは、どんな暮らしが理想なのか、大きな項目で挙げてみましょう。

例えば、

・家族が一緒に過ごせる時間を大事にしたい
・子どもたちをのびのび育てたい
・広々した家で暮らしたい
・経済的に余裕のある暮らしがしたい
・日常の買い物がもっと便利できるようにしたい
・都会的な暮らしがしたい
・緑に癒される暮らしがしたい
・趣味のスポーツが楽しめる場所がいい
・眺めのいい場所で暮らしたい

などなど、ご夫婦で、ご家族で、まずは、アトランダムに「したい暮らし」を挙げてみてください。

「どんな瞬間に幸せを感じるのか」
「平日は、休日は、どんな風に過ごしたいのか」
お子さんのいるご家族ならば、「どんな風に子どもたちに育ってほしいのか」

住まい探しは、そういうことを改めて考えるよい機会になると思います。

そして、ここからが大事です。アトランダムに挙げた「したい暮らし」に優先順位をつけます。新しい住まいで「どうしてもかなえたいこと」と、それを叶えるためであれば「諦めてもいいこと」を見極めておいてほしいのです。

さらに、優先順位の高いものについては、できるだけ具体的に、どんな条件があれば、それが叶うのかを考えておきます。

例えば、「家族が一緒に過ごせる時間を大事にしたい」、これを叶えるには、

・夫婦とも自宅からの通勤所要時間は30分以内に
・買い物も時短できるように、スーパーは徒歩5分圏内に

の条件が挙げられそうです。

また、「子どもたちをのびのび育てたい」、これを叶えるには、

・子どもが駆け回って遊べる大きな公園が徒歩5分圏内にある

といった形です。

優先順位が明確になり、それを叶えるための具体的な条件(キーワード)が明確になると、住宅情報サイトの使い方も少し変わってきます。

「したい暮らし」が特集になっている場合もあります。検索ワードに「したい暮らし」のキーワードを入れてヒットする場合もあります。あるいは、逆に、例えば「子どもが駆け回って遊べる大きな公園」を先に調べて、その公園の近くで物件が出ていないかという順番で物件を検索する方法もあります。

いくつかの物件で迷った場合も、「したい暮らし」に立ち返って選ぶことができるはずです。

子どもをのびのび育てたい場合、まずは、「子どもたちが駆け回って遊べる大きな公園」を調べて、その公園の近くで物件が出ていないかを住宅サイトで調べるという方法もあります

ライフステージの変化も想像してみる

優先順位をつけた後、少し立ち戻って点検しておきたいことがあります。

それは、「今」だけでなく、「将来にわたって」という視点で、「したい暮らし」を考えてみることです。

新婚期、子育て期、教育期、子独立期、老夫婦期と、家族のライフステージは変化します。今、考える「したい暮らし」の優先順位と、将来の優先順位が異なってくる可能性は大いにあります。

例えば、今は、入れる保育園に近いことがとても重要でも、保育園に通うのは数年のこと。そう考えると、保育園との距離が少し遠くなっても、優先させたいことがあるかもしれないという具合に点検してみてほしいのです。

一方で、この話を突き詰めると、人生100年時代、子育て期自体が短いという話にもなりがちですが、ここは時間の長さとは別にとらえたいところです。確かに、子どもが公園を必要とする期間は長くはありませんが、どんな街でどんな風に幼少期を過ごすかは、その後の生き方や感性といったものに少なからず影響をもたらします。

住まい探しのシーンでも、ご自身の子ども時代を振り返って、子どもにもそんな環境を与えたいというお話もよく聞きます。ですから、「どんな風に子どもたちを育てたいか」という本質的な部分は大事にしてください。その上で、例えば、今は専業主婦だけれど、将来は共働きしたい場合、子どもの進学を考えた場合など、少し長いスパンで、優先順位を再考察してみてください。

次回の第2回目では、「優先順位」をつけて住まい選びしていく際に、ついつい陥りがちな“迷い”について、抜けだすためのヒントになる考え方を紹介したいと思います。

井上真樹の連載「後悔しない住まい選び」の記事一覧はこちら

(掲載の画像素材はPIXTAより)

(最終更新日:2020.01.22)
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