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2020年8月で創業100周年を迎える家具メーカー「飛騨産業株式会社」。100周年事業の第一弾として、新国立競技場の設計などでおなじみの世界的建築家・隈研吾さんとコラボレーションした椅子やテーブル「クマヒダ KUMAHIDA」シリーズを発表しました。それを記念して、2019年9月27日に、「木の時代~これからの100年を見据えて、木の可能性を探る~」と題したイベントを開催。隈研吾さんと、飛騨産業の代表取締役社長・岡田贊三さんの特別対談の様子をレポートします。

世界中から注目を集める「木」の魅力とは?

飛騨産業の代表取締役社長・岡田贊三さん
世界的建築家・隈研吾さん

イベントは、飛騨産業株式会社の代表取締役社長・岡田贊三さんの進行でスタートしました。同社と隈研吾さんがタッグを組み、家具作りに取り組むことになったことを、岡田社長は「奇跡」と表現。世界中で数多くの建築プロジェクトを抱える隈研吾さんが、なぜ「家具」という小さなものに取り組もうと考えたのかと疑問を投げかけました。

隈さん:
建築は人間と距離があり、木の建築にしても日常的に触れているものではありません。一方で、木の家具は常に温度や硬さを体感できる、人間にとって建築以上に近い存在だと思っています。もともと家具が大好きですし、気になる存在で、これまでも自分が設計した建物に合う家具を製作することはありました。「いつか本格的に時間をかけて、家具をデザインしてみたい」と思っていましたし、「飛騨の匠」で知られる伝統技術を引き継いで仕事をされている飛騨産業さんと、一度仕事がしてみたいと思っていました。

「木」そのものに対する需要の高さも感じていると言います。

隈さん:
2000年以降、世界中のクライアントから「木を使ってほしい」という依頼が急激に増えました。ストレス社会の中で、人間が木を求めていることもあると思います。また、地球環境の観点からは、木が二酸化炭素を吸収することで地球温暖化を防止する効果があると、多くの環境学者が発言しています。

隈さんは人の中に「森の中から生まれた」という原始的な記憶があり、木と接することで人間のルーツを感じ、とても安らぐのではないかと感じているそうです。

隈さん:
人間の中に昔の森の記憶があり、木を使いたい気持ちに繋がっているのではないかと、以前から思っていました。対談でお会いした京都大学の山極総長は、猿と暮らしてきた経験を持つ霊長類学者で「森の中で生活していた記憶が人類に染みついているのではないか」「人間が木にこだわるのは太古の歴史に関係しているのではないか」という話をお聞きして、自分の直感は間違っていなかったのではないかと感じました。

家具づくりの原点は、学生時代に制作したペーパーナイフ!?

隈研吾さんが「一生ものとして愛用してほしい」と自信をもって送り出すアームチェア。学生時代にペーパーナイフを作った経験が活きています(photo by Masayuki Hayashi)

「木は、材料としていろいろな使い方ができる不思議な素材で、塊にも、紙のように薄くもできる。重くも軽くもなる。さまざまな表情を見せてくれる魔法のような素材」と語る隈さん。学生時代にいちばん楽しかったという授業も、木に関するものでした。

隈さん:
世界を代表するインテリアデザイナー・剣持勇氏の弟子で、現在は剣持デザイン研究所の代表を務める松本哲夫先生から「1本の木の棒からペーパーナイフを作る」という課題を出されました。ウォルナットの棒にヤスリをかけ、徹底的に曲線を作り、官能的なペーパーナイフを作ったら、松本先生がとても気に入ってくれたことを覚えています。ウォルナットを削ることで生まれる質感が魅力的で、建築でここまで手の込んだ仕事は、なかなかできません。学生時代の楽しかった経験を、今回の家具づくりで活かすことができ、松本先生には今でも感謝しています。

木の魅力は、造形の美しさだけに留まりません。「飛騨産業の手掛ける家具は、修理をしながら長く使ってくださる人が多い」と岡田社長。長く使い続けることができるのは、木の特性が関係しています。

隈さん:
木は、伐採して加工した後も水分を吸ったり、出したりしています。僕は、木が育っているときから少しずつ「死を蓄えている」と思うんです。木の中心の硬い部分(導管)は死んでいて、その硬さで生きている部分を支えています。だから木は倒れません。木は「生きているうちから死んでいるし、死んでいても生きている不思議な生き物」であり、だからこそ人間を安心させてくれるのはないかと思います。

「柔らかさ」と「軽やかさ」を両立した「クマヒダ KUMAHIDA」シリーズ

アームチェアとテーブルで構成された「クマヒダ (KUMAHIDA)」 シリーズ(photo by Masayuki Hayashi)

話は飛騨産業と隈研吾さんがコラボレーションしたアームチェアとテーブル「クマヒダ KUMAHIDA」シリーズへ。「柔らかさ」と「軽やかさ」を両立した造形にこだわったアームチェアを実現するにあたり、飛騨産業の技術力に驚かされることも多かったようです。

隈さん:
飛騨産業のみなさんがこちらの要望に粘り強く付き合ってくださり、びっくりしました。例えばアームチェアは、前脚から手すり、背もたれにかけての部材を「紡錘形」といわれる両端が尖った断面とすることでエッジを効かし、シャープで軽やかに仕上げています。モックアップ(試作品)を作りながら「あぁ、やっぱり前のカーブの方がよかった」「もうちょっとこうしたい」と試行錯誤を繰り返し、ここまで到達するのに建築よりも時間がかかったと思います。飛騨産業のみなさんの粘り強さと、それを可能にする技術力に感銘を受けました。

アームチェア・ダイニングテーブルともに、樹種はウォルナット(写真左)とホワイトオークの2種。アームチェアは板座・張座の仕様から選べます(photo by Masayuki Hayashi)

アームチェアの特徴は、前脚から肘、背を連続して1本で繋ぐ、ねじれたリボン状の構造だけにとどまりません。背の部分だけでなく座面にも曲げ木の技術を用い、座り心地も考え抜かれています。

隈さん:
座の部分は、実際に体重がかかる場所です。いかに機能的に、座りやすくするかがポイントでした。座面には厚みのある木を使用していますが、先端を薄くくさび形に削り、浮いているようなディテールに仕上げました。座り心地はぜひ、実際に座って確かめていただきたいですね。

テーブルの天板は側面部分を斜め下に向かって大きく削ぐことによりシャープなフォルムを描き、軽やかさを演出しています(photo by Masayuki Hayashi)

テーブルもアームチェアと同様、脚部は紡錘形の断面形状を採用。斜めに接合することにより、躍動感を感じるデザインです。

隈さん:
テーブルも、試行錯誤の末にたどり着いたデザインです。脚部がいちばん軽やかに見える角度を意識するとともに、紡錘形の形状をどのような断面にするか検討を重ねました。地面に近づくにしたがって細くしていき、地面との接点を小さくすることで浮いているような軽やかさを表現しました。

隈さんは、このアームチェアとテーブルを、さまざまな場所で使ってほしいと語ります。

隈さん:
昔は、オフィスではオフィス家具、住宅では住宅用の家具を使用するのが当たり前でした。しかし、今の時代は家とオフィスの境が消えつつあります。そもそも、オフィスの起源は住宅の中にある執事の部屋という説があり、ベルサイユ宮殿も住宅でありオフィスでした。住宅とオフィスの境は曖昧なものだったのではないでしょうか。家具も同様で、オフィス用・住宅用・カフェ用といった分類を超えた家具を提案したいと考えています。「クマヒダ (KUMAHIDA)」も、家でもオフィスでも使ってほしいですね。実は、テーブルは早速、僕の事務所で打ち合わせをする際に使用しています。

これからの100年を見据えて。日本の技術を世界へ発信したい

「クマヒダ KUMAHIDA」シリーズを製作した飛騨産業には、隈さんの難しい要望に応える、気骨ある職人がたくさんいると話す岡田社長。2014年には、新しい時代に向けて職人を育てる「職人学舎」を開校しています。創業100周年から、次の100年に向けて。隈さんから岡田社長へのアドバイスは?

隈さん:
僕は世界中で仕事をして、さまざまなメーカーの家具を見てきましたが、飛騨産業さんの持つ技術や蓄積されてきた経験は、ほかでは到達できないものだと思います。世界中の人にこの家具を見せたら、ウェイティングリストができるのではないでしょうか。これからの100年は、世界に向けて発信する活動に取り組んでいただきたいですね。

編集後記

対談終了後、「クマヒダ KUMAHIDA」アームチェアを見て・触れて・座ってみることができました。どの角度から見ても美しい造形や滑らかな質感もさることながら、座った時に体がなじむ感触が心地よく、まるで木に抱かれているような感覚が印象に残っています。飛騨産業直営店「HIDA 東京ミッドタウン店」などで先行展示中なので、一度その座り心地を体感してみてはいかがでしょうか。なお、今回紹介した家具についての詳細は、特設サイトよりチェックしてみてくださいね。

100周年記念事業第一弾 建築家 隈 研吾×HIDA「クマヒダ KUMAHIDA」特設サイト

クマヒダ プライスリスト

隈 研吾さんプロフィール
1954年生まれ。東京大学建築学科大学院修了。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。現在、東京大学教授。これまで20か国を超す国々で建築を設計し、国内外でさまざまな賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。

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