その「間取り」で大丈夫? 家づくりにも「セカンドオピニオン」を!

新築のマイホームは一生に一度の大きな買い物。「3軒家を建てて、ようやく理想の我が家に出合える」といわれる家づくりですが、そのようなことが誰にでも可能なわけではありません。そこで、1軒目でも理想に近づけられるよう、家づくりにも“セカンドオピニオン”を取り入れてみてはどうでしょう? 今回、そんな提案をしている岡山県岡山市中区の「VANX(ヴァンクス)1級建築士事務所」小川修市さんにお話を伺いました。

「家づくりのセカンドオピニオン」って何ですか?

「セカンドオピニオン」は、医療の分野でしばしば聞かれる言葉。本来の意味は、よりよい決断や選択をするために、専門的な知識を持つ複数の専門家に求める「意見」または「意見を聞くこと」を意味します。医療行為と同じく、家づくりは、そう何度もやり直せるものではなく、失敗が許されません。ところが、念願のマイホームが建ったばかりだというのに、不満を感じたり、後悔したりする人が少なくないそうです。そこで、工務店や建築事務所に作ってもらった間取りや仕様に無理や無駄がないか、建築家の専門知識を持つ第三者としてチェック、アドバイスしようというのが「家づくりのセカンドオピニオン」です。

一級建築士の小川修市さんは、自身が開く「住まいの無料相談会」などで、家づくりのこと、住宅設計、リフォームの相談などを受けていますが、訪れる方の中に、既に別の工務店で建築中の家に対する不安や不信感を訴え、連絡してくる人が多かったといいます。以前は、ハウスメーカーや工務店が決まっているお客様の場合、プラン(間取り)作成は断っていた小川さん。しかし、「アドバイスすることでその方の不安が解消されるなら、それも建築家の仕事だと考えるようになって」、建築家による「セカンドオピニオン」として持ち込まれたプランの判断・診断や見直しに応じるようになったそうです。

家づくりのこんな悩みを抱える人におすすめ

よくある悩みとしては、「工務店と契約したがプランが気に入らない」「これでいいかどうかプランに自信がない」「工務店を決めてしまったので今から変えられない」「契約をしてしまって、悩んでいる」といった内容が多いそうです。相談が多く、驚いたことに、家づくりの初期段階ではなく、既に工務店やハウスメーカーなどと契約して建て始めているケースさえあるのだとか。

「プランというのは、本来いろいろな形があって自由であるべきなんですが、工務店側が、半ば流れ作業的に家づくりを進めてしまうこともあるし、家を建てることがメインの業者であれば、プラン作りをおろそかにして工務店寄りのプランニングになっている場合もありえます」と小川さん。一方、施主側は、プランする人であれば皆プロだと感じるもの。すべてを任せてしまったり、言いなりになったりしてしまうのも無理はありません。

「プロだから、こちらの思いや希望をきちんと汲み取ってプランしてくれているはず」と思って任せきったり、「素人がプロにあまり注文を付けてはいけないのでは?」と我慢したりしていては、一生、“我慢した家”に住まなければいけない不幸な結果になってしまいます。そうなる前に賢く活用したいのが、家づくりの専門家による“セカンドオピニオン”なのです。

間取りの見直しポイントはココ!

では、セカンドオピニオンを取り入れることで、プランがどのように変わるのでしょうか。小川さんに、これまでの実例の中から、主に間取りについてのチェックポイントを教えてもらいました。まず重要なのは、敷地を十分活かしきっているかどうか。また部屋の明るさや暗さも施主の悩みに多く見られる点だといいます。

採光が確保され明るい住まい
日当たりの悪い敷地の中央に中庭を設け、それを取り囲むように部屋を配置。どの部屋にも採光が確保され明るい住まいに

「本来なら、敷地の形状に合わせて有効なプランを立てるべきなのですが、プラン優先の間取りにしてしまうため、北側に使わない無駄な余白ができてしまったり、変形の土地に合わない建物の形になったりしているケースがあります。できるだけ、敷地に合わせた柔軟なプランを立てる方がよいですね」と小川さん。開口部や採光窓に関しては、断熱やデザインを優先するばかりに窓を小さくとり、家が暗くなってしまったという不満が多いそう。また、旧来のように廊下が多い家は各部屋が小さくなってしまうので、廊下のスペースを部屋に取り込めばゆったり広く使えます。

変形敷地のデメリットを逆手に取った二世帯住宅の間取り図
変形敷地のデメリットを逆手に取った二世帯住宅の間取り図(左が1階部分、右が2階部分)

予算オーバーも一度見直しを

実際に住んだときの経費面を見直すなら、たとえば玄関スペースを仕切ってひとつの部屋にすれば、省エネ効果だけでなくプライバシー性の問題からも有効です。また、費用面では、使う材質や断熱素材の選び方によってかなり抑えられるそうです。断熱効果はあまり変わらなくても新素材などを選べば高くつくケースもあるそうで、断熱性能を重視しすぎて高額な仕様になっているようなら、一考する必要があるでしょう。

「既に土地のよう壁を造った後にプランを変更し、別途で費用がかかってしまったケースもあります。けれども、一生後悔するよりは、理想の家に住んで満足したいですよね。後悔や無念な思いをする前に、ぜひ一度考え直す時間を取ってみてはいかがでしょうか」と勧める小川さん。

100%理想に近い住まいを目指すために

「理想の家を叶えるためには、予算と広さがどうしてもネックになります。けれど、施主さんの理想に限りなく近づけるプランは可能です。プランに違和感がある、予算内に収まらない、理想のプランをあきらめなければならないなど、家づくりに不安を感じているなら、早い段階でセカンドオピニオンを求めてみてはいかがですか」と小川さん。

二世帯住宅、敷地を有効に使った明るい家、家事動線の短い家、小さいのに広く感じられる家…ずっと願っていたのに、諦めてしまっていたプラン(間取り)が可能になるかもしれません。まずはセカンドオピニオンに応じている建築士や設計士に、電話やメールで相談してみてはいかがでしょうか。

【取材協力先】
VANX(ヴァンクス)
1級建築士事務所 小川修市さん

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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