ワイン漫画として全世界で1,000万部以上を発行し、世界中で高く評価されている『神の雫』。その原作者がワインのある“暮らし”を提案する新連載です。敷居が高く、手を出しにくいイメージを払拭する “飲みテク”を伝授。毎月給料日に、自宅で飲むことを前提に、手頃な価格で楽しめるワインをご紹介します。

美味しいワインを探すにはコツとテクが必要

ワイン漫画『神の雫』をスタートさせて、早いもので15年になる。この漫画を始めたきっかけは、自分たちがワインに夢中だったからで、要は趣味の延長みたいなもの。市場性を狙ったわけではまったくなかった。だから「ワイン漫画やります」と編集部にいったところ、「今は焼酎ブームなのに、なんでワイン?」とケゲンな顔をされたのを覚えている。

©亜樹直、オキモト・シュウ/講談社

ところが連載開始まもなく、韓国で突然、火がついた。韓国は当時、好景気に沸いており、富裕層がワインに熱い視線を注ぎ始めていたのだ。韓国ではメディアに次々と紹介され、1年も経たないうちに200万部を突破した。その火が台湾、香港へと伝播し、やがてワインのメッカ・フランスでも注目を浴び、1,000万部を超えるヒットとなった。最近ではワインがブームになりつつある中国からも、ラブコールがひっきりなしにきている。

このように世界のあちこちで読んでもらえる作品になるとは想像もしなかったが、それというのもワインが社会や経済、文化と深く関わる飲み物であり、人の心を動かす神秘的な魅力があるからだろう。
「なんでワイン?」という空気感だった15年前と比べると、日本でもワイン文化はだいぶ根付いてきたように思える。国内のワイン消費量は、2008年から18年までの10年間で1.6 倍に増えたし、今やコンビニでもフランスのメジャー産地のワインが買えるようになった。

ところが、日本人1人が飲むワインの量は、いまだに年間たったの4.5 本なのだという(※)。これは、消費量世界一のアメリカの10分の1程度で、驚くべき少なさだ(私の場合、1週間で飲んでしまう量だ……)。

※ワイン・スピリッツ国際見本市「VINEXPO」(ヴィネクスポ)とイギリスの市場調査IWSRがコラボして調査した、世界各国のワイン消費量調査「IWSRヴィネクスポ」による。

年間4本半しか飲まないとは、本当にもったいないことである。というのも、日本ほどいろいろな国のワインが自由に、しかも安く買える国は他にないからだ。世界のワイン生産国を取材する時、私は必ずその国のワインショップを覗くが、多くの場合、自国のワインしか置いていなかったり、日本で買うより値段が高いこともある。

かたや日本は、デパートのワイン売場ではあらゆる産地のワインが揃っているし、ネットモールではどの店のワインが最安値かも検索できるし、クリック1回で簡単に買えて、運んでもらえる。ワインを飲むなら、日本は世界一恵まれた環境なのである。

それなのになぜ日本のワイン消費量は「この程度」なのだろうか。私のもとには、時々こんな声が寄せられる。
「ワインは選び方がわからない」「ウンチクが嫌い」「葡萄の名前や格付けが難しくてわかりにくい」……。

どうもワインには“知らない者は飲む資格なし”的なイメージがつきまとっているらしい。だがラベルが読めなくても品種がわからなくても別に問題はないし、一番大事なのは、飲んだ時にワインの持つ魅力をちゃんと感じ取れるかどうかだと思う。

ひとつだけ「選び方がわからない」というのはその通りで、星の数ほどあるワインの中から、美味しいワインを探し出すには、やはりちょっとしたコツというかテクがある。それを知っておくと、アタリをつかめる確率が高まるし、ワインを飲む楽しさも違ってくるはずだ。この連載ではそうした“飲みテク”を知ってもらい、ワインのある暮らしをもっと楽しんでもらいたいと思う。

最強のコスパを誇るスーパーワイン『コノ・スル』

前置きが長くなったが、初回のテーマは「チリワイン」だ。

チリは、日本における輸入ワインのおよそ3分の1を占め、もっとも多く飲まれている産地だ。輸入量が多いわけは、2007年に日本との間で経済連携協定(EPA)が始まり、輸入関税が段階的に引き下げられてきたことが大きい。関税引き下げと並行して輸入量が徐々に増え、12年間で約5倍にまで増加した(※)。

※財務省関税局貿易統計による。なおチリワインの関税は2019年4月に完全撤廃された。

一方、チリワインは品質も比較的安定している。最大の理由は、チリの気候や環境がワイン作りに向いているためだ。良い葡萄を育てるには、雨が少ないこと、日照時間が長いこと、昼夜の寒暖差が大きいことが重要なのだが、チリの気候はこれらをすべて満たしている。人件費も安いので、手間のかかる「手摘み」や有機栽培もローコストで行える。

さまざまな好条件が重なっているため、チリは値段に比して品質の高いワインが多いのだが、実は300円、400円台の激安ワインも、かなりの数が売られている。輸入コストや販売利益を引くと、この手のワインの元値はいくらなのか、なぜこんなに安いのか……と疑問がわいてくる。

あくまでも私見だが、税込み1,000円以下のワインを飲むくらいなら、ビールや焼酎を飲むほうがいい、と私は思っている。なぜなら1,000円以下のワインには(たとえ口当たりがよくても)、ワインの魅力をもっと知りたいという気持ちにさせる「何か」が存在しないからだ。素晴らしいワインというものは、無限に広がる世界観やイリュージョンを携えている。1,000円台のワインにも、その世界に通じる小さなカケラを見つけることはできる。しかし、300円や400円のワインには、それがないのだ。だから、ワインの世界を楽しみたいのなら、まず1,000円台のワインからスタートしてもらいたいと思う。

ワインの大いなる魅力に通じる玄関口に立ち、「安くて美味い」というチリワイン本来の魅力を楽しみたい人にまずオススメしたいのは、『コノ・スル』というブランドだ。

コノ・スルは1993年設立の比較的新しいワイナリーだが、動物や益虫を使ったサスティナブルな農法に早くから取り組み、「値段は安いが高品質のワイン作り」を徹底追求してきた。やがてその“安旨”ぶりは海外でも評判になり、創業10年目に早くもチリ国内でワインの輸出量3位に躍り出る。

その後も数々の国際コンクールで受賞、創業20年目にはイギリスの老舗ワイン専門誌「ドリンクスインターナショナル」で、世界で最も称賛されるワインブランドの18位にランクインされた。

輝かしい実績の一方で、値段はとてもお安い。一番リーズナブルなレンジでは、なんと楽天で700円台だ。もちろんこれらも700円台とは思えないレベルなのだが、ひとつ上のレンジ、1,000円台が中心の「レゼルヴァ」から飲んでいったほうが、コノ・スルの実力が理解できると思う。

©亜樹直、オキモト・シュウ/講談社

その「レゼルヴァ」でのイチ推しは、白ワイン「コノ・スル・ゲヴュルツトラミネール・レゼルヴァ・スペシャル」。ゲヴュルツトラミネールとは、ドイツやフランスのアルザス産が有名な、薔薇やライチの香りが漂う優美な白ワイン品種。コノ・スルのゲヴュルツは、醸造家のお父さんが所有していたという優良畑の葡萄を使用しており、畑のポテンシャルはお墨付きだ。香りはアロマティックだがボディはしっかりしていて、中華・エスニックなど少し癖のある料理にも合わせやすい。

20バレル・リミテッド・エディション

赤ワインのオススメは、レゼルヴァより高級なレンジの「20バレル・リミテッド・エディション」カベルネ・ソーヴィニヨン。チリ最高峰といわれる産地アルト・マイポの葡萄を使ったもので、1本の樹からの収穫量を抑えて、凝縮感を際立たせている。20バレル、つまりたった6,000本しか作られない限定ワインだが、それでも実勢価格2,000円ちょいというリーズナブルさだ。

カベルネ・ソーヴィニヨンは、フランスの吟醸地ボルドー地方が有名だが、20バレルのカベルネは、ボルドーのそれと比べても遜色ない強靱な骨格と、芳醇な香りを兼ね備えている。栓を抜いた直後は少し渋いが、グラスに注いでから10分もすると、渋味がふわ~っとほどけて、絹のような喉越しでクイクイと飲める。給料日の食卓でちょっと豪華な牛肉料理を……なんていう時に、ピッタリの1本だと思う。

ちなみにワインは高温で劣化してしまうので、購入したあとは20度以下で保存するのが無難。真夏ならやはり冷蔵庫だが、これからの季節は、気温の低い勝手口などで保存すれば大丈夫。ネットショップでは「コノ・スルを6本まとめ買いすると送料無料!」というサービスをあちこちでやっているので、涼しいシーズンを狙って「まとめ買い」もアリだ。

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