「旗竿地」でも快適に住める! 間取りで注意したい3つのポイント

特殊な形の土地だと、建ぺい率や容積率などさまざまな規制により快適に暮らせる住宅を建てることが困難になります。また、建築工事の際にも一般的な土地に比べて工事に手間がかかるというイメージもあるでしょう。こちらの記事では、都心部で多く見られる「旗竿地(はたざおち)」の特徴や、旗竿地に家を建てる際に間取りで気をつけたいポイントを3つ紹介します。

旗竿地という土地の特徴は?

「旗竿地」とはその名の通り、竿についた旗のような形をしている土地のことを指します。公道(道路)に接している出入り部分が細い通路になっており、その奥の敷地に家がある形となります。旗竿地は、別名「路地状敷地」や「敷延(しきえん)の土地」、「敷地延長」などとも呼ばれ、都市部に多く見られるのが特徴です。
このような特殊な形の旗竿地は、家を建てやすくするために土地を細かく分割することで生まれるといわれています。建築基準法により、敷地は公道に2メートル以上接していなければならないとする接道義務が課せられており、この基準が満たされない場合はこれまで家が建っていた場所であっても再建築不可となります。

ちなみに、敷地の竿に当たる部分は通路として利用しなければならず、建物を建てることができません。また、旗に当たる部分は有効宅地部分と呼ばれ建物を建てることができますが、自治体の規制によっては非常時の進入口として利用する、3階建ての建物が建てられないなどの規制が設けられることもあります。旗竿地は特殊な地形のため少々利用しにくい点もありますが、そのぶん土地の価格が安いのが特徴です。都市部の土地代が高いエリアや人気エリアであっても、思わぬ価格でマイホームを建てることができるかもしれません。さらに、旗竿地は公道から奥まった場所にあるので、車の騒音や通行人の視線を感じることなく静かな生活を送ることができる点もメリットです。

小さな子どもがいる家庭の場合、目の前がすぐ公道だと飛び出し事故など心配ですが、通路のある旗竿地の住宅ではそのような心配も少なくなります。

旗竿地に家を建てる問題点とは?

旗竿地に家を建てる際にまず考慮しなければならないのが通路が狭い点です。竿部分に当たる通路幅は2〜3mほどのところが多く、建物を建てる際に使用する重機が入らないことも考えられます。車を所有している場合は通路部分を駐車スペースとすることが多いですが、通路部分は車がなんとか1台停められる程度の幅です。そのため、2台以上車を所有している場合には縦列駐車をする必要があるなど、車の運転が得意でない人や、毎日車を運転するという人にとっては、通路の狭さはデメリットとなります。竿部分は通路として確保する必要があるため、駐車スペースがあっても幅ギリギリまで使うことはできないのです。

構造上周囲を家に囲まれることになる旗竿地は、日当たりや風通しが悪くなりやすい点や、プライバシーを保ちにくい点なども問題点となります。日当たりは洗濯物の乾きやすさや日中の過ごしやすさなど、生活の質に大きく影響するでしょう。また、近隣住宅の視線が気になるケースでは、心穏やかに毎日を過ごすことが難しくなります。

電気や水道、ガスなどのインフラ設備が整っていない旗竿地の場合、インフラ工事に別途費用がかかるのも見逃せません。水道管自体を引く工事や、通路に支柱を設けて電線を引く工事などは自費負担となってしまい、出費がかさんでしまいます。

日差しを取り入れる工夫

旗竿地は周囲をほかの家に囲まれている立地のため、日当たりが悪く開放感が得られにくいのが難点です。特に、1階部分の日当たりをどのように確保するかを考える必要があるでしょう。家が隣接している場合、窓から室内へ光を取り入れるのは難しく、昼間でも電気をつけないと薄暗さを感じる住宅も少なくありません。

明るい空間で生活したいのであれば、窓の大きさや位置、開閉のタイプなどを検討しましょう。おすすめなのは家の上部から光を取り入れるという方法です。たとえば、天窓(トップライト)や高窓を設けることで、上からの日差しを効果的に取り入れることができます。

2階建て住宅であれば、2階部分の床に床用のグレーチングや強化ガラスなどを使用することで、階下にも明かりを届けることが可能です。

各方位から日差しの入りやすい2階部分にリビングを持ってくると、家族で過ごす空間がいつも明るく快適になるでしょう

周囲を家に囲まれている旗竿地の住宅は閉鎖的な空間になりがちですが、中庭や吹き抜けをつくることで開放感も出すことができます。家の中心に中庭やテラスを配置すれば、奥の部屋にも自然と明かりが行き渡ります。高い天井に天窓や高窓をつければ、周囲の視線も気にならず、明るさだけを取り入れることができるのです。ほかにも、窓を大きめに取る、窓の数を増やす、予算に余裕があれば光ダクト構造を検討することなどもおすすめです。

プライバシーの確保

近隣住宅との距離が近い旗竿地では、周囲の家からの視線が気になるという問題点があります。通路部分に隣家の窓があったり、隣家からベランダに干した洗濯物が見えたりなど、プライバシーを保ちにくいという点を考慮して間取りを考える必要があります。
また、生活音に配慮して防音対策にも気をつけたいものです。しかし、プライバシーを確保するために周囲を壁で囲ってしまっては室内の日当たりが余計悪くなってしまうため、日当たり、通風、プライバシーの確保すべてを満たすような間取りの工夫が必要です。

たとえば、隣家との間に目隠しを作りたい場合は、風通しの良い格子で区切ることも1つの方法です。目が細かく背の高い格子をつけることで外から中を覗くことができず、カーテンをつける必要もありません。また、周囲の家の窓や塀の高さを考慮して窓を配置すれば、窓を開けても外から覗かれずにすむでしょう。
東南や南向きの窓は日当たりがいいという理由だけで窓の位置を決めてしまうと、隣家と窓が向き合ってしまうというケースもあります。そのような状況だと、カーテンやブラインドを閉じたまま過ごすことになり、薄暗い室内で過ごさざるをえなくなります。

毎日のように行き来する通路部分は特に周囲の目が気になる箇所なので、幅に余裕があれば樹木を植えるなどしてプライバシーを確保することもおすすめします。その一方で、公道から奥まっている旗竿地は通行人の目に触れることがないため、ある意味プライバシーが確保できているともいえます。公道の車の音も聞こえず、静かに生活したいという人にはぴったりでしょう。

リビングと寝室を逆に配置

旗竿地のデメリットとして、1階部分の日当たりの悪さとプライバシー確保の難しさを挙げましたが、これは間取りを考慮することである程度解決することが可能です。一般的な住宅では出入りのしやすい1階にリビング、2階に寝室を作ることが多く見られますが、これを逆にすると旗竿地でも快適な住宅を作ることができます。

家族や人が集まるリビングはなるべく明るくしたいので、2階に持ってくることで日差しを取り入れやすくなるでしょう。一方、寝室は暗くて静かなほうが落ち着くため、1階に作っても問題はなさそうです。

さらに、寝室の窓を半透明にすることで、プライバシーの確保もしやすくなります

住みやすさは”間取り”の工夫次第

一般的な住宅と同様の間取りにすると住みづらく感じる旗竿地でも、間取りを工夫することで住みやすい住宅にすることは可能です。リビングを2階にして日差しを取り入れやすくする、寝室を1階に持ってくる、プライバシーの確保に気をつけるなどして、過ごしやすい住宅を造りましょう。素人ではわからないことも多いので、納得のいく間取りを提案してくれる住宅会社や建築士を探してみてはいかがでしょうか。

参考:【 HOPEs】 旗竿地の狭小住宅は快適に暮らせるのか?

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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