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「ワーケーション」という言葉を知っていますか? 2000年代にアメリカで生まれた、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語で、「リゾートテレワーク」とも呼ばれています。避暑地や自然に囲まれた環境のよい場所で、休暇を兼ねて仕事をすることで、当初は比較的自由に働く時間を設定できる職種で行われていました。しかし、最近では日本の大手企業でも導入し始め、働き方改革・休み方改革の新しい方法として注目を集めています。

今、なぜワーケーションが注目される?

ワーケーションが注目されるようになった背景には、休暇を取ってもオフィスに連絡を入れたり、自宅や休暇先からメールの返信をしている人が多く、労働者の休暇の質の低下が社会問題になっていることが挙げられます。また日本人の有給休暇の取得率は、調査した世界19ヶ国中最下位(エクスペディア・ジャパン調べ)で、忙しくて取れない人や「周りが休んでいないので休みづらい」「人に迷惑をかけられない」など、取りたくても休暇を取りづらいと感じる人が数多くいます。
そこで、休めない・休みづらいならば、仕事と休暇を合体させてしまえ、という思いきった発想が「ワーケーション」なのです。休暇中に何日か仕事をする日を設けることで、休暇の期間そのものを長くしようというものや、急を要する案件のみ対応し、通常の業務はしないなど、ルール決めをして休みやすくするなど、いくつかのパターンがあります。
今年6月には、日本屈指の避暑地として名高い軽井沢に、ワーケーション拠点としての設備を充実させた「ハナレ軽井沢」がオープン。NTTコミュニケーションズが運営に関わり、10人以上が利用できる広さの室内にビデオ会議ができる通信サービスや高速無線LANやホワイトボード、プロジェクターなどを完備しています。

北陸新幹線軽井沢駅より徒歩2分とアクセスがとても便利。アウトレットとは反対側に位置し、静かな環境にあります。ワンフロア100平方メートルの広さに加え、隣接の駐車場スペースが150平方メートルもあり、オープンテラスとしても活用できます
おしゃれで心地よい空間の室内。高速Wi-Fi、プロジェクター、モニター、有線放送600チャンネル、充電用コンセント多数など設備が充実。NTTコミュニケーションズが開発中のビデオコミュニケーションサイネージ「NoMado」を設置しており、体験することが可能です

なぜ軽井沢がワーケーションの拠点に選ばれるのか?

軽井沢がワーケーションの拠点に選ばれる理由について、軽井沢リゾートテレワーク協会副会長の鈴木幹一さんに伺いました。

「まず北陸新幹線で東京駅から62分というアクセスの良さが魅力です。130年に及ぶ避暑地の歴史を持つ軽井沢は、標高約1000メートルで7月から9月の平均気温は約20度ととても過ごしやすい気候です。こうした良好な環境に加えて、約1万6千棟にも及ぶ別荘、約350棟の企業や学校の保養所、セミナーハウスがあります。企業経営者、医者、大学教授などの別荘族といわれる人たちと、地元住民や移住者、観光客など多種多様な人たちが交わり、活発に人的ネットワークを構築しているところが魅力ですね。この“ハナレ軽井沢”もそういった出会いの場になればと思っています」

今後は、希望する企業には体験利用をしてもらい、2019年秋頃から有料(価格未定)でフロアごとの貸し出しもできるようになるそうです。

軽井沢リゾートテレワーク協会副会長の鈴木幹一さん。「ハナレ軽井沢」の総管理人兼リゾートテレワーク推進本部長も務めている。東京在住だったが、軽井沢に魅せられて、今では1年の8割を軽井沢で過ごしているのだとか

恵まれた自然環境以外にも、ワーケーションには多くのメリットがあるそうです。

「普段とは異なり、仕事以外の時間をリゾート地で自由に過ごせるので、働くことへのモチベーションの上昇や生産性の向上が期待できます。たとえば、満員電車に揺られて会社に出社し、いつもと同じ机に座りパソコンを見ても、いいアイデアはなかなか浮かびません。しかし、美しい自然に囲まれた場所で鳥のさえずりや、川の流れる音を聴きながら考えると、普段浮かばないようなアイデアが急にパッと浮かんだりするんです。もちろんデメリットとして、自宅とバケーション先の滞在費や交通費など、生活コストが多くかかることや対面コミュニケーションに比べて相手にこちらの思いが伝わりづらい不自由さもあります。
しかし、マンネリ化してしまった日常にメリハリがつきますし、早く仕事を終えて、リゾートライフを楽しみたいという欲求からおのずと仕事のパフォーマンスも向上するのです。また、仕事が終わってからの街中のレストランやバーなどでの人との出会いや情報交換などのアフターテレワークも魅力です。多様な人たちと交わることにより、イノベーションが誘発されやすくなるんです」(鈴木さん)

筆者もオープンテラスの席を、少しの間利用させてもらったが、軽井沢の気持ちの良い風を感じながらの仕事は、都内の事務所での作業と比べ思いのほかはかどり、ついつい長居してしまいました。

筆者が利用したオープンテラスの様子。BBQやイベントスペースとしても活用できます

人口減に悩む地方自治体や首都圏の渋滞緩和にも一役

ワーケーションを取り入れる企業が増えれば、「ハナレ軽井沢」のようにオフィスやコワーキングスペースを提供する企業が増え、その街が活性化するといいます。実際、長野県駒ケ根市のように、テレワークを推進する取り組みが実を結び、シャッター商店街のシャッターが上がり、飲食店がオープン。街のコミュニケーションスポットのようなスペースがいくつもでき、街全体に活気が戻ったという事例もあります。

また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、国内外から多数の観光客が都内を訪れることが予想されます。期間中の交通混雑緩和にもテレワークは役立つとみられ、「働き方改革」を進める政府も開幕日に当たる7月24日を「テレワーク・デイ」と定めて後押し。2018年には1,682団体、延べ30万人以上が実施し、実際に交通渋滞が緩和されました。

今回の取材で、働き方は時代とともに変化していくものだと実感。たとえば、昼休みはプールで泳ぎ、夜は家族とバーベキューなど、通勤時間の代わりにリゾートを満喫するなど、仕事の内容によって場所や時間が自由に選べる時代が来るー。そんなことを期待させてくれる「ワーケーション」という働き方に、日々の生活を豊かにしてくれる新たな可能性を感じました。

問い合わせ/ハナレ軽井沢 軽井沢リゾートテレワーク協会

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