住宅市場に押し寄せる2つの大波、「オリンピック」と「生産緑地問題」

2019年の消費増税後の日本の住宅市場には1年刻みで2つの大波がやってきます。

・2020年の東京オリンピック五輪の(あえて)閉会式

・2022年の生産緑地問題

ちなみに消費増税の影響はあまりなさそうです。政府は消費税の増税後の需要が落ち込んでしまわないように消費を刺激するような減税策や補助金を打ち出しています。

消費増税の後にやってくる2つのイベントが住宅市場に与える影響から、マイホームの買い時を考えてみましょう。

東京オリンピックの閉会式を境に地価は下がる

東京にオリンピックが来ることによる今の地価には上乗せがあり、閉会式になれば下がります

近年の首都圏の住宅価格の高騰、は東京オリンピックの誘致による経済効果が少なからず影響しています。海外(主に中国)投資家による投資目的の購入で、価格が高騰しているといわれていますが、建築コストの上昇によって価格を上げざるを得ない部分もあります。他国の例からオリンピックの誘致が決まったらそこから地価は上がっていき、オリンピックの閉会式を境として下がっていくというのがパターンだそうです。過去の開催国では選手村が廃墟になってしまった、などの問題が発生しています。

オリンピックの誘致によって世界中から観戦客が集まり経済が潤うのがA面だとすると、本来のキャパシティを超えた人数を招くための設備投資が、その後使い途がなくなりムダとなってしまうのがB面です。

さすがに晴海の選手村が廃墟になるようなことはないでしょう(既に住宅地として販売が開始されています)。ですがオリンピックによって今の東京のキャパを超えた人々が集まり、それを成功させるための投資をしますと、多かれ少なかれその反動が来てしまいます。

東京にオリンピックが来ることによる今の地価には上乗せがあり、閉会式になれば下がります。

首都圏の地価は地方に波及する

地方でオリンピックの会場にはならなくても地価には影響が出ています。ハウスメーカーやマンションデベロッパーの多くは東京だけでなく日本全国に展開しています。東京の地価が高くなると、地方で取引する場合も高くなる傾向があり、首都圏の地価は、物差し的な位置づけになることがあります。そして消費者(エンドユーザー)である私たちが購入する金額には、業者の仕入価格に利益を乗せたものになります。

つまり、地方にオリンピックが来るわけではないのに、東京の地価上昇が影響してくるということです。これは地価の下落についても同じで、首都圏の地価が下がれば地方でも下がる傾向があります。

世田谷には東京ドーム19個分の「生産緑地」が眠っている

2022年の生産緑地問題というものがあります。住宅街の中にポツンと農地として使用されている土地を見たことがあると思います。「広い家やマンションが建ちそうなのに、もったいないな…」と思いますよね、もしかしたらそれは「生産緑地」かもしれません。

生産緑地とは市街化区域の中に期限付きで残された農地です。市街化区域は市街化を推し進めることが原則ですが、かつて大都市でも古くから農業を続けたい人が数多く存在しましたし、社会的要請としても市街地に一定の緑地を保全することも求められました。そのため1991年4月に生産緑地法が改正され、農地を以下の2つに分けたのです。

・生産緑地…市街化区域内で保全する農地
・宅地化農地…原則どおり宅地化を進める農地

そして、生産緑地に指定された農地では固定資産税などが一般農地と同様にきわめて低い税額に抑えられるほか、相続税の納税猶予措置などが適用されました。税制面で優遇される代わりに生産緑地では30年間の農業を営む義務が課せられたのです。

生産緑地の大半は大都市圏で、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の6都府県で全体のおよそ8割を占めます。

国土交通省「都市計画現況調査(平成29年度)」をもとに作成

 最も広い面積があるのは関東で7,461.7haですが、これを東京ドーム(約4.7ha)に換算すると1,587個分に相当します。関東地方の生産緑地の約半分が東京都に集中しており、その主な内訳が下表のようになります。

国土交通省「都市計画現況調査(平成29年度)」をもとに作成

あの高級住宅街の世田谷区でも89.7ha、東京ドーム(4.7ha換算)にして19個分もの生産緑地があります。

区内でも駅からのアクセスが悪いところでは、値下がりが起きる可能性があります。そういう場所ほど生産緑地が多いという傾向があるからです。

約8割の生産緑地の営農義務の期限は2022年

改正生産緑地法が適用されたのは1992年度からで、現存する生産緑地の多くは初年度に指定を受けているため、2022年に営農義務が外れることになります。

農業しなくていい代わり固定資産税が高くなります。ならば売るなり、賃貸アパートを経営するなりしないと、収支が苦しくなりますよね。

「生産緑地の2022年問題」として生産緑地の大半が一気に供給されれば、需要が追いつかずに空き家が大量発生するかも?というリスクが不動産業界では常識となっています。

すでに生産緑地の売却は始まっている

「2022年問題」ということから、まだ少し先だなと思った方も多いかもしれません。しかし、もう2年後にそうなることがわかっているのですから地主の方はすでに動き始めています。
 
不動産業者では、数年前から生産緑地の所有者から土地を売りたいという相談が増えてきているそうです。金融機関でも生産緑地問題で地価が下がることを見越して審査基準を一部見直す動きが出てきています。

すでに決まっていることに対して、不動産を取り巻く各種業者がそれを前提として動き始めているのです。これから少しずつ実勢価格にも反映されてくるでしょう。

営業マンの「今でしょ!」に乗せられず良いと思った物件は逃さない

家を買うときは一種の興奮状態にありますので、頭が熱くなっている状態です。そして不動産屋の営業マンは常に「今が買い」だと言います。彼らは今売らないと、給料もボーナスも出ませんからね。

逆に待ち過ぎも良くありません。不動産に同じものは2つとありません。物件が市場に出てから売れるまでのサイクルは概ね3ヶ月です。

自分が良いなと思う物件は他の人にとっても魅力的なもの。価格が下がったとしても、そのときに自分が欲しいと思えるような物件が見つかるという保証はありません。

家を買うときに必要なものは十分な自己資金と冷静な判断です。家と住宅ローンの選択で判断を誤ることなく、素敵な人生を送りたいですね。

(最終更新日:2020.11.17)
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