自動車運転の常識は人によってさまざまです。しかし、ドライバー経験が長い人にとって以前、教習所で習った常識が、今では非常識になっているケースもあります。そこで、現代の車両基準を鑑みながら、今の時代に即した車両にまつわる常識と非常識をまとめてみました。

【ライト編】かつて教習所で習った常識が、今は非常識に?

皆さんはクルマで夜間走行する際、ヘッドライトはハイ/ローどちらが常識だと思いますか?

かつて教習所で通常はロービームと習い、ハイビームにすることはほとんどないという人、今やそれは非常識。基本は正面だけでなく、ずっと先まで、左右の路肩まで明るく照らすハイビーム。先行車や対向車(自転車も含みます)がいるときはロービームに切り替えることが、道路交通法第52条第2項で定められています。

これまでロービームを基本と考えていた大半の人にとっては、まさにそれまでの常識を転換する必要に迫られたというわけです。最近はクルマが周囲の状況に応じて、ハイ/ロービームを自動的に切り替えてくれる機能も登場。中には先行車や対向車がいる時はその部分だけを遮光するアダプティブ・ハイビーム・ヘッドライトを搭載するクルマが登場しました。今後はこうしたクルマが増えていくのは間違いありません。

軽自動車で初めてアダプティブ・ハイビーム・ヘッドライトを採用したダイハツ「タント」。左が通常のハイビーム時、右が動作時
アダプティブ・ハイビーム・ヘッドランプは、ハイビームのままで先行車や対向車の部分だけを遮光して眩惑を防止します

ヘッドライトにまつわる常識をもう1つ。あなたはヘッドライトを点灯するのはどのタイミングだと考えていますか?

「ヘッドライトで照らさないと路面が見えなくなったとき」と答えた人も多いでしょう。確かに以前はそれが常識でしたが、今は非常識。

現在は「太陽が傾いて少し薄暗くなったと思ったら早めに点灯する」ことが常識です。JAFでは日没30分前の点灯を勧めています。実は、ヘッドライトは暗いところを照らす役割を持っていますが、同時に自分の存在を周囲に知らせる役割も果たしているのです。特に高齢者は動体視力が弱くなり、少し明るさが落ちただけでもクルマを発見することが遅くなりがちです。ライトを点灯させることで少しでも自車の存在を知らせることが大切なのです。その意味ではスモールライトの点灯はほとんど意味がありません。今の常識は、スモールライトをOFF→ヘッドライトONにするのが正しいヘッドライトの点灯の仕方です。

【ハンドル編】握り位置は10時10分ではない?

ハンドルを握る時、手はどの位置に置くことが正しいのでしょうか? 的確なハンドル操作をするためには正しい位置でハンドルを握ることが重要になります。直進時にふらつかないよう走るのはもちろんですが、障害物回避や思った以上にカーブがきつい時など不測の事態にも対処しなくてはなりません。

 “10時10分”で持つことが常識という人もいるでしょう。しかし、この位置に手を置くと脇が開いてしまい、しっかりとハンドルをホールドできなくなります。長時間運転ではこれが疲労につながる可能性もあります。

今の常識は“9時15分”。脇も締めやすくなり、両手でハンドルを握ったまま大きく切ることができるのでとっさのときの操作にも対応しやすくなります。また、最近のクルマは大半が“T字型”スポークを持つことが多く、親指がかけやすくなっているので疲れにくいというメリットもあります。

これにより、正しいドライビングポジションも決まります。運転席に座ったらハンドルを9時15分の位置で軽く握り、親指を内側に添えます。このとき、肩に力が入らないようにし、楽にハンドルを回すことができるようにシートの角度や位置を決定してください。手のひらでハンドルを軽く前方に押し出すように持つのがコツです。こうすることで肘は軽く自然に曲がる程度に収まります。シートを倒して片手だけが届くようなスタイルはもちろん、左右がストレートアームになるのも×です。

ハンドルを握る位置は“9時15分”。T字型スポークの左右を軽く握るようにします

【お手入れ編】クルマの汚れは時に安全を脅かす?

クルマの汚れも要注意です。最近、クルマが汚れていると事故を起こしやすくなるという研究結果が出て注目されました。「そんなバカな…」そう思う人も多いでしょう。教習所でも洗車など教えられませんでしたからね。でも冷静になって考えると「なるほど~」と思うことが少なくないのです。

一番影響しそうなのが窓ガラスの汚れです。あるトップレーサーが、安全運転の講習会で、真っ先に伝えるのは、窓ガラスは常にキレイにしておくこと、です。

窓の汚れはワイパーを使えば十分と考える人は多いでしょう。しかし、ワイパーはフロンドガラスしか拭いてくれませんし、それもガラス全面をカバーしているわけではありません。ドライバーは周囲の状況を把握しながら運転しますが、汚れは夕陽や対向車のライトを滲ませて見せることもあり、油膜が付着していれば雨天時の運転にも影響を及ぼしかねません。汚れ方次第では死角ともなり、これらが事故を誘発する可能性すらあるのです。ガラスは外部の情報を直視できる貴重なエリアです。撥水処理をしておけば、水飛沫を大量にかけられたときも早めに水がはけて視界を守ってくれます。視界をクリアに保つための常識として、ガラスは可能な限りキレイにしておきたいですね。

ではボディの汚れはどうでしょうか? ヘッドライトの汚れが前方を暗くしてしまうことがあるにせよ、ガラスに比べれば直接事故につながる可能性は低いと思います。しかし、クルマをキレイにしておくことはそれだけ気遣いをしていることでもあり、そういう人は運転もおのずと慎重になります。逆にクルマの手入れが悪ければ、運転が粗雑になる傾向も高くなるようです。また、クルマの手入れをすることで車両に起きている異常を早めに察知することにもつながり、これを起因とした不慮の事故も防止できるのです。

【エンジン編】AT車でも暖機運転が必要?

冬期のエンジン始動で行うべきか悩むのが暖機運転です。これは機械への負荷を軽減するために一定時間、エンジンをかけて暖めておく作業のことです。以前はエンジンが冷えたままで走るとノッキングが起きたり、ひどい時はアクセルを踏んでもガクガクとした動きになってしまうことがありました。これは機械が適正な温度に暖まることで正常に動作するよう設計されていたからで、MT車/AT車を問わず暖機運転をするのは常識でした。

それが今では制御が電子化されたことで冷えた状態であっても燃料の噴射量は最適化され、その必要性はほとんどなくなりました。とはいえ、エンジン始動時はエンジンが冷えているだけでなく、オイルも下に落ちたままであるのは確かです。それらが安定するまで軽く暖機するのはいいでしょう。目安としてはエンジンをかけ、ミラーやシートポジションを合わせるのに要する時間程度で十分です。その上で幹線道路に出るまではゆっくりとアクセルを踏み、冷え切っている駆動系に急激な負荷をかけないように走ることがお勧めです。

【交差点の行動編】二次被害までを考慮する

最後に交差点で安全に右折する常識について。右折は運転の中でも安全確認が多く見極めが難しいシーンの1つです。右折で守るべきは焦らないで確実に曲がれるタイミングを把握することです。そのためには、右折時は交差点に近づく際、ウインカーを出して周囲に右折を知らせることから始めます。ブレーキを踏んでからウインカーを出したのでは周囲は気づくのが遅れ、場合によってはそれが追突の原因ともなりかねないからです。決して「追突したほうが悪い!」とは思わず、未然に事故を防止することを考えて実行してください。

そして交差点に近づいたらセンターラインに寄せてラインに並行にクルマを停めます。斜めに停めると後続車の通行を妨害することになりますし、万が一追突されれば対向車線に飛び出す危険性もありますからね。交差点では中央まで進み、そこで対向車や歩行者の存在を確かめてから右折します。教習所では教えてくれなかったこうした二次被害までを考慮するのが経験を積んだドライバーの術なのです。

そして、右折時は対向車の動きをしっかりと把握してから曲がりましょう。信号が変わったので「止まるだろう」と勝手に思い込んではいけません。対向車のドライバーや歩行者の考えていることはつかめませんから、常に最悪の状況を想定して安全運転を心掛けることが大切なのです。

先を急いで交差点をショートカットして右折することもやめましょう。交差点の手前からショートカットすると右折した先の道路状況が見えませんし、歩道の状況も把握しにくいままで右折することになります。これは大変危険です。また、複数車線がある道路では対向車の陰に隠れて見えない2輪車の存在にも気をつけましょう。

交差点に近づいたら早めにウインカーを出し、右折の待機時はセンターラインに沿って並行に停止。対向車や歩行者の存在に気を付けて右折します
(最終更新日:2019.10.05)
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