【地元愛】すでに南越谷のソウル。35回開催を誇る南越谷阿波踊りを見ずにはいられない

あなたのお国自慢は何ですか? 絶好の景色? 整備されたインフラ? おいしい特産物の多さ? 地域の魅力を引き立てる要素はさまざま。時には王道、そして時には意外なものもあるでしょう。それでも地域に根差し、歴史を持った文化は、多くの人を魅了するはずです。そんな地元愛に満ちた自慢のカルチャーにスポットを当ててみました。第1回は、南越谷阿波踊り! 同じ阿呆なら?

南越谷の阿波踊りが日本三大阿波踊りに成長するまで

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損〜」

日本人であれば必ず耳にしたことがある、阿波踊りのリズミカルなお囃子とユニークな歌詞。発祥は阿波国、徳島県ですが、徳島県以外でも様々なエリアでも親しまれています。

埼玉県越谷市もそんな地域の1つ。JRの南越谷駅、東武線の新越谷駅を降り立つと、駅前に設置されている阿波踊りの銅像が視界に入ります。南越谷では毎年8月、阿波踊りが開催され、今では開催する3日間に延べ約75万人が押し寄せ、本場徳島市や東京の高円寺と並ぶ、日本三大阿波踊りの1つです。その歴史を紐解いてみました。

南越谷駅のロータリーにある銅像。すっかりこの地に馴染んでいます

南越谷で阿波踊りがはじめて開かれたのは1985年のこと。それは南越谷に本社を置く、住宅メーカー ポラスグループが地元に提案・支援するイベントだったのです。

ポラスは埼玉県・千葉県・東京都を中心に展開する住宅メーカー。同社は単に住宅を建てるだけではなく、広い敷地に、IoTや和など、統一したコンセプトの住宅を数十棟建てるなど街づくりや企画力も注目されています。

そのポラスがなぜ南越谷に阿波踊りを?

ポラスグループ本社前に設置されている記念碑。南越谷阿波踊りの由来をうかがい知ることができます

「越谷を愛して欲しい」ポラス創業者の思い

ポラスグループコミュニケーション部広報課係長・青柳孝二さんによれば、そもそも創業者、故中内俊三さんが徳島県出身であったことから、南越谷で本格的な阿波踊りを開催したいという思いがあったといいます。

当時から越谷周辺は都心からアクセスも良く、都心のベッドタウンとして人口は増えつつありました。しかしそれだけに市民の地元に対する愛着が薄い傾向にあったといいます。そこでこの越谷をふるさととして誇りを持ってもらいたい、という思いからイベントが企画されました。

また、この地に根を下ろす住宅メーカーとして地元への恩返しであることも挙げました。

「私たちは越谷を核に、住宅を建ててきました。建築現場では工事車両が多数出入りしますし、日中から騒音も響きます。家の建築はその周辺にお住まいの方々に心ならずともご不便や不快な思いもさせてしまうもの。このような状況でも仕事をさせていただいている地元の皆さんへの感謝の意味を込め、祭事などを開催したいと考えていました。当初は盆踊りを複数ヶ所で開催していましたが、中内はこれらをまとめて、より大きなイベントをと考え、郷里の阿波踊りを提案しました」(青柳さん)

ポラスグループの創業者、中内俊三さんも自ら阿波踊りに参加しました(ポラス提供)

「一企業のイベント…」 逆風が吹き荒れる中の交渉

当初は駅前の目抜き通りで実施する計画でした。地元の警察署に相談したものの、思い通りには進まなかったといいます。阿波踊りは踊りながら練り歩くので道路を一時的に封鎖することになります。

そのことに対し「一企業が提唱するイベントにメイン通りを封鎖して使わせるわけにはいかない」ということでした。しかし中内さんは何度も自治体や警察署に足を運び、丁寧に説明を繰り返しました。ようやく許可が下りた時には構想から実に3年の歳月が流れていました。

開催にあたって、会場となる通りには単管パイプなどに照明などが設置されます。

「建築現場で足場を組む要領で作業はできましたが、運営するにあたってはで安全対策に徹底的に配慮しました。イベント中に万が一事故が起きてしまっては、存続することができなくなってしまいますから」(青柳さん)

また、本場徳島の協力も仰ぎ、連(踊り・鳴り物のグループ)を招待することはもちろん、ポラスグループも有志による連を結成したそうです。

「開催当初は踊りもバラバラ。きれいな踊りとはいえませんでしたが、練習を重ね、技術も上がり、人数も増えました。社員同士の団結力も上がりました」(青柳さん)

ポラスグループ内にも複数の連が存在します。写真はだるまっ子連(ポラス提供)

100万人の観客、100連の参加まで踊り続ける

そして、時代が令和に変わった今年も8月23日(金)から25日(日)まで開催されます。通算35回目の南越谷阿波踊りです。第1回は約3万人だった観客数は現在75万人を超え、参加連は77にものぼり、夏の風物詩に成長しました。会場はポラスグループ本社前までのメイン通りはもちろん、他の通りにも拡散。そのほか越谷コミュニティセンターのホールでも舞台踊りが開催されます。

「おかげさまですっかり地元のイベントになりました。これこそ私たちが望んでいたスタイル。もちろん、来年以降も継続していきます。創業者は100万人の観客、100連の参加を目標にしていました。その思いは今私たちが継いでいます」(青柳さん)

もう、踊らなきゃ、損です!

ポラスグループコミュニケーション部広報課係長・青柳孝二さん。「以前は私も連に参加していました。この季節になると、心も躍りますね」

取材協力:ポラスグループ

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア