こんな風に販売されています「日本の生活雑貨 in London」

「楽しみながら生活を豊かに」をコンセプトのウェブマガジン『REISM STYLE』から、海外に暮らすレポーターによる、現地の家事情やインテリアトレンド・日々のくらしをご紹介いたします。今回は、「日本の食器や雑貨がロンドンでどのように販売されているか?」についてご紹介します。

日本の生活雑貨はロンドンでも買えるの?

ロンドンに来たばかりの10数年前、初めて入居したフラットにはお皿やグラス、カトラリー等、食器が一通り揃っていました。なのでしばらくは不自由なく暮らしていたのですが、少しずつイギリスと日本の食器の違い、つまりは食生活の違いに気づき始めました。

日本人の私が自炊しながらロンドンでも「なんちゃって和食」的食生活をするには足りないものが出てきたからです。

なぜかその家にはお箸だけはたくさんありました(たぶんテイクアウト専門の中華料理店がサービスでくれるプラスチック製のお箸を捨てずにたくさん取ってあったのです)。しかし「困るというほどではないけれど、『あったら便利』なものでないものは結構あるなあ」と感じるようになったのです。例えば、

*シリアルやスープ用にちょうど良いサイズのボウルやサラダ用の大きなボウルはあるのに、ラーメンやうどんにちょうど良いサイズのボウル(どんぶり)がない。

*ご飯茶碗的サイズの深皿もない(ので、ご飯はこんもりと平皿に盛る)。

*醤油皿のような小皿がなく、1番小さなお皿がケーキ皿。

*調理器具では、菜箸、大根おろし(チーズおろしで代用)がない、

等々です。

こちらは平皿が基本の「プレート文化」なんだと実感した経験でした。加え、日本の食生活には丸いカーブがついた大小ざまざまな茶碗やどんぶり、そして小皿が欠かせないことに改めて気づきました。

当時から醤油はキッコーマン製のものが普通にスーパーマーケットで販売していましたし、日本食材店や中華街で食材はある程度不自由なく揃いました。インスタントラーメンや乾麺タイプのそばやうどんは値段も安かったのでよく食べていたのですが、どんぶりがないのでお鍋からスープボウルにちょっとずつ移して食べたりしていました(お鍋に入ったままなので冷めなくて良かったんですが 笑)。

イギリスに普通にあるもので代用する工夫や、ヴィンテージ・マーケットやカーブーツ・セール(自宅の不用品を車のトランク(=カーブーツ)にいれて持ち寄り、販売する、フリーマーケット)を巡っては使えそうなものを集めるもの楽しく、また一時帰国の際に必需品を日本で買ってはイギリスに持ち帰っていたので特に不便なことはなかったのですが、それでも当時からロンドンに進出していた「無印良品」には時々行って、便利なものを買うこともありました。

イギリスに進出して28年の「無印良品」

イギリスに無印良品は進出したのは1991年だそうですが、現在イギリスに11店舗、内8店舗がロンドンにあります。実は外観も内観も日本とそんなに変わりません。私がロンドンに暮らし始めたときにはすでに人気は定着しており、世代にもよるかもしれませんが「(割と)皆が知っているお店」になっていました。

MUJI Kensington店。こちらは比較的小さめの店舗です。もっと大きなお店もあります。

基本日本と同じ商品を販売しているのですが、商品表示も日本語のままです。イギリス人にはそれも含めて珍しく、ノートや詰め替え用ボトル類は商品ラベルを貼ったままで使用している人も見たことがあります。それも含めて「デザイン」として受け入れられているのだと思います。シンプルで機能的なデザインはイギリスでも人気です。

以前は日本円の値段がもっと分かりやすく貼ってありました。現在は様々な通貨の値段が表記されています。右の600mlの詰め替え用ボトル、日本円で税込み290円の商品ですがイギリスでは4.50ポンド(約650円)。現在円高(1ポンド約145円)なのですが、それでもポンドではかなり高くなってしまいます。

無印はロンドン中心部の立地の良い場所に多いので、私もよく立ち寄っています。しかしポンドの値段を日本円換算すると、日本の定価の倍以上してしまう商品が多いので(輸入なのですから当たり前なんですが)、ほしいなあと思ってもなかなか手が出ません。「どうしても無印でないと買えない」「今すぐほしい。日本帰国まで待てない」と思うもの以外は、「日本に帰ったら買おう」と思っては諦めることが多いです。

でも無印があるおかげで「ここに来れば、必要なものが揃う」「しかもデザインも良い」という安心感は本当にありがたいです。

セールでレトルトカレーが1ポンド(約145円)で販売されていました。

ロンドン在住&デザイン界隈に興味がある人に無印のファンは本当に多く、知らない人はたぶんいません。日本的ミニマルデザインのファンを増やしたのは、無印良品の貢献度が高いと思います。

「今」の日本スタイルを感じられる「Japan House」

無印もある意味「日本らしさ」なのですが、もうすこし「和」のイメージのものを探しているとき、また「日本のものを買いたいけれどどこに行ったらいい?」と日本人以外の人に聞かれたとき、以前はどこに行ったらいいのか迷うことがありました。

分かりやすい和柄が好まれる場合もあるのですが、「それが代表的な日本のデザイン?」かというとそうとも言えないときもあり、もう少しハイセンスなものを紹介したいことも多いからです。インテリアショップやミュージアムショップ等に和のテイストの雑貨を見かけることはあるものの、お店の雰囲気も含めて「おしゃれな日本っぽさ」を見せられるような場所が数年前まであまりありませんでした。

しかしこの部分も、近年素敵なショップが増えてきてすっかり解決しました。嬉しい限りです。今、「日本のものを買いたいけれど」という質問をされたときに、私がおすすめするお店が2つあります。

まず1つは外務省による日本発信事業の海外拠点として、昨年ロンドンにオープンした「Japan House」です。ショッピング街High Street Kensington駅の近くという大変よい立地にあります。エキシビションスペースやレストランも併設し、1階部分が広いショップになっています。

広い店内、開放感があります。
入り口を入るとすぐにあるのがカフェカウンター。美味しい抹茶ラテや和菓子を購入&イートインできます。

商品のセレクションにイギリス人目線も入っているからなのか、日本人が「売りたいもの&見せたいもの」だけでなく、外国人目線の「こういうものがほしい&見たい」が分かりやすく、手に届く形で陳列されている、という印象です。日本の様々な地方の民芸品から食品、身近な文房具まで、「日本のショーケース」的立ち位置のセレクトショップです。

飛騨高山の家具を特集していました。フィーチャーする商品は入れ替わっています。

陶磁器もさまざまな形が豊富に販売されています。

映像を使い、使い方を分かりやすく説明しているのも面白く、長い時間をかけて店内を丁寧に見ている人がたくさんいました。

日本製の天然素材で作った雑貨たち

最近イギリスでは天然素材をつかった生活雑貨、具体的にはカゴ(バスケットやざる)やバッグ、ほうき(箒)や刷毛といったものをよく見かけます。例えばこちら↓の写真はたまたま街でみかけた小さなDIY道具店なのですが、日本のほうきや布団叩きとそっくりなものを売っています。この手のほうき、最近よくロンドンで見かけます。

シンプルで美しいデザインのほうき。日本のものかな?と思うのですが、アメリカのシェーカースタイルがお手本になっているそうです。

こうしたトレンドも抑え、Japan Houseでも日本製のミニ箒やカゴ、まげわっぱ等、多種類販売されています。手に取る人も多く、人気の高さが伺えます。

ミニほうき。手前のほうきは46.60ポンド(約6,700円)。奥の2つはさらに高額でした。作り手の労力と品質、そして輸入品であることを考えると仕方がない値段なのかもしれません。
まげわっぱは説明しないと「お弁当箱」だと分からない場合もあるようです。「美しい箱」として別の用途で使っている人も多そうです。

書籍も販売しているのですが、イギリス人にも人気の村上春樹の「騎士団殺し」、日本版、イギリス版を並べ、装丁を比較しているのも面白いですね。

ショップ内のディスプレーコーナーと地下の展示室でエキシビション「かさねの森 染司よしおか」が開催されていました。
広い店内に椅子やテーブルが並び、自由に座って飲食できます。ネットもあるので、近隣の人たちのくつろぎスペースにもなっています。こちら、親子が休憩しながら持参したランチを食べていました。

洗練されたディスプレーも素敵「Native & Co」

もう1つのお店は、映画の舞台としても知られるノッティングヒル地区にある、日本と台湾のライフスタイル雑貨をメインに扱うお店「Native & Co」です。

統一感のある商品のセレクションとディスプレーが素敵です。現在は店内中央のテーブルには木工関係の食器を、両側の壁の棚に陶磁器を中心にディスプレーしていました。

 
藍色が美しい有田焼の小皿。オリーブなどの小さなおつまみを盛るために使う人が多いそうです。

このお店にもほうきやカゴが美しく展示されていました。ショーウィンドーで何人もの人が足を止めているのも印象的です。

たわしも美しくディスプレー。イギリスに日本と同じようなたわしはないのですが、実は我が家に来たイギリス人にもたわしを見て「これ、使いやすそうだし、デザインもいいね」と言われたことがあります。

日本と台湾の工房や作り手を訪ね、現代の生活に生きる作品をセレクトして販売しています。陶磁器がもっとも人気のカテゴリーですが、お風呂用のひのき椅子も人気とのこと。また自宅用だけでなく、プレゼント用に商品を購入する人が多いそうです。

 

店主のクリスさん。お母様が日本人だそうです。
ひのき椅子(左上)。高いところに届かないときに使うステップに使えそうです。私もほしい…。鉄製のポットはイギリスでも人気です。

さまざまな商品を置いているのに統一感があり、ディスプレーのセンスもとても勉強になる素敵なお店です。

イギリスで和食器をどう使う?

以前イギリスで活躍する陶芸家に話をインタビューしたとき「イギリスのテーブルウェアは平皿がメインなので、日本的小皿や茶碗を作ってもあまり売れない」「もっとも売れるのは大皿とマグカップ」という話を聞いたことがあります。

実際イギリスのインテリアショップやテーブルウェアショップに行くと、日本的なサイズの小皿や茶碗はあまりありません。とはいえ、日本食器を売るお店では、小皿やお茶碗も人気です。上記にご紹介したお店では、さまざまな日本食器を販売しています。

大きめの平皿がイギリスの食生活で使用されるメインのテーブルウェアであることは変わりません。しかし食生活がより多様化し、新しい用途が生まれているのだと思います。例えば和風の小皿はオリーブ入れに、ご飯茶碗はフムス(中東風のディップ)等に使うとサイズ的にぴったりです。またアクセサリー入れにしたり、インテリアアイテムとして使用する人も多いようです。

イギリスはクリスマスや誕生日等、プレゼント文化を大切にしている国です。和食器はプレゼントとして1点、2点と小さな単位で買われることも多く、そうした意味で需要があります。

私も和食器をプレゼントによく使いますが、あまりなじみのない形のときは用途や使い方を伝えると良いようです。また外国人の目で見ると異なる用途も生まれるのも面白いなと思います。我が家にあった細い筒形の湯呑を見て「これって花瓶? 丈の短い草花を指す花瓶を探していたの」と言われたことがあります。湯呑だと伝えたら驚いていましたが、なるほど、そんな使い方も楽しいですね。

【記事内で紹介したお店】
Japan House
101-111 Kensington High Street,
London W8 5SA
https://www.japanhouselondon.uk

Native & Co
116 Kensington Park Road
London W11 2PW
https://www.nativeandco.com

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

(この記事はREISM株式会社が運営するREISM Styleからの転載です)

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア