革製品修繕のカリスマ直伝! 自宅にあるモノでできるレザーの簡単ケア法

みなさんは革製品をいくつ持っていますか? 革製品は財布やバッグなどからジャケットや靴、ソファなどにも使われています。高級感があり、経年とともに色や手触りに変化があるのも味わい深いと、ファンも多いことでしょう。しかし、その大切な革製品、お手入れはしていますか? 特に梅雨の時期はカビが生えやすく、大切な革製品を台無しにしてしまうことも…。そこで、少し傷んだ革製品を見違えるように生まれ変わらせる、自宅でできる簡単お手入れ法をカリスマ職人に伝授してもらいました。百聞は一見にしかず。ぜひ一度お試しあれ!

革は人間の肌と同じように日常のケアが必要

今回の皮製品のお手入れ法を教えてもらいに訪れた「美靴工房」。二子玉川駅から徒歩8分ほどの場所にあります

「みなさんは毎日手や顔を洗い、クリームなどでお手入れをしますよね。それは肌を守るため。革製品も同じこと。革製品を美しく保つために、こまめなお手入れは必要です」。そう話してくれたのは総合皮革製品洗浄修復研究所「美靴工房」のテクニカルディレクター・保科美幸さん。

二子玉川「美靴工房」は靴やバッグなどの革製品を「クレンジング(洗浄)」「カラーリング(色補修)」「リペア(修理)」する専門店。保科さんはイタリアで革製品の補修の技を修業し、高い技術を習得した後、日本で活躍しています。どんな皮製品もオリジナルに忠実であり、愛情を持って修繕するハイレベルな仕事ぶりが広く知れ渡り、日本全国から依頼が舞い込むカリスマ職人なのです。今回は保科さんに自宅でできる革製品の簡単お手入れ法をテーマに、指南役をお願いしました。

保科さんによれば、お気に入りの革製品を長くよい状態で使い続けるためには、自宅での日常のケアがカギ。逆に、自宅ケアをしないと、カビが生えたり、変形したり、色落ちが生じたりと、トラブルが相次ぐとのこと。破損や穴あき、大きなシミなど、あまりに大きなトラブルはプロにお任せしたほうがベターですが、多少のトラブルならこれから紹介する自宅ケアで挽回できる可能もあります。さっそく教えてもらいましょう。

「美靴工房」テクニカルディレクター・保科美幸さん

家庭内での革製品の保管方法

お手入れ法の前に、革製品を扱う上でのさまざまな注意事項を教えてもらいました。

「高温多湿の日本では、革製品を生かすも殺すも保存方法次第。革製品の大敵は湿気です。カビさせないためには、靴箱やクローゼットの扉を閉めっぱなしにしないこと。換気は必須です。さらに、靴やバッグの隣に乾燥剤を置くと効果倍増。乾燥剤の代わりにトイレットペーパーを置くのもよいでしょう。これらは、湿気を吸ってくれるからです。また、皮革製品を購入したときに入っていた箱や袋に入れたまま保管する人がいますが、これは絶対にNG。革が湿気を吸ってカビが生えるばかりか、内張の生地がベタついて使えなくなることもあります。

保管の際、バッグは立てるか吊り下げます。横倒しでの保管は、変形の原因になるので、なるべく避けましょう。吊り下げる場合、持ち手の部分が変形しないよう厚紙を当てるなどの工夫が必要です。

靴やバッグを使った後は、靴ブラシやストッキングで汚れを落としてからしまいます。この際、タオルは使いません。こすった際に、タオルの繊維の跡がつくこともあるからです。より繊維の細かいストッキングがオススメです。

雨の日も、正しいケア方法ならば、怖くありません。雨で濡れた革製品は、速やかにタオルを押し付けるようにして水滴をふき取ります。こすってはいけません! さらに、新聞紙などを詰めて、数時間ごとに交換し、ゆっくりと乾かします。おおよそ乾いてきたら、半乾き状態でハンドクリームなどの保湿クリームを塗って乾燥を防ぎます。この際、最もやってはいけないことは、ドライヤーによる急速乾燥です。縮みや変形の原因となります」

大きなトラブルは専門家に相談しよう

気を付けていたつもりでも、カビが生えてしまった、うっかりワインをこぼしてしまった、雨染みがくっきりと出てしまった、などの革トラブル。判断に迷った時は、迷わずプロに相談しましょう。

「カビもふき取って取れるものなら自分でケアできますが、カビ菌が革の繊維に絡みついて取れない場合はプロに任せたほうが安心です。食べこぼしのシミや経年劣化による色落ちなども同様です。色補修は高度な技術が必要な作業であるため、プロに依頼しましょう」

そもそも、革製品のトラブルを招かないためには、新品の状態でのケアをおすすめすると保科さんは言います。新品の靴やバッグも、出荷されてから売れるまでは何もケアされていません。多くの革製品は、その間に乾燥気味になっているのです。だからこそ、買ったらすぐにハンドクリームを塗って乾燥を防ぎましょう。

自宅ケアで必要なのはコットン、ハンドクリーム、ストッキング、薄めた中性洗剤のみ

自宅でできるお手入れに必要なものはこの4点

実際に、具体的なお手入れ方法を保科さんに実践してもらいました。まず、自宅ケアに必要な道具は、コットン、ハンドクリーム、ストッキングと薄めた中性洗剤の4点のみ。

「革が変形したり変色したりというトラブルの元は乾燥です。だから、汚れを取り除いた後に保湿をしてあげましょう」

【自宅でできる革製品のお手入れ方法】
1、中性洗剤をわずかに泡立つ程度まで薄め、コットンに染み込ませ、しっかりと絞る
2、お手入れしたい皮製品の外から見えない部分を試しにこすり、変色などしないか確認
3、問題がなければ全体をコットンで優しくなでて、汚れを落とす。この時、こすらずなでるように。コットンでは届かない細かい隙間部分には、綿棒を使う
4、湿らせた状態の革製品にハンドクリームを素手で塗り込む(ハンドクリームも事前に色落ちなどしないか確認を)。手の温度が伝わり、クリームが革になじみやすくなる。使用するハンドクリームは、伸ばした際に白くならないものを選ぶ。化粧用の乳液でも代用可
5、クリームを伸ばしたら、ストッキングでさらにクリームをなじませて完了

この自宅ケアを月1回程度行うことで、長い間美しい状態の革製品を使うことができるのです。

編集N持参の革バッグの健康状態は「末期的!?」

編集Nが15年間愛用してきた革のバッグの健康状態は末期的

今回美靴工房を訪問するということで、編集Nは15年間愛用してきた革バッグを持参。保科さんに鑑定してもらいました。

恐る恐る健康状態を尋ねると、「これは末期症状ですね」とバッサリ(ある程度予測していましたが…)。

本来の色はブラウンでしたが、15年の年月を経て、持ち手の部分は手垢でほぼ黒色。逆にポケットの上部は白っぽく変色しています。型崩れも味があると言えなくはないけれど…。

ちょっとショッキングな顔を見せたNに「でも、このような経年劣化は、革製品の味でもあります。もちろん、お手入れをすることで見違えるようになりますよ」と保科さん。

さっそくケアを実践していただきました。

コットンで汚れを落とした後、ハンドクリームを素手で塗り、染み込ませるー。保科さんは想像以上に力を込めていました
ポケットの部分の細かい隙間にも指先を使って丁寧にクリームを塗りこんでいきます
塗った後はストッキングで整えます
左側のポケットがビフォー、右側がアフター。ハンドクリームを塗り込んで保湿しただけで本来の色が蘇ってきた(嬉)

お手入れの作業中、保科さんはこのバッグの鑑定もしてくれました。

「革は厚手で内張りのない一枚革。15年の経年劣化もいい味となり、今からでも自宅ケアを続ければまだまだ使えますね」(保科さん)

ただ、経年劣化をプラスに捉えられるのはメンズものの特性。レディースものは、時には変色が命取り。そうなる前に、ぜひ自宅ケアで美しい状態を保つようにしましょう。

【店舗情報】
二子玉川 美靴工房
東京都世田谷区玉川3-21-8 1階
TEL 03-5491-4103

※本記事で紹介した革製品のお手入れ方法は、専門家監修のもと紹介していますが、自宅ケアを行う際には変色・色落ちなどが起こらないか、事前に十分確認の上、自己責任にて行ってください

(最終更新日:2019.10.05)
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