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家の購入を検討する際、「4人家族だから“3LDK”を」と考える人が多いようです。しかし、人数分の部屋数を備えることが住まいにとって最適であると本当に言えるのでしょうか? 多くの人にとって一生に一度きりの最も高価な買い物となる“マイホーム”。後で後悔しないために気を付けるべきポイントについて、建築事務所『ちえのわ工房』の今中大介さんに伺いました。

2LDKでも十分!?

“3LDK”を希望する4人家族のほとんどは、そのうちの2部屋を子ども部屋に想定しています。しかもその多くが6畳を選択! しかし実際のところ、子どもが成長し独立した家庭では、かつての子ども部屋が“物置”になっているケースも多いんです。 なぜなら子ども部屋が必要とされる年数はものすごく短いから。小学校入学から高校卒業までのわずか12年ほどで役目を終える部屋…。もしそれを1部屋にした場合、予算とスぺ―スにどれほどの余裕が生まれるか考えてみたことはありますか?

仮に10畳分のスペースがあったとします。2部屋取ろうとすると、当然それぞれの部屋は小さくなりますので、なかには使い勝手が悪いと感じる人もいるでしょう。逆に、10畳1部屋にすれば、ドアや壁などの建具や建材が1部屋分で済み、それだけでもかなりの予算削減に繋がります。

子どもが小さいうちは広いまま共有し、成長に合わせて本棚や収納で間仕切りすることで簡単に2部屋として使用できます。また、設計段階から将来どのように間仕切りするかをしっかり念頭に置いておくことで、より個室感のあるスペースを創り出すことも可能です。しかも、子どもたちが巣立った後は、多目的に使える広いスペース残るというメリットが。どうですか、子ども部屋は2部屋必要だという気持ちが揺らいできませんか?

1LDKでも間取り次第なら!

先ほど子ども部屋の工夫でお話した、一つの空間を間仕切りして使う方法を、専門用語で「ゾーニング法」といいます。これをさらに追及すれば、“1LDK”に家族で暮らす家造りも夢ではないんです。ここで目を向けたいのが、横方向のスペース“広がり”に加えて縦のスペース“空間”です。

リビングのコーナーに設えた小あがりの畳スペース。冬はこたつを置いてくつろげる、とっておきな場所に

例えばこちらは、段差を設けて小あがりの畳スペースを確保。段差をつけることで視線が縦方向に伸び、実際にはリビングのワンコーナーに過ぎないのですが、“和室”としての十分な存在感があります。畳の下の段差部分が収納スペースになっているためかなりの実用性も兼ね備えています。これなら家庭訪問やめったに来ない来客のための独立した和室は必要なくなるのではないでしょうか。

キッチンから眺めたリビング。ステップはイス使いもできて便利

また「スキップフロア」を取り入れるのも有効です。一つの部屋にステップを設けて空間を区切る工法で、ロフトと同様にワンルームでありながら寝室や収納、子どもの勉強スペースなどと必要に応じて使い分けることができます。住まいのバリアフリー化も大切ですが、敢えて家の中に段差を取り入れることで自然に足腰が鍛えられるかも? そして何より秘密基地っぽいところにワクワクしますよね。

“無理矢理作った3LDK”は厳しい! 間取りはリビング優先に

家造りで最も重要なのがいうまでもなく“間取り決め”です。もちろん、広大なスペースと潤沢な資金があれば、みんなの理想が詰まった“ハリウッドスターの邸宅”のような大豪邸も可能ですが、現実にはそれがなかなか難しい…。そこで陥りがちなのが、当初10畳で考えていた主寝室を8畳に、20畳で考えていたLDKを15畳にという、一つひとつの部屋を均等にサイズダウンしてもう1部屋設ける“無理矢理3LDK”パターンです。確かに家族みんなの希望を叶えた形にはなっていますが、これは家造りのプロとしては一番してほしくないパターン。最低限必要な(そう思っている)部屋数に固執するあまり、結局どの部屋も妥協した満足感の低い家になってしまうからです。

では、一体どうすればいいのか? 限られた予算やスペースでは理想の家を持つことは無理なのか? 

答えは簡単です。こだわるべきはリビングのみ! 一日のうちの大半を過ごすリビングを最大限に広くとることで快適な居住空間を手に入れることができます。

実際、我が家は“超リビング優先型ハウス”です。最大限に広いリビングを確保すべく、主寝室は3.5畳! 

ここに小学校低学年の子どもと親子3人で仲良く寝ていますが、“寝るだけの場所”と考えているので、特別不便さを感じたことはありません。

こうして余計な収納や無駄なスペースを省いて生まれた予算で、無垢材の床や建具にこだわることも可能です。“リビング学習”の有用性も多くの専門家が認めています。家族がみんな家にいるのに、それぞれの個室にこもったまま顔を合わせる時間もわずかな家より、個室は寝るだけの場所と割り切り、工夫を凝らしたリビングでみんながくつろいでいる家のほうが幸せを感じられるのではないでしょうか。

 もともとは2部屋だったものをあえて1部屋に改築。窓際に設けたカウンターは子どもの勉強スペースに、家事スペースにと使い方いろいろ

まとめ 大切なのは間取りではなく“住まい方”

家の話題になると、“3LDK”や”4LD“という用語が必ず出てきますが、これって実はものすごく曖昧な表現なのです。 

ここで表されるのはあくまでも部屋数だけで、広さに関してはまったく表現されていないのです。つまり、何十畳もあるような大広間が3部屋でも、わずか4・5畳の小部屋が3部屋でも同じ3LDKと表示されるわけです。かなり極端な例えですが、この表現でいうならば体育館は“ワンルーム”です。残念ながら多くの方がこのあやふやな表現にとらわれ過ぎているように感じます。固定観念を一旦脇へ置くと、同じ予算や広さでも、もっと利便性の良い、魅力的な家造りができると思います。

家族のための家なのだから、自分たちがどんな風に暮らしたいか、どんな空間なら落ち着くのか、そのことにしっかり目を向けることが後悔しない家造りの第一歩になるのではないでしょうか。

【取材協力先】

『ちえのわ工房』代表取締役 今中大介さん(宅地建物取引士)

岡山県岡山市に自宅兼事務所を構える、宅地建物取引士・今中大介さん。一級建築士の妻・智恵子さんと2人で『ちえのわ工房』を営む。一人ひとりのライフスタイルに合わせたオンリーワンの家造りがモットー。新築戸建てのほか、リノベーションなども多数手掛ける。相談しやすくアットホームな雰囲気でありながら、不動産と建築の双方の視点から行う的確な提案力が評判だ。ホームページに実例掲載しているので、興味のある方はチェックしてみてください。 

ちえのわ工房の今中大介さん、智恵子さん夫妻
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