トラブルなく賃貸マンションを退去するためのコツとは?

賃貸マンションを急に退去することになった際、退去費用や原状回復の問題で家主とのあいだにトラブルが発生してしまうことも少なくありません。突然の退去であったとしても、退去の通知や家賃の精算などは、しっかり段階を踏んで家主とやり取りしておくことが大切です。ここでは、急な退去でもトラブルなく引っ越すための対策とコツについてご紹介します。

住み替えがわかった時点で知っておきたい退去の流れ

転居が決まったら

賃貸マンションの転居が決まったら、まず入居時に交わした契約書を読み返し、退去の通知に関する項目を確認しましょう。そこには、退去通知をする時期と方法について記載されています。通常は、退去予定日の1ヶ月前までに通知をする契約が大半です。ただ、契約書によっては、1ヶ月以上前に通知しなければならないケースもあるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

転居の連絡

通知の方法は、電話のみで良い場合もあれば、書面で送付する必要があることもあります。これも契約書に記載されているため、通知の時期と共に確認を忘れないようにしましょう。

転居先は、退去の通知を済ませてから探しても構いませんが、自分の希望の場所がすぐに決まるとは限りません。

従って、入学や転勤など、転居が決まった段階で、早めに探しておくのが良いでしょう。ただし、引越しまで2ヶ月、3ヶ月前だと、転居先の家賃の支払いが発生してしまうこともあるので、その辺りはタイミングを計りながら動く必要があります。

引越しの連絡

そして、引越しする日が決まったら、家主や不動産管理会社に引越し日の連絡を済ませます。これは引越し当日に、家主や不動産管理会社の担当者が退去の立会いをするためです。

その際に、部屋の状態が確認され、鍵の返却や敷金の返還などが行われることになります。

退去の立会いは引越しの作業後に行われるのが通常です。所要時間は20~40分といったところでしょう。部屋の状態に応じて敷金の精算が終われば、各種費用が敷金から差し引かれ、残った金額が、後日指定の口座などに振り込まれることになります。

退去費用を抑えるためのポイント

退去通知は速やかに

賃貸マンションを住み替える際には、新しい住居にかかる初期費用だけでなく、旧居からの退去費用もしっかり計算しておかなければなりません。特に気を付けておきたいのが、退去通知の遅れです。もし退去の通知が遅れた場合、実際に退去した日を過ぎても契約上は解約したことになりません。その結果、住んでいない旧居でも家賃が発生してしまい、旧居の家賃と新居の家賃を二重で支払わなければいけないことになります。このような事態を防ぐためにも、住み替えを決めたら速やかに退去の通知をするよう心がけましょう。

家賃の精算方法を確認

また、退去費用を押さえるためには家賃の精算方法の確認も欠かせません。たとえば、退去予定日が3月15日だったとします。賃貸物件の家賃は前払いであることが多いため、その場合は3月分の家賃を2月の月末にすでに支払っていることになります。

もし、退去後の家賃の清算が月割りだった場合、退去した後の3月16日~3月31日までの家賃を取り戻すことはできません。一方、日割りの場合だと、退去した後の家賃も返還してもらうことができます。月割りか日割りかは契約時に決められていることなので、後になって変更することはできません。そのため、もし月割りで家賃が清算されるのであれば、月初めより月末に退去したほうがお得ということになります。一般的には、日割り計算のほうが多いですが、必ず家賃の精算方法は確認しておきましょう。

引越し業者の予約タイミング

また、引越しが決まったら、早めに引越し業者を予約するのもポイントです。特に3月や9月など、入学、就職、転勤などが多い時期は、業者の予約が取りづらく、引越し代金も値上がりする場合があります。転居が決まったら、早め早めに行動することが重要です。

退去時の「立会い」は何のためにあるのか

退去時の立会いは、部屋の使用状況の確認と敷金の精算のために行われます。部屋の契約時に納めた敷金は、もしものことがあったときの保証金のようなものです。家賃の滞納や入居中に部屋の欠損があった場合などに、敷金からお金が補填されることになります。また、敷金は退去時の部屋の修繕にも使われます。退去時の立会いにおいては、部屋の状態を確認して、貸主と借主のどちらが修繕費用を負担するかを決める作業をおこないます。

退去時の立会いは引越し作業が終わった後、部屋に何もなくなった状態で行われるのが一般的です。部屋の使い方が粗い場合は、立会い作業は30分以上かかることもあります。

また、自分の費用負担を減らすためには、立会い時は部屋をなるべくきれいな状態にしておきたいところです。引越し前や引越し作業後に簡単な掃除をしておき、部屋ができるだけきれいに見えるようにしておくと良いでしょう。

退去時の立会いでは、部屋にある傷や汚れがくまなくチェックされます。ただ、目に見える汚れや傷があっても、それが自分の責任でついたものでなければ、修繕する義務もこちら側にはありません。その傷や汚れがいつからあったものなのか、またどういう経緯でついたものなのか、聞かれたらなるべく詳細に答えられるようにしておきましょう。

逆に言えば、その賃貸マンションに住んだときに、すでに傷などがあった場合は、家主や不動産管理会社に必ず伝え、写真なども残しておくと、トラブルの防止になります。

部屋の状態チェックが終わったら、鍵の返却をして立会いは終了となります。

知っておきたい退去費用の精算でもめないコツ

退去後に部屋を修繕して入居前の状態に戻すことを原状回復といいます。この原状回復をめぐって貸主と借主のあいだでトラブルに発展するケースも少なくありません。そのため、原状回復の義務が借主側にどこまであるのか、自分でもしっかり確認しておくことが大切です。たとえ部屋に傷や汚れがあったとしても、それらが経年劣化や通常消耗で生じたものなら借主側に原状回復の義務はありません。一方、故意や過失、また通常の範囲を超えるような使い方をした結果、ついてしまった傷や汚れに関しては、借主に原状回復の責任が生じます。

たとえば、冷蔵庫の下にできた汚れや跡は、通常の使用によって生じたものであると考えられるため、借主が原状回復をする必要はありません。しかし、同じ冷蔵庫の下の汚れでも、故障した冷蔵庫を長年放置した結果、水漏れで腐食してしまったようなケースは、借主の責任で修繕しなければならないでしょう。

このように、同じような汚れでも、汚れがついた経緯などによって、費用負担の責任は変わってきます。もし、借主に責任があると見なされれば、入居時に納めた保証金や敷金から修繕費用が補填されるため、退去時に敷金を返還してもらえないこともあり、破損がひどい場合は、それ以上の費用請求をされることもあります。

原状回復の問題は線引きが難しく、時には自分に責任のない傷や汚れまで修繕費用を請求されるケースもないとは言えません。従って、日ごろから部屋をきれいに使うのはもちろん、もし部屋のどこかに傷や汚れを発見したら、それがいつ付いたものなのかを確認し、借りる前のものであれば、速やかに家主や不動産会社に報告し、修繕依頼をするか、そのまま住むのに影響がない場合は、貸し手側にもともとあった傷であることを認識してもらうことが重要です。

立会当日にどうしても行けない場合には

立会いは本来なら部屋を借りている世帯主本人が行くのが望ましいと言えます。ただ、当日に時間が取れず、どうしても行けないこともあるでしょう。その場合は、事前に家主や不動産管理会社に連絡して、まずは日程の変更を依頼してみましょう。病気や急な仕事など、行けない理由が明確なら相手側も納得して応じてくれるはずです。

また、代理人を立てられるのであれば、代わりに立会いに行ってもらうという方法もあります。退去の立会いは世帯主本人でなくても基本的に問題はありません。とはいえ、退去の立会いは敷金の精算など、お金の問題が絡むため、軽い気持ちで友達に行ってもらうのはちょっと考えものです。できれば親や兄弟など、ある程度「判断」できる人に行ってもらうとよいでしょう。また、その場合は、事前にその旨を、家主や不動産管理会社にも連絡しておきましょう。

原状回復の費用負担がどうなるかは、実際に立会いをやってみなければわかりません。また、原状回復の判断は難しいため、場合によっては自分にとって不利な費用負担を強いられてしまうこともあるかもしれません。従って、請求された費用負担に納得がいかない場合は、自治体や消費者センターの相談窓口に問い合わせてみましょう。原状回復の疑問点や請求費用におかしなところがあれば、的確なアドバイスをしてくれるでしょう。

知識を持っておけばトラブルは未然に防げる

退去費用のトラブルは決して珍しいことではありません。特に、引越しが決まってしまうと、借り手側は次に住むところに心が向いてしまうため、退去手続きをおろそかにして思わぬ出費となる場合もあります。

とりわけ、原状回復の問題は、少し複雑な側面もあります。最後に嫌な思いをしないためにも、部屋に入居する前から退去についての知識をつけておきましょう。しっかり準備して知識を持っておけば、トラブルを未然に防ぐこともできるはずです。

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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