マンションの"修繕費"はなぜ必要? 知っておきたい"修繕費"の相場

住宅は購入がゴールではありません。何もせずに放っておくと老朽化していくため、適切な維持管理が必要不可欠です。日常的な小さなメンテナンスだけでなく、数年から数十年ごとに必要になる修繕工事や改修工事もあります。それらに備えて積み立てるのが修繕費です。マンションを購入する前から、これらについて詳しく知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。この記事では修繕費について詳しく解説していきます。

マンション購入後にかかる住宅ローン返済以外の費用

マンションを購入後に支払うお金は、住宅ローンだけではありません。マンションを購入して居住するにあたって、管理費や修繕積立金が必要になってきます。

管理費とは

日常の清掃費やエレベーター、防犯カメラの設備点検費などマンションの快適さを維持するための費用です。国土交通省のマンション標準管理規約によると、管理会社に支払う委託業務費や管理組合の運営に要する費用、共用部分などに係る火災保険料、地震保険料、その他の損害保険料などもマンションの管理費に含まれます。

修繕積立金とは

定期的に行われる大規模修繕・改修工事などに必要な経費を、管理費とは別に積み立てるものです。大規模改修工事とは、日光や風雨にさらされることによる外壁や躯体部分、ベランダなどの劣化や、老朽化に対して修繕工事を行うものです。また排水管や給水管設備等のメンテナンスも対象となります。機械式駐車場やエレベーターがある場合は、補修や取り替えが必要になるケースも考えておかなければなりません。こうした工事には多額の費用がかかるため、毎月積み立てて備えておく必要があるというわけです。東京都都市整備局が2013年3月に発表した「マンション実態調査結果」によると、1戸あたりにかかった大規模修繕費用は「60万以上90万未満」が最も多くなっています。地域やマンションの規模によって金額は増減しますが、修繕積立金の重要性がわかる数字と言えるのではないでしょうか。

大規模修繕はなぜ必要? 大規模修繕の時期の目安とは

防水塗装や外壁タイルは日々の紫外線で劣化していき、築10年を過ぎる頃には目で見て確認できるほどになるケースも

建物は必ず劣化していきます。劣化にはさまざまな原因がありますが、大きな要因の一つは紫外線です。建物に降り注ぐ紫外線は外壁を直撃します。防水塗装や外壁タイルは日々の紫外線で劣化していき、築10年を過ぎるころには目で見て確認できるほどになります。それまで風雨から建物内部を守ってきた外壁が劣化すると、雨水が内部に侵入するようになります。そうなると、より建物全体の劣化スピードが加速していきます。そうなる前に大規模修繕を行い、劣化を食い止める必要があります。国土交通省は、1度目の大規模修繕は築12年目を目安に行うよう推奨しています。

とはいえ、大規模修繕には莫大な費用がかかります。そのため、できることならなるべく大規模修繕工事を先延ばししたいと思う人もいるでしょう。しかし、自分の財産としてのマンションを考えたとき、定期的に大規模修繕を行って良い状態を維持し続けることが、マンションの資産の価値を維持することにつながります。修繕を怠れば建物自体の寿命が短くなってしまうおそれもあり、資産価値は下がってしまうのです。

管理費+修繕積立金の平均額は約2万円

2019年3月にリクルートすまいカンパニーが発表した「首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、管理費は平均1万5,002円、修繕積立金は平均6,533円となっています。これを合計した約2万円が住宅ローンとは別に毎月必要になるお金です。

管理費は専有面積に応じて算出されており、購入段階では割高に設定されているといわれています。

一方で、修繕積立金は、多くのマンションにおいて必要となる金額に対して足りていないと指摘されています。これはデベロッパーが新築マンションの分譲時に販売しやすいように、当初の修繕積立金を安く設定するためです。

修繕積立金の不足額が大きくなると、修繕積立金が今後値上がりしていったり、大規模修繕工事の際に一時金を求められたりすることが考えられます。マンション購入の前には、長期修繕計画がどのように立てられているか、また修繕積立金がどれくらいプールされているかなどを確認することも大切です。管理費や修繕積立金が将来値上がりすることを考慮して、余裕をもって計画を立てておきましょう。

結局いくら払う? 修繕費と管理費の合計額

マンションに住み続ける限り、修繕積立金と管理費は必要です。では、総額でいくらぐらいの金額を支払うことになるのでしょうか。

新築マンションを住宅ローン4,000万円の借入で購入し、全期間固定金利1.27%(2019年6月【フラット35】最頻金利)、35年で返済する場合で考えます。35年間の支払総額は元金利子を合計した約4,960万円ですが、これに加えて、修繕積立金と管理費の合計額が、前述の毎月約2万円で計算すると35年間で約840万円かかることになります。
地域やマンションの規模によって修繕積立金や管理費は異なるので一概には言えませんが、修繕積立金や管理費に多くの金額が必要だということがわかります。さらに月額1万円で駐車場を借りるとなると、このほかに駐車場代420万円も加わります。これらをすべて合計すると、35年間で約6,200万円もの金額が必要になってきます。マンションを購入する際にはこうした点も踏まえて検討しましょう。

定期的なメンテナンスで資産価値を維持

修繕積立金によってマンションが良い状態に保たれていることが、売却時に有利に働きます

管理費と修繕積立金があることによるメリットもたくさんあります。エレベーターや宅配ロッカーなど、マンションの共用部分が常に整備された状態に保つことができるのは、徴収された管理費を使ってきちんとメンテナンスされているからです。管理員が常駐しているマンションなら安心感があるという人もいるでしょう。この管理員を雇うのにも、管理費が使われています。また、建物は劣化していくものですが、確保した修繕積立金で定期的な大規模修繕を行っていれば所有するマンションの資産価値を保つことができます。

仮にマンションを売却することになった場合、修繕積立金自体はマンション住民全体の財産となるため払い戻しをすることはできませんが、これまでに積み立てた修繕積立金が十分にプールされているマンションは、修繕積立金が不足しているマンションに比べ、売却がしやすくなります。何より修繕積立金によってマンションが良い状態に保たれていることが、売却時に有利に働くでしょう。

修繕積立金を利用して思わぬ出費を回避

修繕積立金は、築年数が経って建物が老朽化していくと、修理箇所が増えるため値上がりしていきます。修繕積立金のない戸建て住宅は、マンションと比べて一見割安に見えますが、資産価値保全のためにも定期的なメンテナンスは欠かせず、いずれ修繕費が必要になるという点は同じです。住民全員で協力し合うマンションと異なり、戸建て住宅の場合は個人でお金を用意し、工事の見積もりや手配も行う必要があります。また、実際に工事するとなれば、戸建てであっても結局は多額のお金が必要になるのはマンションと変わりません。マンションの資産価値を維持しながら快適に生活するために、工事の際に思わぬ出費を回避できる修繕積立金の仕組みを上手に活用しましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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