住まいに和洋折衷のすすめ。進化したイマドキの畳とは

日常生活の洋式化にともない、多くの住まいで純和風のつくりが見られなくなりつつあります。その一方で、落ち着いた和の雰囲気や、床座の居心地のよさなどが見直され、洋風の住まいにも、一部に和室を取り入れる家も増えています。そこで最新の和室事情を探るため、イマドキの畳に注目。進化した畳についてリポートします。

進む日本人の”畳”離れ

畳の原料となるイ草。国内における畳の需要減とともに、生産量は低下の一途をたどり、イ草農家数は大幅に減少。国内で生産されている畳の70%は中国産のイ草を使用している状況です。畳店の数も10年前に比べ、半減したともいわれています。
また、畳は経年とともに表面が傷み、色あせてしまうもの。張り替えなど、定期的なメンテナンスが必須です。近年の畳離れは、このような煩わしさも大きな要因とされています。しかし、ごろ寝しても心地よい畳は、家のなかを素足で過ごす日本人にとって、実は日々の生活スタイルに合っているのです。日本の風土で生まれた和室は、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができる機能的な部屋。和室の持つ落ち着いた雰囲気や、畳ならではの味わいが最近見直されつつあります。

伝統的な個室からモダンな空間まで『ダイケン畳 健やかくん』

大建工業 コーポレート・コミュニケーション部 広報室 室長 小谷哲也さん

大建工業は従来のイ草でなく、機械すき和紙を使用した畳製品『ダイケン畳 健やかくん』なる製品を販売しています。伝統的な和紙はすべて手すきで作られますが、機械を使うことで効率的に大量生産が可能です。イ草と機械すき和紙を使った畳では、どのような違いがあるのでしょうか。DAIKEN新宿ショールームにて、広報の小谷哲也さんにお話を伺ってきました。

「この製品は1997年から販売しており、もう20年以上経過しています。販売数は順調に右肩上がりで、今では畳市場の10%のシェアを占めるようになりました。しかし機械すき和紙を使用した畳の認知度はまだまだ低いと感じています」(小谷さん)

大建工業はエコ素材を活用した製品を得意としている住宅用建材メーカー。廃木材や端材等を原材料として有効活用し、木質繊維を板状に成型した『たたみボード』という畳床を製品化したことが畳事業のスタートでした。そこから畳表を開発するにあたり、アレルギー問題や健康志向のニーズも踏まえたら、やはり天然の素材を使うべきと考えて試行錯誤の末、たどり着いたのが和紙。こうして機械すき和紙でできた畳製品『健やかおもて』が誕生しました。

テープ状の機械すき和紙(左)→「こより状」に加工(中央)→『健やかおもて』(右)

「機械すき和紙には、カビやダニにとって栄養素になるものが含まれていないので、カビの発生とダニの繁殖を抑え、衛生的。また畳になってからではなく、テープ状の和紙の段階で色付けをしているので、日焼けや色あせがしにくいというのが特長です。小さいお子さんやペットのいる家庭で気になるのは畳の傷みだと思いますが、イ草と比べて約3倍の耐久性があるので安心です。撥水性も高く、水やお茶などをこぼしても、布などですぐに拭き取ればあとも残らず、キレイになります」(小谷さん)

撥水性に優れているので、水滴はコロコロとした水玉になります

一般的な畳としては、へりがあるものを思い浮かべると思いますが、最近のマンションの和室では、へりがない畳が使用されるケースが多くなっています。洋室とのコーディネートのしやすさや、和室ながらもモダンな部屋を演出できることが特に若い世代に人気となっているようです。またへりがない畳の方が、部屋を広く感じるといった効果もあります。

ショールームに展示されているへりなしの畳。右はキッズスペース

モダン和室から本格和室まであなただけの床座ライフ『ここち和座』

『健やかおもて」を使用した『ここち和座』という商品には敷き込みタイプと置き敷きタイプがあります。置き敷きは工事がいらず、気軽で手軽に畳が楽しめます。

「一般的な畳の厚さは55mmですが、『ここち和座』は12mm。この厚さは一般的なフローリングと同等です。洋室から和室へリフォームする際に、下地を調整するなど工事の手間を少なくするため、フローリングと同じ厚みにしました。置き敷きはスベリ止めを装着しても1mm高い13mmに抑えました。薄く軽いので使わないときは立て掛けておけるし、収納もしやすい。その日の気分で簡単に部屋の模様替えができます」(小谷さん)

左の写真が敷き込みタイプで、中央が置き敷きタイプ。右の写真から分かるように置き敷きタイプにはスベリ止めがついています

カラーバリエーションが豊富というのも、従来の畳とは違うところ。なかでもピンクは、果たして本当に売れるのか? と社内で議論もあったようですが、小さいお子さんを持つ家庭などから想定以上の反響があったそうです。ちなみに、へりなし畳で一番人気のカラーは灰桜色だとか。最近は銀鼠(ぎんねずみ)色も人気が高いとのことで、グレー系が好まれる傾向にあるようです。

左が一番人気の灰桜色で、中央が最近人気の高い銀鼠(ぎんねずみ)色。右は最新モデルの市松模様です

優れた機能性に、洗練のデザインをプラス、新時代の高機能畳、セキスイ畳『MIGUSA』

積水成型工業ではセキスイ畳『MIGUSA』という製品を商品化しています。こちらも従来のイ草ではなく、樹脂(ポリプロプレン)に無機材料(カルシウム)を配合したオリジナルの畳表です。天然イ草の風合いや肌触りをそのままに、耐久性や安全性、豊富な色合いなど、高い機能性を実現させています。天然の無機材料をベースとしているだけに、燃えてもダイオキシンなどの有害物質が発生しないなど、環境にも配慮されています。

高度な樹脂加工技術により、天然イ草の構造を再現しました

(1)いつもキレイ(色あせがしにくい)
(2)お手入れが簡単(水・油に強く、お掃除も簡単)
(3)丈夫で長持ち(表面の割れや毛羽立ちが出にくい、高い耐久性)
(4)いつも清潔(ダニ・カビが発生しにくいから、健康的で安心)

以上の4つがセキスイ畳『MIGUSA』の大きな特長。畳の可能性と、その素晴らしさを伝えるため、1本1本織機で編む伝統的な製法と「引目」「目積」などの織り柄に徹底してこだわり、畳の常識にとらわれない柔軟な発想で、時代に合った畳を開発しているそうです。

「現在、和室の部屋自体は減少傾向にありますが、インバウンドにより見直されてきています。和室がなくとも簡単に和空間を作れるよう、フロア畳(置き畳)や洋室にも合う畳というものを広めていきたいです。インテリア性やデザイン性の高い色や織り柄のバリエーションを増やすことで、まだまだ畳の需要を掘り起こせると考えています」(積水成型工業 延伸事業部 企画管理担当 寺谷雄太さん)

置き畳シリーズ フロア畳[アースカラー 1.サンドビーチ×6.デザート]

素足に心地よく優しい肌触りで、足を伸ばしたり寝転んだりと、日本人ならずとも誰もが快適に使える畳部屋。和室には洋室にない使い勝手のよさがあります。昔ながらの和室本来の意匠にこだわらなければ、使い方も住まい方もずっと楽しくなるはずです。イマドキの畳を使って、自宅の1部屋を和室にしてみませんか。

お問い合わせ先/大建工業株式会社
        積水成型工業株式会社

(最終更新日:2019.10.05)
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