S造(鉄骨造)マンションの弱点、RC造・SRC造との違いはどこにある?

マンションの代表的な構造に鉄筋コンクリート造(RC造)鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)があります。マンションの購入を検討していると、物件構造に「鉄骨造」や「鉄筋コンクリート造一部鉄骨造」と表示されているマンションを目にしたことがある人がいるかも知れません。分譲マンションの構造の中で鉄骨造(S造)は少数ですが、果たして購入を検討してもよい構造といえるのでしょうか。そこで今回は、鉄骨造(S造)のマンションの耐震性や耐火性・防音性を中心に、そのメリット・デメリットについて解説します。

分譲マンションで採用されている構造

鉄骨造について詳しく説明する前に、まずは分譲マンションではどのような構造が採用されているのかを見てみましょう。マンションには「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」「鉄骨造」の3種類の構造があります。

鉄筋コンクリート造(RC造)

分譲マンションの構造として最も多く採用されているのが鉄筋コンクリート造です。鉄筋コンクリート造は、鉄筋を組んだ周りを型枠で囲みコンクリートを流し込んでつくる工法です。鉄筋とコンクリートを用いているので耐震性が高く、耐熱性や防音性にも優れています。
超高層マンションなどでは、以前は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が多く採用されていましたが、コンクリートの性能向上により、最近では超高層マンションでも鉄筋コンクリート造が採用されるケースが多くなっています。

また鉄筋コンクリート造のマンションの一部を鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造で施工するケースもあります。

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨の骨組みの周りに鉄筋を組んでコンクリートを流し込む工法のことで、鉄骨を使わない鉄筋コンクリート造以上に耐久性がありますが、建築コストは鉄筋コンクリート造と比較して高くなります。以前は超高層マンションには鉄骨鉄筋コンクリート造が採用されるケースが多くありましたが、先述のとおり最近は超高層マンションでも鉄筋コンクリート造で施工するケースが増加しているため、鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは減少しています。

鉄骨造(S造)

鉄骨造とは、柱や梁などの建物の基盤となる骨組みに鉄骨を用いてつくられる構造のことをいいます。ほかの工法に比べ建築コストを低く抑えることができるため、物件の価格に反映できる場合があります。

鉄骨造には2種類ある

鉄骨造(S造)には、さらに「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」の2つの種類があります。

軽量鉄骨と重量鉄骨では主な構造部分の鉄骨の厚さが異なります。

軽量鉄骨

主要な鉄骨の厚さが6ミリメートル未満のものをいいます。用いられる鉄骨の本数が多いため、建築できるプランに制約が生じ、間取りの自由度は低くなります。しかし重量鉄骨に比べると建築コストは低く抑えられるというメリットがあり、主に一般住宅や低層の共同住宅などで採用されています。

重量鉄骨

重量鉄骨は、主要な鉄骨の厚さが6ミリメートル以上のものを指します。柱や梁が軽量鉄骨よりも太いので、少ない本数での建築が可能となり、間取りプランの自由度も高くなります。主に3階建以上のマンションや店舗ビルなど比較的大きな建築に用いられます。

分譲マンションで採用されている鉄骨造は、低層の建物を除けば、重量鉄骨がほとんどです。

鉄骨造の耐震性

地震などの災害が多い日本で特に気になるのが、建物の耐震性です。鉄骨は弾性を持っているため、鉄骨造は耐震性に優れているといわれています。地震による力が建物に加わっても、鉄骨が変形することにより地震のエネルギーを吸収してくれるのです。また万が一倒壊する場合でも、鉄骨の弾力によって倒壊するまでには時間がかかる傾向にあります。 ただし、鉄骨造は地震の揺れを大きく感じやすいという特徴もあります。

鉄骨造の耐火性

地震に強いといえる鉄骨造ですが、高熱にはさほど強くありません。火事などによる燃焼温度の上昇により鉄骨の強度は徐々に低下します。そして燃焼温度が約540度以上に達すると急激に鉄骨の強度が失われてしまうため、建物倒壊の恐れも出てきます。

しかし「耐火被覆」を施すことで、鉄骨造の耐火性の低さを補うことが可能です。耐火被覆とは、柱や梁などの骨組み部分をロックウールなど耐火性のある材料で覆う処理のことをいいます。この処理を行なうことにより、火事による建物の倒壊を防ぐとともに、ほかの建物への延焼を防ぐことが可能となります。したがって、鉄骨造の建物では耐火被覆が施されているかどうかを確認することがとても大切です。

鉄骨造の防音性

遮音カーテンの活用も効果的 ※写真はイメージ

マンションに住む場合、壁や床の防音性も気になる要素の一つです。

鉄骨造では壁や床などに用いられる素材が軽くて薄いものである場合が多いため、ほかの構造と比較すると防音性が劣るといえるでしょう。

鉄骨造の中であれば軽量鉄骨よりも重量鉄骨のほうが防音性が高いといえますが、もともと鉄骨造自体が防音性の高い構造ではないため、重量鉄骨でも防音効果を期待することはできません。ただし、鉄骨造のマンションでも防音工事をおこなうことで防音効果を高めることはできます。

また、防音工事を行わない場合でも、鉄骨造のマンションでできるさまざまな防音対策があります。

遮音カーテンの取り付けもその一つです。窓は外からの騒音が入ってきやすい部分ですが、遮音性の高いカーテンを取り付けることで外からの音の侵入を抑えることができます。また、窓の隙間に防音テープを貼ることでも音漏れ防止になります。

床に防音マットや厚手のカーペットを敷くことも、下の階への防音対策として有効です。

また、壁の防音対策としては、壁際に背の高い本棚や食器棚などの家具を設置する方法があります。遮音シートを貼ることでも、ある程度の防音効果が期待できます。

鉄骨造のメリット・デメリットを理解したうえで選択を

これまで解説してきたように、鉄骨造(S造)のマンションにもほかの構造と同様に、メリットとデメリットがあります。

鉄骨造のマンションには地震に強いというメリットがある一方で、耐火性・防音性が低いというデメリットがあります。しかし、デメリットに関しても、耐火被覆の有無を確認したり、防音工事や防音対策を行ったりすることで、ある程度軽減することも可能です。

マンションの購入は、人生においてとても大きな買い物となります。後悔しないためにも、鉄骨造が持つメリットやデメリットをしっかりと理解し、購入の際にはじっくりと検討するようにしましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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