マンションの自主管理の特徴は? メリットやデメリットを教えて!

マンションを購入する際、そのマンションの管理状況は、購入判断に大きく影響する重要な要素です。マンションの管理業務は多岐に渡り、専門的な知識も必要なため、管理会社に委託しているマンションが多くなっています。しかし一方で、中には管理会社に委託しない自主管理のマンションも少数ながら存在していいます。今回はマンションの自主管理とは何か、またそのメリットやデメリットを挙げ、マンションを購入する際にどのように考えるべきかについて解説していきます。

マンションの自主管理って一体?

分譲マンションは「建物の区分所有等に関する法律」いわゆる区分所有法の適用を受け、分譲マンションを所有する者を区分所有者と呼びます。区分所有者は管理組合の組合員となり、この管理組合が分譲マンションの敷地や共用部分について管理責任を負うことになります。

分譲マンションの管理形態は、大きく3つの形があります。管理会社に管理業務の全部を委託する「全部委託」、管理業務の一部を委託する「一部委託」、そして、管理業務を委託せず住民自らが管理する「自主管理」です。

管理業務と言っても、その業務は多岐にわたります。国土交通省の定めたマンション標準管理規約によると、管理業務の内容は共用部分の保守・修繕はもちろんのこと、修繕積立金の会計業務、長期修繕計画の作成および変更など17項目にも及ぶ多様な業務が挙げられています。

そこで、多くのマンションは管理会社にこれらの業務を委託するという形をとっています。国交省が行った平成30年度マンション総合調査によると、「管理業務のすべてを管理業者に委託」している割合は、74.1%、逆に、「管理業務のすべてを管理組合でおこなっている」割合は、6.8%に過ぎません。築年数が新しいマンションほど、すべての管理業務を業者に委託する割合が多くなる傾向にあります。

自主管理のメリット

管理業務のコストカットは気になるポイントです

自主管理のメリットとしてまず挙げられるのは、管理業務費用が削減できるという点です。管理会社に管理業務を委託すると、当然ながら委託管理費を支払わなければなりません。その点、自主管理であればそれが不要になるため、結果として管理費をかなり抑えることができます。

また、管理会社に依存しない分、区分所有者の運営意識が高められるといった点もメリットの一つです。管理会社に委託する、しないにかかわらず、マンション共用部の維持管理をしっかりとおこない、自分たちの資産を維持していくのは管理組合の組合員である区分所有者自身です。マンションの管理について自分たちで決めないといけないという当事者意識が高まれば、定期的に開催される理事会や総会などの出席率の向上や多様な意見が集まるようになります。共用部分の清掃やマンション設備の保守管理、管理費や修繕積立金の収支など会計についても、積極的に関わろうという気持ちになるでしょう。

さらに、マンション内のコミュニケーション活動の促進につながっていきます。同じマンションにたくさんの人間が住んでいてもまったく交流がなく、どのような人がいるかもわからないといったことは少なくありません。そのため、何か困ったことがあっても誰かに助けを求められないということにもなります。自主管理によりマンションの管理・運営に関して定期的に話し合ったり、意見交換をしたりする機会が増え、マンション内でコミュニティが形成されれば、困ったときでも助け合える関係を築くことができます。うまくいけば居住者トラブルも管理組合の話し合いによって解決できたり、防犯・防災活動や高齢者支援の取り組みも盛んになっていったりと、より良い住環境が形成できるといった効果が期待できるでしょう。

自主管理のデメリット

先ほども述べたとおり、マンションの管理業務は多岐に渡ります。管理費や修繕積立金など会計業務、総会や理事会の運営、長期修繕計画の計画立案、日々の管理や清掃業務、建物の点検や電気・給排水設備の保守など、専門的な知識や経験が求められるものも少なくありません。

一方で、自主管理をおこなう区分所有者は管理業務をおこなうための専門知識を有していないことが多いため、マンション管理のクオリティにはどうしてもばらつきがでてきてしまいます。

そもそも自主管理をするには、理事長や理事含め、管理組合の中にリーダーシップをとれる人が必要です。もし適任な人が見つからなければ、多数の意見をまとめることができず何も決まらないといった事態にもなりかねません。また、専門知識やリーダーシップを有した人がいたとしても、そうした人がずっとマンションに居続けるとは限らない点も問題です。今後高齢化が進めばマンション管理組合を形成する住人も高齢化し、ますます業務を遂行できる人選が難しくなっていく可能性も考えられます。

他にも、管理業務が一部の区分所有者に集中して負担が重くなったり、管理方法や計画が一部の住人の考えだけで動かされたりという懸念も出てきます。

マンションが古くなると、不動産としての価値は徐々に低下していきます。資産価値の低下を最小限に抑えるには、適切な管理や修繕が必要です。しかし自主管理のマンションは、人材不足や高齢化によって管理組合による管理がうまく機能しなくなってしまい、資産価値がより低下してしまうといった状況に陥るかもしれません。

自主管理のマンションを購入するならチェックすべき点は?

管理業務を委託している場合、管理会社は管理業務をおこなう代わりに委託管理費という報酬を受け取りますので、業者によって管理の質や費用にばらつきはあるとしても最低限の管理はおこなわれているはずです。

自主管理の場合は、理事長や理事などの役員に報酬を支払って管理業務がおこなわれていたとしても、本当にしっかりと管理が行き届いているかは十分に確認する必要があります。そのためにも、実際に現地に行って建物の状況などを自分の目で確認することが大切です。

現地で管理状況を確認する際のチェックポイントはいくつかあります。

まず、マンションの敷地内を一通り回って日常的に清掃がおこなわれているかをチェックしましょう。とくに集合ポストやエレベーター周り、ごみ置き場などは利用される頻度も高いため、清掃のレベルをチェックするにはうってつけの場所です。また、駐車場や駐輪場の使用方法だけでなく、清掃や使用状況を確認しましょう。そして、エントランスホールなど設置されている掲示板も要チェックです。マンション内でどういった問題が発生しているか、どういったことが話し合われているかなどを掲示物から確認できる場合があります。

次に、建物の劣化部分や補修状況を確認します。基礎や外壁、廊下などに複数のひび割れやはがれなどがないか、手摺などの鉄部に著しい錆などがないかをチェックします。もしそういった箇所があった場合、その程度と補修状況などを確認し、併せて過去の修繕状況や今後の修繕予定などを仲介会社の担当者や売主さんに確認しましょう。そういった劣化箇所や不具合が長期間放置されていたり、今後も修繕の予定が立っていなかったりということであれば、管理状況に問題があるかもしれません。

そして、最後に管理や運営に関する書類をチェックします。チェックが必要なのは基本的な管理規約や使用細則の他に重要事項に関する調査報告書です。この報告書によって、管理組合の管理体制から管理費や修繕積立金の積立や滞納状況、大規模修繕の実施状況や長期修繕計画など知ることができます。運営体制や計画があっても実際にそのとおりになっていないと意味はありませんので、修繕の実施状況や理事会議事録などで運営の実態は必ず確認しておきましょう。

管理会社に委託するケースは増えている

マンションの自主管理にはメリットもあるとはいえ、どうしても管理の質には限界があります。とくに共用部分の設備や戸数が多い大規模なマンションになると、その傾向は顕著になります。実際、自主管理をおこなっているマンションは総戸数10~20戸程度の小規模のものが多いです。また、自主管理のマンションは管理業務をおこなう人間の負担が大きくなるため、理事長や理事のなり手がなかなか見つからない、高齢化などによって管理業務をおこなうことが難しくなるといった場合も少なくないのです。

その結果、自主管理を取りやめて管理会社に管理業務を委託するといったケースが増えてきています。ただし、委託すると安くない管理費用を管理業者に対して支払わなければなりません。そのため、少しでもコストを抑えようと管理組合で処理できることは自分たちで行い、それ以外の業務を管理会社に委託するという「一部委託」方式を採用しているマンションもあります。

自主管理のマンションを購入した後のこともしっかり考えよう!

冒頭にも述べましたが、自主管理をおこなっているマンションは少数派です。大多数のマンションは、管理会社に管理を委託しています。自分が購入したいと思ったマンションが自主管理の物件であったということもあるかと思いますが、その場合は管理を委託しているマンション以上に慎重に判断する必要があります。

とはいえ一概に自主管理の物件の管理状況が良くないということではなく、中には外部の専門家なども活用しながらしっかりと管理されている物件もあります。

委託管理にしろ自主管理にしろ、マンションを購入するということは管理組合という共同体に参加するということであり、その一員として管理業務を担う可能性が出てきます。そうなった場合の負担と自身の生活への影響についても、よく考えて購入の判断することが大切です。

(最終更新日:2019.10.05)
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア