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マンションを購入したいけれど、住み続けた末に老朽化したときのことを考えると一歩が踏み出せないという人も少なくありません。マンションの場合は一戸建てと違って、土地や建物の一部を共有しているため、マンションの維持管理を管理組合という共同体でおこなっていくことになります。 共有持ち分を持つことによる問題やリスクのうちの一つにマンションの老朽化があります。こういったリスクや問題をあらかじめ知っていると、マンション購入を決定する際に役立つはずです。この記事では、マンションの老朽化問題について解説します。

老朽化の現状

マンションは、1962年に「建物の区分所有等に関する法律」が制定され、1964年の東京オリンピックや1970年代の高度経済成長期を経て、国の住宅政策もあいまって供給戸数を増やしてきました。

その結果、国土交通省住宅関連データによれば、2017年末時点で全国のマンションストック数は約644.1万戸にのぼります。

建築基準法における耐震基準は1981年6月1日に改正され、それ以前の耐震基準を「旧耐震基準」、それ以降を「新耐震基準」と呼びます。

旧耐震基準は、概ね震度5程度の地震で倒壊しないことが基準なのに対し、新耐震基準は、概ね震度6~7の地震でも倒壊しないことが基準になっています。先に述べたマンションのストック約644.1万戸のうち、約104万戸はこの旧耐震基準で建てられたものです。

築何年から老朽化マンションと呼ぶか、その基準は一概にはいえません。マンションの法定耐用年数は、47年とされています。つまり新築後減価償却していき、最終的に税法上の建物の価値が0になるのが47年としていますが、法定耐用年数を過ぎたマンションが必ずしも老朽化マンションというわけではありません。マンションによって大規模修繕や耐震化工事の実施状況などによって実際の耐用年数は変わります。

また、2021年以降、1981年以降に建てられた新耐震基準のマンションでも、築40年以上を迎えるマンションがますます増えていきます。2027年には184.9万戸、2037年には351.9万戸になるといわれています。

マンションの老朽化によって起こりうる問題

マンションの老朽化の弊害として挙げられる問題として、「空き家問題」があります。建築時期が古いマンションほど空き家率が高い傾向にあり、今後は賃貸マンションだけでなく分譲マンションにおいても空き家問題が深刻化していく可能性はあります。

さらにマンションの老朽化問題を深刻にさせるのが、「少子高齢化」です。国立社会保障・人口研究所の平成29年7月推計によると、2020年以降の日本の人口は、その後20年で12,500万人から11,000万人へと減少してくのに対して、65歳以上の人口が占める高齢化率は26.3%から35.3%へと10%近くも上昇すると予測されています。

そうなると、今後住み替えや移住、財産の処分などでマンションを売却しようとしても、買い手がつかず売却できないというケースが増えてくることが考えられます。その結果、マンションの空き家率増加が加速した場合、管理組合への参加率低下や管理費、修繕積立金の滞納など、マンションの維持管理に必要な人員や資金を確保できないといった問題にも発展しかねません。

マンションの維持管理資金の確保に関しての不安材料は他にもあります。それが「相続」です。

たとえばマンションに住んでいる人が亡くなれば、その部屋は相続の対象となります。相続人は相続したマンションに自分が住んだり、人に貸したり、売却したりすることができます。しかし近年は、親子や身内といえども働く場所や住む場所はまったく違う場所であることが珍しくない時代です。自分で住むこともできず、かといって借り手や買い手がつくか分からないマンションの相続を敬遠する人は多いのです。そして、このように相続人が見つからない場合、その間の修繕積立金と管理費は滞納されてしまいます。

冒頭でも述べましたが、一戸建てと異なり、マンションは管理組合というマンション区分所有者の集まりによって資産であるマンションを維持管理していきます。「マンションは管理を買え」と言われるように、マンションは物件自体も大切ですが、それ以上に管理状況が重要です。マンションの老朽化が進み、売却ができず、新しい若い区分所有者も増えにくいとなると、マンションの管理組合の構成自体が高齢化していくことが予測されます。分譲マンションでは、理事長や理事、会計といった役職を区分所有者が持ち回りで管理組合の運営をおこないますが、理事長のなり手がいなくなったり、理事会や年1回の総会が形骸化してしまったり機能しないという事態になることもあります。

このように、マンションの老朽化によって、管理組合を組織する区分所有者が減ったり、管理組合自体がしっかりと機能しなくなったりすることもまた、必要なマンションの維持管理資金を集められなくなるという事態を引き起こします。その結果、マンションの資産価値はさらに下がり、ますます売れにくくなるといった負のスパイラルに陥る可能性があります。

老朽化に対する対策と課題

国土交通省による平成25年のマンション総合調査によると、マンション老朽化問題についての対策について議論をおこなっている管理組合は35.9%。そのうち、「修繕・改修の方向で具体的な検討をした」が62%、「建替えの方向で具体的な検討をした」が2.6%、「具体的な検討をするまでには至っていない」が30.5%となっています。

マンションの老朽化対策としては、まず、長期的な修繕計画のもと、定期的な大規模修繕をしっかりとおこないできる限り資産価値を維持していくことが求められます。ただ、躯体だけなく給排水管やエレベーターなどの設備の耐用年数や改修を考えた場合、どこかで「修繕」ではなく「建て替え」の方向に考えを切り替えた方がよい時期がくるでしょう。また、さらには敷地売却制度という方法も挙げられます。1つ1つ見ていきましょう。

大規模修繕工事

まずは、老朽化対策として基本となる大規模修繕工事についてです。

大規模修繕工事をおこなう前提として、しっかりとした長期修繕計画が作成されていることが必要です。マンションの仕様や設備によっても異なりますが、12年から15年ごとに大規模修繕をおこなうことを想定し、この長期修繕計画に基づいて計画的に修繕資金の積立てるのです。

国土交通省から「マンション修繕積立金に関するガイドライン」として、修繕積立金の目安が出されていますので、自分のマンションはどのくらいの修繕積立金が必要になるのか、参考にするとよいでしょう。

なお、新築分譲時に設定されている管理費や修繕積立金の額は、より売りやすくするために低い金額が設定されている場合もあります。そのため、いざ大規模修繕に必要となった際に積立金が足りない、という事態が起こることもあります。中古マンションを購入する際にもそうですが、いつ大規模修繕工事を予定していて、修繕に必要な予算はいくらか、そのための積立金の状況はどうなっているのかをしっかりと確認した上で、購入の判断をすることが必要です。

また、昨今では台風や大雨などの被害も多く、突発的な修繕費用が発生することも少なくありません。いったん長期修繕計画を作ったからといって安心せず、修繕計画内容を5年おきに見直すなど、マンションの維持管理をしっかりとおこなっている管理組合であることも確認したいところです。

マンションの建て替え

次に、マンションの建て替えについて考えてみます。建て替えをすることによって、耐震性や省エネ性能含め、資産価値の向上も見込まれるなどメリットがあります。 ただ、マンションの建替えをおこなうためには、区分所有法第62条にて、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要と定められていますが、この合意形成は容易ではありません。

まず、実際にマンションを取り壊して建て替えるとなると相応の工期がかかります。その間、居住者には仮住まいや引越しの負担がかかりますし、そもそも環境を変えることに対する抵抗もある人もいるでしょう。

また、建て替えをする資金的な問題があります。建て替え資金が修繕積立金で足りない場合、そのための新たな負担が必要となります。容積率に余裕がある場合であれば、建て替えする新しいマンションの戸数を増やし、分譲するなどの資金調達ができる場合もありますが、物件ごとに事業性も含めて判断する必要があります。 このような事情もあって、5分の4以上の賛成を取り付けるのは非常にハードルが高いのが現状です。今後、高齢世帯の割合が増えていけば、合意形成はさらに難しくなっていくことでしょう。

敷地売却制度

最後に、敷地売却制度についてみてみます。敷地売却制度とは、2014年に改正された「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に基づく制度で、居住者の大多数が売却を望むことで利用できる制度です。議決権および敷地利用権の持ち分価格の5分の4以上、区分所有者の頭数の5分の4以上が賛成すれば、マンションと敷地を売ることができます。ただし、特定行政庁から耐震性が不足していると認定されたマンションが対象です。

都心と地方での違い

老朽化したマンションの建て替えは、主に都心を中心に進められています。2016年までに建て替えられたマンションは311件ありましたが、そのうち地方のマンションは25件しかありません。さらに、25件のうち札幌市が7件、福岡市が5件など、大都市に集中しており、中小都市ではほぼ建て替えがおこなわれていないのです。 なぜ、地方での建て替えが進んでいないのでしょうか。

地方で建て替えが進んでいない理由

まず考えられる理由としては、地方では都心部以上に人口減少や高齢化が進んでいるため、住宅の購買需要自体が少ないことが考えられます。都心部であれば、敷地売却や高層化、大規模化によって新たな部屋を作り、その売却利益で建て替えや修繕の費用を捻出することができることもありますが、地方では新たなマンションを購入する人の数が少なく、建築費がそのまま居住者負担となってしまうパターンが多いのです。

また、そもそも地方ではマンションの販売価格が低いというのも理由に挙げられるでしょう。そのため、建て替えをして新たな部屋を作っても、建て替え費用を補うのに十分な販売価格で売れないのではないかという不安から、建て替えを望まない居住者も少なくないのです。

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