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埼玉県草加市といえば「せんべい」が全国的に有名ですが、実は「皮革(ひかく)産業」が盛んな地域でもあります。なぜ草加で皮革なのか?その魅力とあわせて調査しました!

皮革の街・草加になるまで…

埼玉県東南部に位置する草加市は皮革産業の盛んな地域なのです。その歴史は70年以上にも遡ります。
昭和10年当時、戦争による軍事拡大の中、靴やベルトといった革製品の需要が急増。当時、皮革生産の中心地だった東京都の墨田区や荒川区の生産者だけでは供給が追いつかなくなりました。そこで、注目されたのが草加市。皮革加工の過程で必要とされていた地下水が豊富な上、問屋が集結していた浅草からもほど近いことから、生産者が一気に増加したのだそうです。

国内の皮革製品の生産量は、兵庫県や和歌山県、東京都は墨田区が上位ですが、兵庫県は牛革、和歌山県は鹿革といった具合に取り扱う種類が一定化していました。その点、草加は偶然にも様々な種類の皮革を扱う業者が集まってきたことから、牛や豚、羊、爬虫類などに至るまで多種多様な革を取り扱っているのが特徴といえます。

草加発の革ブランドが誕生

そんな草加に、最近注目の新しいブランドがあると聞き、早速訪ねてみました。そのブランドとは「HIKER」(ハイカー)。2017年にスタートした、牛革を使用したインテリアブランドです。

「近年は安価で丈夫な合皮などによって本革の需要が減っていますが、草加の皮革産業は歴史と優れた技術があります。地元出身者としてもっと盛り上げていきたいと考えて立ち上げました」(広報・河合 泉さん)

HIKERの広報室と製作現場を兼ねている河合産業(写真左) 河合産業で生産されている、豚皮を特殊加工した「ポークルアー」(写真右)

現在HIKERでは、牛革を使用した屋内外にこだわらず使えるアイテムが5つラインナップされています。座面から背面にかけて上質な牛革を贅沢に使用した椅子。最近、戸建てに取り入れる方も多い暖炉にぴったりな、薪を収納するための薪台。小物ではカトラリーや蚊取り線香ホルダー、筒状のティッシュケースがあります。

HIKERの商品ラインナップ

実は筆者も、HIKERのティッシュケースを愛用しています。熟練の職人さんが手間をかけて加工した革を使用しているため、触ったときに手に馴染む感覚が抜群です。商品に使われている牛革はすべて染色をせずに自然色を採用しており、使えば使うほどに味わいのある色や質感の変化が楽しめます。

商品のデザインは、モダンな生活雑貨などを手掛けているデザイン事務所「ALLOY」が監修。シンプルで上品なデザインは他のインテリアとも馴染みやすいです。

筆者が愛用しているティッシュケース。8208円。表面の革のさわり心地の良さがお気に入り

社内には皮革加工用の機器が並んでいます。
その機器を使い、スタッフが手際よく作業をしています。

「HIKERの椅子に使われている牛革は、耐久性を上げるために2枚重ね。重なっている部分で平面の箇所はミシンを使いますが、骨組みとの接続部分など立体的な箇所は丁寧に手で縫っています。生地に刺しゅうするような軽い力では縫えず、糸を通す部分にあらかじめ専用の道具で穴を開けておき、その穴に沿って縫い合わせます。それでもかなりの力を必要とするため、時間もかかります。10㎝進めるのに約15分。糸は綿の太い糸を蝋でコーティングした切れにくいものを使用しています。丈夫な製品にするためには欠かせないものです」と、スタッフが作業について説明してくれました。

工房の様子。分厚い革でも縫える専用のミシンが置いてある

草加ならでは“鞣(なめ)し”

皮革を加工する過程で、耳にしたこともある「鞣す(なめす)」という言葉。これは動物から剥いだ原皮を鞣剤という薬品に浸透させることを指します。そうすることで、鞣剤がコラーゲン繊維と結合して耐久性や耐熱性に優れた革へと変貌していきます。

そんな工程で草加らしい挑戦が行われています。せんべいの材料となる米ぬかから抽出できる「米ぬか油」で鞣すことにより、強靭にできるほか、しっかりとした手触りややさしい白色に仕上げることができるのだそうです。さらに科学薬品が不使用なので、100%土に還せる自然にも優しい仕組みです。

先ほどのスタッフに、ずばり革製品の魅力について聞きました。
「革は手入れをして大事に使えば長年に渡って使用できます。最初は同じ商品でも、購入者それぞれの生活と関わることで、経年経過による味わいのあるオンリーワンの色に変化します。汚れがつくこともありますが、それも含めて愛着を持つようになる。そういう意味では子供と同じようなものですね。だから僕たち職人は、構造的にもデザイン的にも、一生涯使えることを見据えて、一点一点丁寧に作っています」

職人さんが手縫いをしている様子

草加では、これらの取り組みを知ってもらおうと毎年2月に、『草加レザーフェスタ』を開催。皮革製品や素材の展示、レザークラフト体験など皮革の魅力を知る・体験できるイベントを催しています。興味のある方は参加されるのもおすすめです。
一度食べ始めるとなかなか止まらない草加せんべいと同じように、味わい深い “草加レザー”の魅力に気づいたなら、そう簡単には手放せなくなりますよ。

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