地震時の転倒防止に! 家具を固定する器具の種類と効果

地震はいつ・どこで起きてもおかしくないもの。日ごろからきちんと対策しておきたいですよね。被害の中でも、決して軽視できないのが家具の転倒などによるもの。「屋内における家具類の転倒・落下」を原因として負傷するケースも少なくありません。しかし、きちんと対策しておけば、被害を最小限に抑えることができます。そこで、地震対策のための家具の固定方法についてまとめました。

一般的な固定家具の種類

家具の転倒防止にはどのような対策を施しておくべきなのでしょうか?

冷蔵庫、ベッド、机、タンスなど、家具によって大きさや形状が異なるもの。さらに、設置場所によっても想定される被害が変わってきます。そのため、これらの家具全てに同じ対策を施すのはあまり効果的ではありません。それぞれの家具に見合った対策をするのがベストです。

家具を固定するにはさまざまな器具が存在します。それぞれの器具の特性を知ることで、「ここにはあの固定器具を使おう」という判断ができるようになるはず。まずは器具の違いについて見ていきましょう。

L型金具

文字通り、英語のLの形をした金具です。2つの面に穴が開いており、そこにネジや釘を通して家具と壁・床・天井などを固定します。

2段分離家具連結器具

「2段分離家具」とは、大きな2つのパーツが上下に積み上げられていたり、あるいは左右に並んで置かれている家具のこと。本棚やチェストなどの家具にこのタイプが見られます。この2つの家具を連結するのが「2段分離家具連結器具」。平金具(平たい金属板に穴が開いていて、ネジや釘で留めるもの)、シートタイプ(特殊な素材でできていて頑丈なシールのようなもの)、かんぬきタイプ(コの字の留め具を2つの家具に付け、その間に金属の棒などを挿して固定するもの)などがあります。

プレート式器具

家具と壁の両方に取っかかり部分のある金具を取り付け、その金具同士を金属プレートで連結させるタイプです。金属プレートは家具と壁に取り付けた金具の取っかかり部分に引っかける形になります。

ベルト式、チェーン式、ワイヤー式

ベルト、チェーン、ワイヤーの両端に平たい板がついており、家具と壁等にくっつけて使います。板の固定にはネジが使われます。

ストラップ式

ベルト式、チェーン式、ワイヤー式に似た形状のものです。両端に板があり、この部分を家具とどこかに連結して使います。主にパソコンのディスプレイやテレビを、デスクやテレビ台と連結するために用いられます。板の固定にはネジや粘着テープが使われます。

ポール式

地震対策用の「突っ張り棒」です。食器棚などの家具と天井の間に差し込んで固定します。

ストッパー式

家具と床の下に挟みこんで使うタイプのものです。家具の移動を防ぐとともに、家具を壁側に少し傾かせることで転倒を防止します。

マット式(粘着マット式)

数センチ四方の大きさで少し厚みがある、粘着性のジェル状のシートです。家具と床の間に挟みこんで使います。家具と床を粘着して固定するだけでなく、震動を吸収する効果もあります。

移動防止着脱式ベルト

“日常的に移動する”キャスター付き家具に使用するものです。一方を壁に、もう一方を家具につけ、ベルトで互いを結びます。家具の移動範囲を制限することができますが、ベルトはワンタッチで取り外せるため、ベルトの長さ以上移動させたい時でも大丈夫です。

キャスター下皿

小さなお皿の形をしている器具で、キャスターの下に敷いて使います。キャスターはよほどの力を加えない限りお皿の中から出ることができなくなるため、家具の移動を防ぐことができます。

開放棚落下防止器具

本棚やCDラックなど、扉が付いていない棚に取りつけて使います。形状には棒、ベルト、シートなどがあり、棚の端から端に渡す形で取りつけます。

扉開放防止器具

地震の揺れで家具の扉や引き出しが開いてしまうのを防ぐことができます。扉が開くと中の物が落下したり、扉にぶつかったりして怪我する危険があります。また、引き出しが開くことで、家具の重心が変わり家具が転倒する恐れもあります。中には、地震の揺れを感知して自動的にロックをするものもあります。

これまで紹介した器具はどれも地震対策効果を持っていますが、最も効果的なのは「ネジで壁に取り付けるタイプ」のものです。L型金具やプレート式器具がこれにあたります。

また、ポール式(突っ張り棒)やストッパー式、マット式(粘着マット式)は、単独で使う場合効果は小さいですが、「ポール式+ストッパー式」や「ポール式+マット式」といった具合に組み合わせて使うと非常に強い効果を発揮します。

効果的な器具の取り付け方

正しく器具を使い、いざという時に備えましょう

では、これらの器具を使って、実際にどのように固定すればいいかを見ていきましょう。

転倒を防止すべき家具

背の高い家具は揺れに弱いため転倒しやすく、重量があるので倒れてしまうと人が下敷きになってしまう可能性があります。これらの家具はL型金具などを使って壁に固定するのが安心ですが、ここでひとつ金具設置のポイントを。壁にネジやボルト、釘をさす際、壁の中にある柱や同縁を狙うようにしましょう。これによって、固定効果は大幅に向上します。

また、2つ以上の家具が上下または左右に並んで置かれている場合は、2段分離家具連結器具で、家具同士をつないでおきましょう。こうすることで安定感が増すため、転倒・落下のリスクを減らすことができます。

また背の高い家具には、ポール式とストッパー式・マット式を組み合わせて使用することでも効果が得られます。本体にネジを打ち込めないので、冷蔵庫はL型金具を使えません。そこで、ベルト式を利用するといいでしょう。冷蔵庫の上部と後ろの壁をベルト式で結んで固定します。テレビやパソコンのディスプレイは、揺れで転倒しやすいもの。ストラップ式の固定器具などを使ってテレビ本体かテレビスタンド部分と、テレビ台を固定するようにしましょう。

落下を防止すべき家具

電子レンジなど、重さがあり、比較的高いところに設置している家具は落下に気をつけましょう。また、窓際に置いている家具も揺れによって屋外に落下してしまう恐れがあります。台や壁とストラップ式で連結して固定すると安心ですが、家具の下にマット式を敷いておくだけでもある程度の効果は得られます。

移動を防止すべき家具

テーブルや椅子などの家具は、地震の揺れで勝手に移動してしまうことで避難路を塞いだり、人が挟まって怪我をしてしまったりする恐れも。脚の下に耐震マットや滑り止め防止マットを貼っておきましょう。

日常的に動かさない家具にはマットを敷くなどの対策を

キャスターがついていて、日常的に動かす家具

地震の揺れで特に移動することが懸念される家具です。着脱式ベルトで床か壁と連結して固定しましょう。

キャスターがついていて、日常的に動かさない家具

テレビ台や冷蔵庫などにはキャスターがついているタイプのものがあります。しかし日常的に設置場所を変えることはほぼないので、動かないようにしっかりと固定しておきましょう。キャスターをロックしておきつつ、キャスター下皿に乗せておけば安心です。

扉や引き出しのついている家具

扉や引き出しがついている家具は、揺れで開いてしまう可能性があります。扉開放防止器具を使って対策をしておくのがいいでしょう。扉がガラスでできている場合は飛散防止フィルムを貼っておけばなお安心です。

大きくゆったりとした揺れ(長周期地震動)に特に気をつけるべき家具

マンションの高層階ほど、ゆったりとした揺れの影響が大きくなります。目安として、10階以上の建物に住んでいる場合は対策を講じておいた方がいいでしょう。また、大きく揺れるのはウォーターサーバー、水槽、吊り下げ式電球などです。ウォーターサーバーや水槽は、水が入っている容器の部分を、粘着マット式やベルトを使って固定します。続いて床や壁に台を固定するようにしましょう。吊り下げ式電球は、天井にヒートンを複数打ちつけて、そこにワイヤーを通して電球と結び、吊り下げている支点を増やすようにします。

地震大国日本に住む以上、日ごろから地震への備えをしておきましょう

今回は家具の固定についてご紹介しましたが、固定器具を使う以外の地震対策を行うことも大切です。「避難路に物を置かない」「タンスの向きを変えて、ベッドなどのスペースに倒れてこないようにする」「窓のそばに落下しそうな家具を置かない」等々、気をつけるべきポイントはいくつかあります。合わせて対策しておくことで、いざというときに役立ちますよ。

家具の地震対策はすぐにでもできるもの。万が一の場合に備えて、試してみてくださいね。

(最終更新日:2019.10.05)
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