上棟式とはどんな行事? ご祝儀、差し入れ、近隣挨拶など確認点まとめ

注文住宅を建てるにあたり、地鎮祭を経て基礎工事に進み、構造躯体が出来上がったところで行う儀式が「上棟式」です。平安時代から行われていたと言われる伝統的な建築行事のひとつで、数十年前までは餅まきの様子があちこちで見られたそうです。しかし、近年は上棟式を行わない家庭が増えています。やるか、やらないか、最終的な判断は施主に委ねられますが、「どうしたらいいか分からない」という人も多いでしょう。今回は、上棟式とは何か、式の流れや日取りについてもまとめました。

上棟式とは?

上棟式は、梁や柱などの骨組みが完成し、木造住宅の場合は最上部に棟木を上げる儀式を差し「棟上げ(むねあげ)」「建前(たてまえ)」とも呼ばれます。ここまで無事に工事が進んだことに対する感謝の気持ちとともに、無事に家が完成することを祈願します。

上棟式はやるべき? かかる費用は?

上棟式にかかる費用は、簡易的に済ませた場合を含め、数万円~数十万円と幅があり、地方によっても金額が異なります

地鎮祭と異なり、上棟式は施主が棟梁や大工さんといった職人さんの労をねぎらう意味合いが強い儀式です。地鎮祭を行った人でも上棟式は省略するケースや、ご祝儀を渡すだけというケースが増えていますし、上棟式を行わなかったからといって職人さんが工事の手を抜くことはありません。それでも、儀式を行うことで気持ちが引き締まりますし、家を建ててくれる現場の人々との距離が近くなるはずです。

※「地鎮祭」についての記事こちら
地鎮祭とはどんな行事? 費用、のし袋の書き方、当日の服装などを解説

主にかかる費用は、棟梁や大工さん、現場監督、設計担当者などに渡すご祝儀や、直会(なおらい)と呼ばれる宴会を行う場合はその飲食費、引き出物、そして儀式の準備品を用意する費用もかかります。その他、神主さんを呼ぶ場合は神主さんへのお礼が数万円、餅まきをする場合は餅やお菓子の購入費用、一緒に小銭を撒く場合はその費用も見積もる必要があります。

上棟式の日取りは?

地鎮祭同様、「大安」「友引」「先勝」といった六曜の吉日に執り行うことが多いようです。建築関係の行事は「十二直」に基づく建築吉日を重視する人も多く、「建築吉日」を選べればベストです。確固とした由来はないようですが「3軒隣まで焼き滅ぼすような、大凶事が起こる」という言い伝えがあるとされる「三隣亡」の日は避けたいと考える人が多いようです。

地鎮祭は午前中に行うケースが一般的ですが、上棟式は朝から「棟上げ」作業を行い、概ね午後3時頃から上棟式の準備に入ります。夕方~1時間程度行われるケースが多いのではないでしょうか。

上棟式の簡単な流れ

上棟式で鬼門(北東)に飾る幣束(へいそく)には、災難を払う魔よけの意味があります

上棟式の前に、当日は朝から建て方(棟上げ)作業が行われます。当日はクレーンを使って作業が行われるため、事前に近隣への挨拶を済ませておきましょう。また、施主が午前と午後の休憩時間に飲み物やお茶菓子を用意したり、昼食時にお弁当をふるまったりするケースが多く、そのための準備も必要です。

上棟式の前には、棟梁が骨組み最頂部の棟木に幣束を飾ります。祭壇に神饌物(お供え物)を用意するケースも多いでしょう。そして「上棟の儀」を開始。建物の四方に酒や塩、米をまいて清めます。棟梁が祭壇に向いて祈願した後、施主をはじめとするその他の関係者が二礼二拍一礼で祈願します。ここでお神酒をいただくケースもあります。餅を撒く場合は、この後に行うことが多いようです。施主があいさつ・乾杯後、直会(なおらい)と呼ばれる宴会に進みます。食事の後にご祝儀や引き出物を渡し、手締めで締めるというのが一般的な流れです。直会は省略したり、お弁当を渡して済ませたりすることも多いようです。

紹介した流れはあくまで一例ですので、神主さんが主導し正式な儀式を行うこともあれば、より簡略化した儀式で済ますこともあります。

実際に家を建てた人は、上棟式を行っているの?

最近は、上棟式を行う場合でも、簡易的な方法を選ぶ人が増えています

「上棟式を行いたいけれども、あまり予算をかけられない」という人は多いでしょう。必要最低限の儀式を行うと、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか? 簡易的な上棟式を行ったKさんの例を見てみましょう。

なぜ、上棟式を行ったの?

「当初、上棟式を行う予定ではなかったのですが、施工をお願いしていた工務店さんでは7割程度の施主が行っていると聞き、急遽行うことを決めました。ただし、家づくりにお金を使い切った段階であまり余裕がなかったため、宮司さんは呼ばず、四方祓いのみ行いました。略式だったこと、工事が遅れていたことなどから、あまり日取りは気にしなかったですね」

参加者とかかった費用は?

「参加者は、棟梁と大工さんが5人、工務店関係者が2人、設計担当者が3人。ご祝儀の金額は事前に設計担当者に確認し、棟梁は1~2万円、大工さんはその半額程度の5,000円~1万円が相場だと教えてもらいました。工務店の社長さんには棟梁と同額を、担当者には大工さんと同額をお渡ししてはどうかとアドバイスを受け、従った形です。設計担当者にもご祝儀を用意していましたが、知り合いだったこともあり、受け取ってもらえませんでした(笑)。直会の用意やちょっとしたお土産も含めて、掛かった費用は7万円程度でした」

上棟式当日の様子は?

「当日は、私たちが持参したお米や塩、工務店が用意してくれたお酒を家の四隅に撒き、簡単な挨拶の後で乾杯。ささやかな宴会となりました。お酒は参加者の半数が車を運転するためお酒を飲めないということで、ビールを1ケースとワインを2本だけ用意。ノンアルコールビールやペットボトルのソフトドリンクも注文し、現地に宅配してもらいました。食べ物は、近隣にピザの有名店があったため、ピザを数枚注文。そのほか、気軽につまめるように、焼き鳥や唐揚げの盛り合わせも購入して、紙皿やコップ、箸、お手拭きなどとともに持参しました。ピザとワインを出す施主はあまりいないと思いますが、意外性があり、喜んでもらえたようです。最後にご祝儀と、引き出物に代わるほんの気持ちばかりのお土産をお渡ししました」

「上棟式を通じて、普段なかなかお話しする機会のない棟梁や大工さんの人となりを知ることができ、新居により一層の愛着がわきました。」

まとめ

限られた予算で家を建てるにあたり「上棟式にかかる費用を、家づくりや家具の購入代金に充てたい」と思う人は多いでしょう。「地鎮祭は行うけれども、上棟式は省略する」という選択をする人は多いと思います。しかし、上棟式を行えば思い出に残り、職人さんたちと親睦を深めることができます。また、上棟式を行わなくても、何らかの形で感謝の気持ちを伝えることができれば、職人さんたちとよりよい関係を築けるはず。最後まで気持ちよく工事を進めてもらえるように、ほんの少し、気配りをしてみてはいかがでしょうか?

(最終更新日:2020.07.09)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア