”働く”数字の地域差から見えるものとは?

4月になり今年度も多くの新社会人が誕生しています。一方で厚生労働省が発表している2017年度の新規学卒者の離職状況によると、大卒で就職した人のうち、1年目で離職する人が11.5%、短大卒では17.6%になります。入社してみて、対人関係や仕事内容に疑問を持ち、離職していく人もういるでしょうが、過酷な労働環境で若者を使い捨てるブラック企業も、離職に影響を与えているのかもしれません。

そんな働く人に関する数字を調べてみると、地域によってさまざまな差が表れています。今回は統計データを基にして解説していきます。

仕事をしている人が多い北陸、なぜ?

総務省が発表している2017年の就業構造基本調査によれば15歳から64歳までの生産年齢人口のうち、収入を得るために仕事をする人の割合を示す有業率は福井が80.3%で全国トップ。富山が79.1%で3位、石川が78.2%で6位と、北陸地域が上位を占めています。

北陸地域は、有効求人倍率が1.87倍(2017年)と全国で最も高く、全国平均の1.5倍を長年にわたって大きく上回ってきました。北陸は電子部品や生産用機械、化学製品の生産などモノ作りがさかんで、慢性的な人手不足が起きています。

そのため、企業も女性が働きやすい環境を整備し、妊娠や出産に対応した勤務制度を整え、柔軟な働き方を認めるほか、社内託児所を用意する企業もあります。

女性が働きやすい地域は、就業率も高く、出産率も高くなっています。柔軟な労働環境が必要ではないでしょうか

高齢者の就職率も全国的に高く、定年の引き上げや継続雇用制度の導入、勤務時間やシフトを本人の健康状態などに合わせて柔軟に対応し、高齢者が働きやすい環境を整えています。高齢者が長年にわたって培ったノウハウを製造部門だけでなく営業部門でも生かし、中核戦力として活躍する高齢者もいるそうです(参照:日本銀行金沢支店「ほくりくのさくらレポート」2017)。 

首都圏の女性労働参加はなぜ低い?

国土交通省の平成29年版首都圏白書に掲載された、年齢階層別の女性の労働参加率は29歳までは全国平均とほぼ同じですが、30代40代にかけて全国平均よりも低くなります。その原因として、子育てしながら働きにくい環境に原因があるのではないかと考えられています。

内閣府の調査によると、生産年齢人口(15-64歳)の女性で、正規雇用されている割合は、富山県で49.2%と役半数を占めるものの、埼玉県では35.0%と低くなり、大きな差があります。また、男性の長時間労働や首都圏や大阪圏に多く、男性の長時間労働が多い地域では、女性の就業率が低い傾向もあるといいます。出生率も、首都圏と大阪県では低くなっています。

ちなみに、北陸の富山県、石川県の待機児童数は0人ですが、東京都は5,358人、埼玉県は1,037人、千葉県は1,289人と、待機児童が非常に多くなっています(厚生労働省、2018年4月1日のデータ)。

少子化対策のためにも、男女ともに長時間労働をやめ、家庭で過ごす時間を増やす必要がありそうです。また、高齢者が働きやすい環境を整備し、その人の体調や個人的な事情に合わせた柔軟な働き方を許容することが、就業率の増加、離職率の低下につながるのではないでしょうか。

失業率の高い都道府県は

一方、失業率が高いのは沖縄県(3.4%)、大阪府(3.2%)、北海道と福岡県(いずれも2.9%)、熊本県(2.7%)でした(参考:総務省統計局、2018年労働力調査(基本集計) 都道府県別結果)。

四半期(3ヶ月)ごとの完全失業率の推移を見ると、青森県と秋田県は冬場(1-3月)に失業率が高くなることがわかりました。これは季節労働者が、雪の降る冬場に職に就いていないことが原因と考えられます。

しかし、日本でもっとも失業率の高い沖縄は、季節変動が少なく、一年を通じて失業率が高いことが伺えます。こういった地域格差をなくすようにしていきたいものです。

(最終更新日:2019.10.05)
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