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悲しいニュースも多い日本の育児環境。古くからの文化的な要因の他に、現在の制度の部分でも課題を訴える声は多くあります。では、日本の育児環境に課題が多いとしたとき、海外ではどのように育児支援を行っているのでしょうか。いくつかの国の事例をもとに調査してみました。

日本の貧困な育児支援

生後11か月の三つ子の次男を床に叩きつけて死なせたとして傷害致死に問われていた母親に対し、名古屋地裁は懲役3年6か月の実刑判決を下しました。母親はほとんど眠ることもできない中で三つ子の育児を続け、うつ病の状態でした。

日本では、2015年から2016年の2年間で92人が産後うつ病で自殺しています。産後うつの症状は、不眠や食欲低下、興味が持てなくなる、楽しいと感じなくなるなど多様で、10人に1人が発症すると考えられています。

子育てを母親が一人で行わなくてはいけない「ワンオペ育児」も一因になっているのではないでしょうか。産後うつ病は、子どもの精神的・身体的発達にも影響を与えるほか、将来的な育児放棄や虐待につながる可能性もあります。

日本では、女性の育休取得率が83.2%なのに対し、男性の育休取得率が5.14%と極めて低く母親に過剰な負担が発生しています。また、長時間労働が当たり前になり、在宅勤務やフレックス勤務など、多様な働き方が一般的になっていないこと、父親の育休取得に否定的な会社がまだあることなども影響しているようです。

母親が産後うつ病で自殺をしたり、子どもを傷つけるほど追い込まれるような現状を変え、子育て中の親子に必要な支援を届けられるシステムを整える必要があります。

海外の子育て支援の状況

海外ではどのような子育て支援が行われているのでしょうか。

フィンランドでは、子育て支援のための施設とサービスを提供する自治体の組織「ネウボラ(Neuvola)」があり、妊娠がわかったら、まずネウボラに届け出ます。ネウボラには特別な教育を受けた助産師や保健師がおり、妊娠がわかってから子どもが6歳になるまでの間、多様な育児支援やサービスを提供します。基本的に、一人の保健師が支援を行うので、たらい回しにされることはありません。自分と子どもの状況をよく知っている人が継続してケアをしてくれるのですから、安心感がありそうです。

また、妊娠を報告すると、妊娠交付金(140ユーロ=約17,000円)か、子どもが1歳になるまでに必要なベビー服などが揃っている「育児パッケージ」のどちらかをもらうことができます。また子どもの介護のための休暇制度があり、保育サービスを受けずに家庭で子育てをする人には「家庭での育児手当」が3歳になるまで支給されます。

スウェーデンでは、父親の育児休暇取得を促すために「父親の月」という90日間の休暇制度を設けました。この制度が導入されるまで、父親の育児休暇取得率は9%でしたが、導入後は47%に増えました。

さらに、子どもが8歳になるまで取得できる「両親休暇」という制度があり、18ヶ月(480日)の休暇を取ることができます。原則として父親と母親で240日ずつ取得することになっていますが、片親の場合は一人で480日を取得できます。しかも、両親休暇の18か月のうち16ヶ月は、所得の80%に当たる「両親給付」が支給されるので、経済的な不安もありません。

また、子どもが8歳になるまで労働時間を75%以下にすることもできます。1日8時間労働なら、6時間勤務が認められるのです。短時間勤務と両親休暇(部分取得)を併用することも可能で、多様な働き方が認められています。

なお、12歳以下の子供がいる場合は、子どもの看護休暇として年間60日(特別な場合120日)まで取得できます。看護休暇は1時間単位で取ることもできますし、所得の80%まで給付金が出ます。

出生率が先進国の中で最も高いフランスは、女性の就労率が高いことでも知られています。労働時間の短縮や休暇制度、保育園などの子育て支援、妊娠や出産を理由とした解雇や昇進差別の禁止など、いくつもの政策を長年に渡って行なってきたことの成果だと考えられています。フランスでは3歳から公的な教育が始まります。保育学校への通学は義務教育ではないのですが、99%の子どもが通っているそうです。育児休業との連携が取られ待機児童問題はほとんど発生していません。

日本では、長時間労働が習慣として続き、そのために育児に参加できない父親も少なくありません

こどもの権利条約に基づいた対応を

日本では保育士不足が問題になっていますが、その背景には低賃金と保育時間の増加、アレルギーのある子どもへの対応など、仕事の負担が増えていることが挙げられています。ちなみにニュージーランドでは、小学校の教師と幼児期の保育者の給与はほぼ同じで、先進国でも小学校教員の約9割程度なのに、日本は約6割と低いのです。保育士の給与や待遇改善を進め、多くの人材を集める必要がありそうです。

国連の「子どもの権利条約」では、子どもが安全に生きる権利、能力を十分に伸ばして育つ権利、暴力や搾取から守られる権利、自分に関わる問題に自由に意見を言える参加する権利などを保障しています。諸外国もこの条約に基づいてさまざまな子育て支援対策をしていますが、日本ではまだまだ家庭、とくに母親が子育てをするものだと考えて、母親に過重な負担を負わせるとともに、子どもの権利をないがしろにしていないでしょうか。子どもを守るためにも、社会全体で子どもを育てるという意識が必要です。

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