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子育て世帯を悩ませる問題が待機児童。東京都の待機児童は、解決に向かっているのでしょうか? 「待機児童ゼロ」という目標は現状どれほど達成されているのか、東京都の区市町村の待機児童数ランキングや、0歳~5歳児のいる世帯への調査結果から考えていきます。

【東京都】待機児童数が多い区市町村ランキング

共働き世帯にとって待機児童は深刻な問題

東京は多くの人が集まる場所。その大前提を考えれば、待機児童数も多いイメージがありますよね。待機児童数の多い上位10の区市町村をチェックしてみると、東京都の待機児童の現状が明らかになってきます。下記の表をご覧ください。

東京都 平成30年区市町村別待機児童数

※出典:東京都 都内の保育サービスの状況について/区市町村別 ※画像をクリックすると拡大されます

待機児童数がもっとも多いのは世田谷区。就学前児童の人口が次点の江戸川区よりも1万人以上多い一方で、保育サービス利用児童に占める就学前児童人口の比率は39.9%と少なく、その結果が待機児童数を増加させているようです。
トップ10の中で比較しても、就学前児童人口数は5,000人~40,000人台と人数差が激しいのですが、保育サービスの就学前児童利用率は待機児童数と一定の相関関係が見られます。単純に人口が多いから待機児童が増えてしまうのではなく、就学前児童が利用できる保育サービスが十分でない市区町村だと待機児童が増えてしまうのかもしれません。

待機児童数の推移では回復の兆し

保育所等利用待機児童数の推移では、平成30年に大幅な減少が見られました。

保育所等利用待機児童数の推移

※出典:東京都 保育所等利用待機児童等の状況 ※画像をクリックすると拡大されます

この変化の背景には、幼稚園と保育所が一体となった「認定こども園」の増加や保育関連の業務に就くための資格の整備などがあったようです。児童を受け入れる施設を拡充し、人材を確保するための施策が功を奏したといえるでしょう。

とはいえ、依然として待機児童数が多いことに変わりはありません。就学前児童の保育所等の利用申込率は、平成25年から平成30年まで上昇し続け、45.8%に達しました。つまり、およそ2人に1人の児童が利用申し込みをしている現状なのです。待機児童の保護者の60.1%が常勤の仕事に就いていることを考えれば、保育サービスへのニーズは高いままであると考えられます。

待機児童ゼロは14区市町村! 23区は杉並区、豊島区、千代田区

23区内でも待機児童ゼロを達成している区もあります

東京だからといってすべてのエリアで児童の預かりが難しいというわけでもありません。2020年までに待機児童ゼロを目標に掲げる東京で、その目標をすでに実現した区市町村はどこなのか確認してみましょう。

待機児童数ゼロの都内14区市町村

※出典:東京都 保育所等利用待機児童等の状況/市区町村別  ※画像をクリックすると拡大されます

上記のうち、杉並区以外の市区町村は昨年度から待機児童が0人でした。大島町以下の町村は、そもそも就学前児童人口の母数が少ないため、待機児童0を実現しているとも考えられます。したがって、杉並区豊島区千代田区福生市の4自治体が保育所等の整備や政策の成果が出ている自治体といえるかもしれません。

杉並区は待機児童数ゼロ、保育サービス利用者数2位

昨年度29人いた待機児童を0人に改善した杉並区は、保育サービスの利用者数が都内第2位になっています。杉並区は、保留児童を持つ保護者に対して丁寧なマッチングを行ったことを発表しています。保護者の現状をヒアリングし、条件に合う施設につなぐことで待機児童を解消できることを証明したケースといえるでしょう。
ちなみに、杉並区にある南阿佐ヶ谷が「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2017」で第1位、2019でも第2位にランクインしており、子育て環境に対して高く評価されています。

参考記事
【本当に住みやすい街大賞2017】第1位 南阿佐ヶ谷:良好なアクセス利便、子育て・住環境を享受できる街
【本当に住みやすい街大賞2019】第2位 南阿佐ヶ谷:緑豊かな環境と利便性、子育てに最適な街

待機児童に対する東京都の政策は?

区市町村による取り組みが待機児童を解消する事例も生み出されるなか、東京都全体では待機児童ゼロに向けてどのような政策を打ち出しているのでしょうか。その一部を紹介します。

土地の活用を促す市町村の連携や資金援助

東京都は地価高騰が続いており、保育所等の新設が難しい状態といえます。そのため、保育を目的とした施設建設をする場合に、特定の条件を満たすことで事業者の負担を都が軽減する制度が設けられました。

また、空き家や民家等を保育目的で活用するために、地域の土地情報について積極的にシェアできるシステムを構築するなど、場所づくりに対する障壁を取り払う模索が続いています。

保育サービス利用者の負担軽減につながる経費補助

都内で児童を預ける保護者は長時間の保育を希望するケースが多い一方、その分利用料金が増えることが家計を圧迫し、保育サービス利用を難しくしている状況もあります。
そうした保育サービス利用者の負担を軽減するため、国、東京都、区市町村が保育料の一部を補助する制度があります。
本制度は急な用事や出産、育児疲れなどの保護者の目的に応じて数時間または数日間利用することが可能で、月単位で定期利用できます。

保育人材育成や保育コンシェルジュの増員などによる人手の確保

保育所に従事する人材の確保に対しても、研修制度の充実など取り組みが進んでいます。また、保育所の情報について適切なアドバイスを行う保育コンシェルジュの育成や活用も広がりつつあります。

保育ニーズ調査から明らかになる、東京の子育ての本音

募集定員が多い0歳児で入園するため、育休を切り上げる人も多数います

このように、資金的な補助や情報網の充実など、積極的な動きがみられる東京都。一方で、そういった取り組みがあるにも関わらず待機児童が増えてしまう地域もあります。東京都で実際子育てをする人々はどのように感じているのでしょうか?

都民かつ就学前児童(0~5歳の児童)がいる世帯約3万8,000世帯に対して行われた、「東京都保育ニーズ実態調査結果報告書 」の一部内容を紹介します。

待機児童にならないならば子どもを預けたい人が8割以上

保育サービスの利用希望を見ると、認可保育所(公立・私立)や東京都認証保育所への人気が高い一方、希望したサービスの人員に空きがなかったため利用しなかったと答えている人が多く見受けられます。
さらに、同調査で保育サービスを利用していないと答えた人を対象に問われた「希望すれば待機児童にならずに入所できる場合は保育サービスを利用するか?」という問いの答えを見ると、86.9%の人が利用を希望しています。
こうした調査結果を見ると、安心して子どもを預けられるサービスに対してのニーズが高い一方、マッチングがうまくいかず子どもを預けることを断念している人も多いようです。

待機児童化を恐れて育児休業を早めに切り上げる傾向も

育児休業取得についての調査結果では、取得を希望していた期間と実際に利用した期間に大きな差があります。本来1年7カ月以上~2年未満の休業を希望していたにも関わらず、1年程度の休業に留めるケースが多いようです。
その理由としてもっとも多いのが、「育休を希望期間分取得すると、保育所に入れなくなると思ったため」。64.9%の人が待機児童になってしまうことを避けるために休業期間を減らしていることが明らかになっています。

東京の待機児童解消のカギは適切な情報と条件の提供

東京都は待機児童解消のための取り組みを積極的に行っているものの、利用者側が保育サービスを選択する際に適切な情報を得られないため、結果につながらない状況になっているケースもあるようです。
保育コンシェルジュをはじめとした、情報提供の窓口として個々の悩みに対応する役割を担う人やサービスが充実すれば、こうした問題も解決していくかもしれません。十分な情報を得たうえで働き方や保育サービスの利用方法を選択できるようになってくると、東京の待機児童問題は解決への道筋が描けそうです。

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