ワンコインあれば利用できる! 通勤に使える有料特急の実態

満員電車での通勤は避けられるならば避けたいもの。昨今、通勤時のストレスを緩和できるひとつの策として、大手私鉄を中心に通勤向け着席サービスが拡大しています。

住宅の購入を検討する際、通勤時間は大切な条件となりますが、「座って快適に通勤できるなら、職場から多少離れていてもかまわない」という声もあり、通勤の距離よりも“質”に着目している人も少なくない様子。そこで、平日のラッシュ時に運行される首都圏の私鉄各社の「通勤ライナー」についてまとめてみました。

通勤ライナーの魅力とは?

ゆったり座れる通勤ライナーなら、通勤時間も有意義なものにすることができるかもしれません

朝夕の混雑時でも必ず座れる「通勤ライナー」。全席指定タイプと、自由席の定員タイプとがあり、通常の乗車料金(もしくは通勤定期)のほかに数百円のチケットを購入することで乗車できます。満席になるとチケットの販売は終了するため、必ず座れるのはもちろんのこと、席に座れず立っている乗客もいないことで、乗車から降車までゆったりと通勤できます。また、通勤ライナーは通常の運行とは停車駅が異なるものも多く、より短い時間で目的地に着けるというのも魅力のひとつといえるでしょう。

首都圏の私鉄通勤ライナー平日の運行まとめ

一口に通勤ライナーといっても購入方法などは各社それぞれです

通勤ライナーは、新宿と箱根湯本を結ぶ小田急電鉄の特急「ロマンスカー」が、主に観光客向けにおこなっていた特急券サービスを、通勤定期の利用者でも購入可能にしたことが始まりといわれています。

現在の各社の輸送区間や時間帯、料金、チケットの購入方法などは、次のようになっています。

小田急電鉄

朝の通勤時間帯は、片瀬江ノ島~新宿間で午前9時30分までに新宿駅に到着する特急ロマンスカー「モーニングウェイ号」と、千代田線直通で午前9時30分までに大手町駅に到着する特急ロマンスカー「メトロモーニングウェイ号」があります。夕夜間は、18時~23時55分に新宿駅を発車して小田原方面と藤沢方面へ向かう特急ロマンスカー「ホームウェイ号」と、大手町駅を18時30分~22時30分に発車して本厚木駅まで走る千代田線直通の特急ロマンスカー「メトロホームウェイ号」が運行しています。

全席指定型で、特急料金は200円~1,090円と、移動距離にともなって加算されるタイプ。特急券の予約・購入は、インターネット、電話、窓口(券売機)の3パターンがあります。

オンライン予約では、会員登録不要の「e-Romancecar」と、会員登録制の「ロマンスカー@club」があり、利用頻度が高い場合は、会員登録しておくのがおすすめです。

京浜急行電鉄

朝夕の通勤時間帯に、上大岡~品川間をノンストップで運行する「モーニング・ウィング号」と「ウィング号」を運行しています。上り線のモーニング・ウィング号は、三浦海岸~品川間を走行し品川駅に7時28分に到着する「モーニング・ウィング1号」と、泉岳寺まで走行し品川駅に9時19分に到着する「モーニング・ウィング2号」の2本。一方、下り線となるウィング号は、品川駅を18時45分~23時に発車する11本があり、上大岡から三崎口駅までは快速特急に準ずる停車駅となります。

座席は、上り線は品川駅まで、下り線は上大岡駅までが全席指定。特急料金は一律300円で、チケットはインターネット「KQuick」か、駅の「Wing Ticket発売機」での購入となります。なお、モーニング・ウィング号に限り、KQuickで1日から月末まで1ヶ月間有効の座席指定券「Wing Pass」を5,500円で販売しています。

京成電鉄

上野から成田空港を結ぶ「モーニングライナー」と「イブニングライナー」を運行しています。モーニングライナーは上野駅に6時35分~9時52分に到着する4本、イブニングライナーは上野駅を18時~23時に出発する7本があり、一部列車は成田駅発着になります。

全席指定で、特急料金は一律410円。専用サイト「スカイライナー インターネット予約サービス」からの予約・購入となり、会員登録の有無に関係なくチケットレスサービスが利用できます。乗車当日分のチケットは駅の券売機でも購入できますが、一部の駅では取り扱いがありませんのでご注意を。

また、モーニングライナーに限り、スカイライナー インターネット予約サービスで1日から月末まで1ヶ月間有効の座席指定券「モーニングPASS」を8,000円で販売しています。

東武鉄道

朝の上り線は森林公園~池袋間を、夕夜間の下り線は池袋~小川町間を走る「TJライナー」が運行しています。上り線は池袋駅に7時5分と9時11分に到着する2本で、停車駅は東武東上線を走る列車で最小の6駅。一方下り線は、池袋駅を18時~24時間を30分おきに発車する13本で、快速特急に近い停車駅構成となっています。

座席の指定はない定員タイプ。着席整理券は、上りが410円(ふじみ野駅からの乗車に限り310円)、下りは310円(ふじみ野駅以降の乗車は着席整理券不要)の一律で、購入は会員登録制の「東武携帯ネット会員サービス」か「JTライナー専用券売機」のいずれかになります。なお、下りは当日券のみの発売となります。

西武鉄道

豊洲~所沢間を走る「S-TRAIN」と、西武新宿から拝島へ向かう夕夜間のみの「拝島ライナー」の2路線を運行しています。S-TRAINの上り線は豊洲駅に7時24分と9時46分着の2本、下り線は豊洲駅18時57分~22時55分発の5本。拝島ライナーは17時15分~22時15分まで1時間おきに西武新宿駅を出発する6本となっており、どちらも全席指定(拝島ライナーのみ、小平駅以降の乗車は席指定なし)です。特急料金は、S-TRAINは510円、拝島ライナーは300円の一律。予約・購入はインターネットか駅の窓口(券売機)のいずれかで、会員登録制の「Smooz」を利用すれば、チケットレスで利用できるうえ、乗車変更が2回まで無料でおこなえます。

この2路線のほか、池袋~西武秩父間、西武新宿~本川越間を走り、全席指定で特急料金は300円~700円と移動距離にともなって加算されるタイプの「特急レッドアロー号」を通勤で利用している人も多いようです。

※3月16日のダイヤ改正後の時間

京王電鉄

慶應八王子~新宿間を走る京王線、橋本~新宿間を走る相模原線で「京王ライナー」を運行しています。京王線は府中~新宿間、相模原線は京王永山~新宿間がノンストップで、上り線は新宿駅を除くすべての駅が指定席券の必要な乗車専用区間、下り線はノンストップ区間のみ指定席券が必要となります。

京王線の朝の上り線は、6時47分と9時16分に新宿へ到着する2本、相模原線は7時と9時29分に新宿へ到着する2本。夕夜間の下り線は、京王線は20時から24時まで1時間おき、相模原線は20時30分から24時20分まで約1時間おきに、それぞれ5本の便が新宿を出発します。

全席指定で、特急料金は一律400円。予約・購入方法は、インターネット「京王チケットレスサービス」と駅の券売機の2パターンがありますが、券売機での購入は当日乗車ぶんのみの購入となり、座席を選ぶことはできません。

通勤ライナーの中には、コンセントやWi-Fiを完備した列車や、シートの座り心地にこだわった列車など、より快適な環境で通勤できる仕様が導入されている路線もあり、「パソコンもできて通勤時間が有効に使える」「特急料金を別途支払うだけの価値はある」など、座れる以外のメリットを感じている人も多いようです。

都心に住むよりローコストな場合も

働く場所と生活する場所を分けることで、生活コストの見直しが図れるかもしれません

各社の通勤ライナーを比べてみると、ほとんどの路線がワンコイン以下の金額となっています。毎日往復で通勤ライナーを利用したとして2万円程度、1ヶ月有効の座席指定券を利用したり、帰路は疲れ具合や混み具合で調整したりすれば1万円ほどで快適な通勤が保証されることになります。

以前は特急料金に抵抗を感じる人も少なくなかったようですが、サービスが拡大した今、都心に住宅を購入することを考えると、ベッドタウンに住んで通勤ライナーを使用したほうがコストを安く抑えながら快適な通勤ができる場合も。そのため、最近は通勤ライナーを利用できるエリアへの引越しを考えている人も増えてきているようですよ。

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア