マンションの防音対策。騒音トラブルに悩みたくない人がすべきことは?

マンションで暮らすうえで、気を付けなければならないのが騒音問題です。電化製品の稼働音や子どもの足音、話し声など、自分では気にならない物音でも、近隣住民には騒音に感じられる場合があります。また、自分自身が近隣からの騒音に悩まされることもあるかもしれません。騒音によるトラブルを防止するために、今からできる防音対策について紹介します。

マンション暮らしは騒音トラブルに要注意

マンションをはじめ、多くの人が住む集合住宅で問題になりやすいのが、騒音によるトラブルです。生活音だけではなく、楽器を演奏する音やペットの鳴き声などが原因で苦情が寄せられたり、裁判に発展したりすることもあります。

1998年に環境庁が定めた告示64号「環境基本法」によると、住宅用地域の場合、昼間(6:00~22:00)の騒音の基準値は55デシベル以下、夜間(22:00~6:00)の基準値は45デシベル以下と定められています(※)。デシベルとは音の大きさを表す単位です。デシベルの数字が大きいほど、音も大きくなります。
※参照:環境省・「騒音に係る環境基準について」の環境庁告示について

デシベルで示されても、どのくらいの音の大きさかイメージできないという人もいるでしょう。
東京都環境局によると、日常生活音の大きさは、以下の通りです。

日常生活音の大きさ
・エアコンの稼働音 約41~59デシベル
・洗濯機の稼働音  約64~72デシベル
・ピアノの演奏音  約80~90デシベル
・犬の鳴き声    約90~100デシベル
※出典:東京都環境局ホームページ

基準値を超える大きさの音を出してしまうと、「受忍限度を超える騒音」と判断され、損害賠償責任を負わなければならない可能性もあります。

生活騒音は洗濯機や掃除機などの家庭用機器のほか、トイレや浴室の給排水など、住宅の設備や構造面によって発生します。
また、テレビやラジオなどの音響機器や、話し声や笑い声、子どもの泣き声などの行動に伴う音も騒音と見なされる場合があります。さらに、自動車のエンジン音やペットの鳴き声、風鈴の音などを騒音と感じる人もいるので注意しましょう。
環境省では騒音規制法という、騒音の発生源を規制する法律も定められています。ただし、騒音規制法は工場や事業場を対象とした法律です。生活騒音を規制する法律は特に存在せず、騒音トラブルの頻発に繋がっています。

防音性能に優れたマンションとは?

近隣住民とのトラブルを防ぐためにも、防音性は非常に重要なポイントです。防音性能の優れたマンションを選ぶことで、他の部屋で発生する生活音に悩まされるリスクを軽減できます。物件探しの段階で、防音性が高い構造かどうか、念入りに確認しておきましょう。

たとえば、窓の外からは交通騒音やピアノの音などが聞こえてきます。騒音が気になるのであれば、遮音性の高い窓を設置した物件を選ぶべきでしょう。JIS規格によるサッシの遮音性能は、T-1~T-4までの等級グレードがあります。数字が大きいほど遮音性能が高いことを表しています。ただし、最も遮音性が高いT-4等級を希望するのであれば、二重サッシの窓を導入する必要があります。

さらに、マンションのような集合住宅では、床で起こる騒音も気になります。床の騒音には軽量床衝撃音重量床衝撃音という2種類の音があります。騒音の種類によって、音の大小を左右する要素が異なるのです。

・軽量床衝撃音
スプーンなど物を落とした時に生じる「軽量床衝撃音」は、床の仕上げ材の種類によって音の大きさが変わります。フローリング仕上げの床よりも、クッション材を裏打ちした遮音フローリングのほうが音を軽減できます。カーペットや畳などの柔らかい素材なら、より遮音性能が高くなります。

・重量床衝撃音
一方、子どもが走り回る足音などの「重量床衝撃音」に影響するのは、床の厚さです。マンションなら床スラブという、床面のコンクリートが厚い物件ほど、音が響きにくくなります。
また、一般的な鉄筋コンクリート造のマンションでは、住戸を隔てる界壁はコンクリートでできている場合がほとんどです。コンクリートが厚い壁ほど、遮音性が高くなります。しかし、まれに柱と壁の境目に隙間ができている場合もあるので注意が必要です。このような隙間を構造スリットと呼び、音が漏れてしまう可能性があります。構造スリットは図面を見ただけでは分からないことも多いので、気になる人は問い合わせてみましょう。

住んでからできる防音対策

防音性の高いマンションを選んでも、小さな子どもがいる家庭など、家族構成によっては大きな音が出てしまう場合もあります。また、隣室や上下の部屋から聞こえる音が気になることもあるでしょう。こうした場合には、インテリアの選び方や家具の配置によって、騒音を低減することが可能です。
ここからは、物件に入居した後から実践できる防音対策を紹介します。

1.床の防音対策

ホームセンターや量販店では、コルクマットやラグ、カーペットなど、さまざまな防音グッズが販売されています。たとえば、小さな子どもがいる家庭やペットがいる家庭には、音を吸収してくれるコルクマットがぴったり。下の階に足音が響きにくくなります。ナチュラルな色合いで、インテリアに合わせやすいことも特徴です。
床全体に敷くのはもちろん、子ども部屋やキッチンなど、足音が気になる場所に部分的に使うこともできます。

部屋の広さに合わせて敷くことができるジョイント式のコルクマットもあります

ラグマットを敷く場合は、できるだけ厚手のタイプや、クッション性の高いタイプを選びましょう。サラサラした肌触りのラグなら、厚手でも季節を問わず使えます。ただし、ラグマットは使っているうちにボリュームが減り、遮音性も徐々に失われてしまいます。防音対策のためにも、定期的に買い替えましょう。

家にいる時間が長い人や、家事などで家の中を移動する機会が多い人は、スリッパを履きましょう。安いスリッパでも問題はありませんが、できるだけ足音を小さくしたい場合は、素材や厚みにこだわるのもポイントです。

素材や厚みがしっかりしたスリッパなら、足音を軽減することができます

また、洗濯機のように音が響きやすい家電には、しっかりと防音対策をしましょう。洗濯機の下に防音ゴムを置くだけで、騒音を大幅に抑えることができます。さらに、音が響きやすいイスの脚には、カバー緩衝パッドをつけましょう。音が響きにくいだけではなく、床に傷がつかないよう予防もできて一石二鳥です。

2.壁・窓の防音対策

床だけではなく壁や窓も、工夫次第で防音対策ができます。壁の薄さや隣室から聞こえる騒音が気になる場合は、防音パネルを取り付けるという対策が可能です。防音パネルは壁に貼るだけで、特別な工事は必要ありません。カラーバリエーションが豊富で、部屋の雰囲気に合ったパネルを選べます。さらに、取り外しも簡単で跡が残りにくいので、リフォームや模様替えの際も安心です。壁を傷から守る効果も期待できます。

自分の部屋の音が隣室に響くのが心配な人は、本棚や収納棚のような背の高い家具を壁際に配置しましょう。テレビやコンポなど、音が出る家電を壁際に置かないようにすることも重要です。部屋の間取りの問題で、壁際しか置く場所がない場合は、壁からできるだけ離したり、防音パネルを貼ったりと工夫してみましょう。

窓の防音対策として簡単にできる方法が、窓をしっかりと閉めることです。ただし、常に閉めきっておく必要はありません。音が気になる時間帯や、騒音が響きやすい早朝や夜間だけでも窓を閉めるよう心がけましょう。厚手のカーテンを選べば、さらなる防音効果が期待できます。防音性の高いカーテンは外からの騒音をカットするだけではなく、家の中の音も漏れにくくしてくれるのです。さらに、遮光機能や断熱機能を備えたカーテンなら、冷暖房効率も上がります。

防音リフォームという方法も

防音グッズやインテリアだけでは防げないほどの騒音が生じている場合や、楽器を演奏したいといった事情がある場合は、リフォームも視野に入れましょう。防音室を設置するなど、大掛かりなリフォームを行えば、マンションでも問題なく楽器を演奏できます。防音工事の手法や費用にはいくつかの種類があるので、まずはリフォーム会社に相談して、見積もりを取ってみましょう。一方、外から聞こえる騒音が気になる場合は、サッシを取り換えたり、サッシを追加して二重サッシにしたりといった方法があります。

ただし、部分的に遮音性能を上げても、壁や床など、ほかの部分の遮音性能が低いと、その部分から音が侵入したり漏れたりする可能性があります。確実に防音性を上げたいのであれば、全面的な防音工事も検討しましょう。分譲マンションでは、管理規約で防音規定が定められているため、工事の前に確認する必要があります。防音に関する規約が明記されていない場合は、マンションの管理会社に問い合わせてみましょう。

被害者・加害者にならない工夫を

マンションにおける防音対策は、必ずしも大がかりな防音工事をしなければいけないというわけではありません。市販の防音グッズを導入したり、インテリアの配置を工夫したり、手軽にできる対策も多くあります。騒音によるトラブルを防ぐために、まずはできるところから防音対策を始めてみましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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