料理を作りながら食べる キッチンの「囲炉裏化」で生まれる家族の団らん

家の間取りを表す「部屋数+LDK」の表記。家探しでは、予算同様にスタート時点から基準となります。その上で、物件や住宅設備を検討し、「質」を求める人ほど気になるのが「K」、つまりキッチンです。寝室や「L(リビング)」「D(ダイニング)」は、家具によって後から満足度を向上させることが可能ですが、キッチンは設備の使い勝手が、住まい始めた日からずっと生活の質に直結します。そのため家のリフォームや中古物件のリノベーションでも、キッチンにこだわってショールームめぐりをする人が増えています。
そんな中、見学者がくぎ付けになるキッチンの新提案が話題になっています。日本古来のだんらんの場「囲炉裏(いろり)」をコンセプトにしたキッチンを体感しに、パナソニックのショールームを訪ねました。

キッチンを家の真ん中に配することで囲炉裏端の団らんを再現する

2017年12月に発売が開始された「Irori Dining(いろりダイニング)」。IHキッチンと食洗機付きのシンク、レンジフードで構成されたアイランド型キッチンは、食卓を囲むテーブルとしても使えます

テレビドラマの再放送を見ていると、時代を追うごとに家族の団らんの場が変化していくのが分かります。さかのぼれば、以前は大家族が畳の居間でお膳を囲み、別間の台所からお盆に乗せた料理が運ばれ、家族そろって食事することが当たり前のスタイルでした。
やがて各家族が、キッチンもしくは隣接する部屋のダイニングテーブルで食事をしながら会話を展開。「トレンディ」と言葉が付き、ドラマがちょっと先のライフスタイルを提案するようになると、カウンターキッチンや間接照明のダイニングなど、さまざまな食卓シーンが登場します。空間の使われ方は変わっても、そこで展開するドラマは、常に家族の関係、団らんのあり方が描かれていたように思います。

家族構成や住まいの間取りによって、家族団らんの場は、リビング・ダイニング・キッチンとさまざまです。この点、住設備のメーカーは、すでに10数年前から「キッチンが家の真ん中になる」と考え、その提案を模索してきたそうです。しかし、少子化や高齢化など、家族の構成や生活スタイルはどんどん変わります。求められる家族の団らんとは何かを考えたパナソニックがたどり着いた提案の一つが、囲炉裏でした。

「たとえばアイランドキッチンをポンと置くだけでは、その周りの動線は変わりますが、調理する、食事をするという行為そのものは変わりません。“団らんを生む”新たなキッチンとは何かをもっと突っ込んで考えたときに、ずっと昔の日本の囲炉裏端にたどり着きました。火に家族が集まる、そこで調理をしたり語りあったり、コミュニケーションが生まれ、温かい食事を楽しむ。かつての団らんを、パナソニックのテクノロジーを使って実現しようと取り組み、誕生したのがIrori Dining(いろりダイニング)です」(パナソニック ハウジングシステム事業部 仙石克幸さん)

Irori Diningでは、「調理をする人」「食べる人」の垣根がなくなります。作りながら食べ、食べながら片付ける。作る・食べる・片付けるが同じ場所でできるため、互いに協力し、自然と会話が生まれ、場の共有がそのまま「団らん」になります

みんなで使えるサイズ、互いが近づくサイズのキッチン

Irori Diningは、一見「アイランド型のシステムキッチン」のようです。しかし、従来のアイランド型と異なるのは「さまざまな方向から使える」点です。上部には4口のIHコンロがありますが、その操作パネルは向かい合う両側に同じものが付いています。対面しながら調理し、それぞれが火加減を調整できます。さらに4口のIHコンロは、使う口数だけの加熱はもちろん、隣同士の複数口を一緒に使って横長の鉄板を加熱することもできます。

また、深くて大きなシンクは3方向から使えます。食洗機も内蔵されているので、ホームパーティーでたくさんの洗い物が出ても、来客側も手伝いやすく、効率的な片付けができます。対面でIHを使い、三方からシンクを使いやすくするために、Irori Diningではサイズにこだわったそうです。

「アイランド型のキッチンは、当社の製品では幅2m55cm、奥行き93cmが通常サイズです。『Irori Dining』では、人が集まり、それぞれ作業ができるようワンサイズ小さく設計しています。このショールームのタイプは、幅が2m40cmです。2m25cm〜最大70cmまで選ぶことができます。また、奥行きは80cmですが、調理だけでなく、ここで食事をした場合、一般的な対面キッチンの1m前後の距離は少し遠く感じます。一般的なダイニングテーブルの奥行きに合わせることで、動線に加え、食事のコミュニケーションにも適したサイズにしました」(仙石さん)

右:IHの操作パネルは対面する両側に付いています。左:作動中のIHコンロの部分が赤く表示されます。この赤い照明外側の黒いラインから手前のテーブル表面は42度以上にはならないよう設計されています
大きなシンクと内蔵の食洗機。天板もシンクもパナソニックが開発した有機ガラスを使用。水族館の水槽や飛行機の窓ガラスに使われる素材で、一般人工大理石の3倍の表面硬度と水アカに強いという特性があります

会話が生まれるキッチンが家族で過ごす時間の質を向上させる

パナソニック ハウジングシステム事業部の仙石克幸さん。おすすめの楽しみ方はアヒージョと燗酒とのこと。ずっと温かいまま、ずっと座ったまま楽しめむ、その時間は格別なのだとか

静音設計のレンジフードの内部設備は、10年間メンテナンスフリー。キッチンが団らんの場になることで、リフォーム時にLDKの間取り配分を再検討するなど、住まいの可能性も広がっていくことが期待できます。

IHコンロ部分の下はスペースがあり、椅子に座り足を入れることができます。調理の熱は、テーブル内から床面に排気されますが、温度は最高でも42℃。座る人が高熱を感じることはありません。調理をする、できたてを冷めずにアツアツのままを食べられる。食べ終わったらテーブル上から片付け、追加の一品を調理することも可能なため、すでにIrori Diningを利用している家庭からは「家族が一番長くいる場所」との感想が寄せられているそうです。

Irori Diningが生み出したのは、「使い勝手のいい動線や温かいできたての料理だけではない」と仙石さんは語ります。

「対面で調理をすると横並びのときよりも格段に会話が増えます。また、生活時間の異なる家族が同じ食卓を囲めなかったご家庭でも、塾から帰ってきたお子さんが座る目の前で調理をしながら会話をしたり、朝、お弁当を詰めながらそのおかずで朝食を食べたり、異なる生活時間がIrori Diningを囲んで交わる。そういった感想をたくさんいただいています。そうした中で“会話が生まれる”ことへの驚きや喜びが多いのですが、実は、それにはIrori Diningの機能が貢献しているのです」(仙石さん)

IHコンロの上部には大型のレンジフードがあり、焼肉などの際にも室内に煙や臭いが広がることを防いでくれます。しかもファンを天上裏部分に設置する設計を採用しているため、レンジフード下での会話や室内のBGMなどに影響を与えにくいそうです。「強」モードで換気しても、運転音はほとんど聞こえません。温かな料理がジュージュー、グツグツとおいしそうな音を立て、互いの会話が程よい距離で行き来する。キッチンに求める「質」に、昔ながらの「囲炉裏の団らん」を加えたのは、最新テクノロジーの結集でした。

取材協力・画像提供:パナソニック 
Irori Diningについて詳しくはこちら

(最終更新日:2019.10.05)
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