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家族にタバコの煙を嫌がられ、マンションのベランダで一服する人は少なくないでしょう。かつてはベランダで喫煙する人々のことを「ホタル族」と呼び、家の中でタバコを吸えないことに同情の目が向けられていました。一見、家族の健康に配慮した行為のように思えますが、タバコの煙やニオイが周囲に充満し、実は近隣住民を悩ませていることが問題となっています。

具体的には、洗濯物にニオイが付着する、24時間換気により室内に煙やニオイが入る、窓から煙やニオイが入ってくるといった被害を訴える人が増えています。どの部屋の人がタバコを吸っているか分かっていても、付き合いを考えて注意せずに我慢している人も少なくないようです。そこで、マンションでの喫煙トラブルと、その解決法を考えてみました。

受動喫煙が訴訟に発展。2012年の名古屋地裁判決が転機に

マンションのベランダで喫煙する問題を考えるにあたり、よく取り上げられるのが、2012年12月13日に名古屋地方裁判所で下された判決です。

マンションの下の部屋に住む住人がベランダで喫煙を続け、上の階の住人が受動喫煙による体調悪化を理由に訴訟を提起。再三の注意を受けたにも関わらずベランダでの喫煙を続けた経緯なども考慮され、不法行為として認められました。

この判決が出たからと言って、ベランダでの喫煙=違法となった訳ではありません。しかし、この判決を根拠として、管理規約に「ベランダでの喫煙を禁止する」内容を盛り込むマンションが増えているようです。

参照:独立行政法人国民生活センター「国民生活」2016年4月号【No.45】内、暮らしの法律 Q&A 

 

2017年5月「近隣住宅受動喫煙被害者の会」を結成。「ベランダ喫煙禁止法」の制定を目指しています

マンションに住む喫煙者は、どうやってタバコを吸えばいいの?

家の中でも、ベランダでもタバコを吸えないとなれば、喫煙者はストレスが溜まる一方でしょう。室内で窓を開けて喫煙したり、換気扇の下で喫煙したりする人が多いようですが、タバコの煙やニオイが窓や排気ダクトを通じて外や近隣の住戸に充満してしまい、嫌煙家のひんしゅくを買ってしまうことも。ベランダで喫煙するのと同様に、受動喫煙のリスクがあるのです。

解決策として、一般的な紙巻タバコから、加熱式タバコや電子タバコといった「次世代タバコ」に切り替える方法があります。いずれも煙の代わりに水蒸気を吸い込むタイプで、ニオイや有害物質の発生を軽減できると言われています。受動喫煙による影響がゼロになる訳ではありませんが、状況を改善できるでしょう。合わせて、空気清浄機などを使用することをおすすめします。

非喫煙者がタバコの煙やニオイに悩まされず生活する方法は?

マンションでタバコの煙やニオイに悩まされている人は、どのように問題を解決すればよいのでしょうか。これからマンションを購入する予定の場合は、事前にマンションの管理規約を確認し、バルコニーでの喫煙に関する取り決めがあるか確認すると良いでしょう。比較的築浅のマンションでしたら、バルコニーでの喫煙を控えるよう明記しているケースがあります。

既に分譲マンションを購入済みで、タバコの煙やニオイに悩んでいるという場合は、以下の方法を試してみましょう。

マンションの管理会社に相談する

喫煙している人に直接不満を伝えるのは勇気がいりますし、居住者間の関係が悪くなってしまう恐れもあります。まずは、マンションの管理人や管理会社に相談しましょう。管理会社は全世帯に匿名で注意事項を記載したチラシをポスティングしてくれたり、該当者に注意勧告等を行ってくれたりしてくれます。

マンションの管理規約を確認する

マンションの管理規約や使用細則に、バルコニーでの喫煙行為を禁止する規定が存在するかを確認しましょう。細則に禁止規定が記載されていないならば、使用細則の見直しを管理組合へ依頼するのも一つの解決方法です。管理会社、理事会、住民がしっかり話し合うことが大切になるでしょう。

受動喫煙症の診断を受けて、改善を要望する

既に、近隣住人の喫煙が原因で健康を害している場合は、医師に診断書を書いてもらい、健康被害が出ていることを明らかにしましょう。日本禁煙学会によると、「受動喫煙症の分類と診断基準」は以下の通りです。


レベル0 正常
診断:非喫煙者で受動喫煙の機会がない。
症状・疾患:なし

レベル1 無症候性急性受動喫煙症
診断:タバコ煙に急性曝露の病歴があるが症状はない。
症状・疾患:なし

レベル2 無症候性慢性受動喫煙症
診断:タバコ煙に慢性的に曝露しているが症状はない。
症状・疾患:なし

レベル3 急性(再発性)受動喫煙症
診断:
1.症状の出現(増悪)が受動喫煙曝露開始(増大)後にはじまった。
2.疾患の症状が受動喫煙の停止(軽減)とともに消失(改善)し、受動喫煙がなければいつまでも無症状(安定)。
症状・疾患:めまい、吐き気、倦怠感、流涙、結膜炎・鼻炎・咳・咽喉頭炎・気管支炎。発疹、頭痛、狭心症、心房細動、一過性脳虚血発作、体調不良、うつ症状など

レベル4 慢性(再発性)受動喫煙症
診断:急性受動喫煙症を繰り返しているうちに、受動喫煙曝露期間を超えて症状または疾患が持続するようになったもの。
症状・疾患:タバコアレルギー、化学物質過敏症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、糖尿病、メタボリック症候群、心房細動、心筋梗塞、脳梗塞、COPD、自然気胸、肺結核、アルツハイマー病、小児の肺炎・中耳炎・副鼻腔炎、喘息、身体発育障害、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、乳幼児の食物アレルギー、肺炎など

レベル5 重症受動喫煙症
診断:急性・慢性受動喫煙症の経過中に、致死的な病態または重篤な後遺障害の合併に至ったもの。
症状・疾患:悪性腫瘍(とくに肺がん、喉頭がん、副鼻腔がん、子宮頸がんなど)、乳幼児突然死症候群、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、心臓突然死、COPDなど


受動喫煙症の診断は、どこでもできる訳ではありません。診断可能な医療機関に問い合わせの上、受診しましょう。受動喫煙症の診断を受けたからと言って喫煙者がいなくなる訳ではありませんが、住環境の整備を求めるための大きな一歩にはなるはずです。

喫煙者と非喫煙者が対立することなく、同じマンションで暮らすためには、相互の理解が必要です。2018年6月には、東京都受動喫煙防止条例が可決・成立。受動喫煙による健康への悪影響を未然に防止する対策が考えられるなど、喫煙者は今後、家の中でも外でも、今まで以上に非喫煙者への配慮を求められるでしょう。この機会に、タバコとどのように付き合えばよいのか、考えてみてはいかがでしょうか?

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この記事の執筆者
斎藤若菜 住宅ライター

ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

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